52話 ディザスターゲート①
あれから数体のオークやオークナイトを倒し気付けば洞窟の最奥部に辿り着いていた。
「また、オークだと……? 解せぬ。……でも見た事ないなこいつ」
オークナイトよりも一回り大きく体長は3メートル程。
念の為目目連を使い情報をみる。
【オークジェネラルLv18】
・弱点 背中
・特性 スキル使用後オークナイトを召喚する。号令を使用すると、自身とオークナイトのステータスがアップするので要注意。
・スキル 号令Lv1 招集Lv2
黒い甲冑に身を包み、大剣を担ぐ姿は将軍とよぶにふさわしかった。
しかし、オークナイトを召喚するだけでは響にとってなんの脅威にもならない。
「なんだ、大したことねぇな」
レベルもスキルもフラクタスに比べれば、なんて事はない。
響は納刀したままオークジェネラルに向かってゆっくりと歩き出した。
「グオオオオオッ」
それが気に食わなかったのか、大剣を振り回し怒りの咆哮を浴びせる。
が、それでも響は構えることなく歩いている。
ジェネラルが大剣を振り上げた瞬間だった。
響は駆け出し、一瞬で背後に回る。
「がら空きだぜ将軍殿」
サンダーボルトを白光に纏わせ、一刀両断。
甲冑などまるで存在しないかのような太刀筋だ。
傷口は雷によって焼け焦げ、ジェネラルは断末魔さえ許されず絶命した。
【レベルアップしました】
レベルアップの告知と共に、ゲートが開かれた。
「Dランクでも一撃か。もっと色々試したかったんだけどな……まあしょうがないよねぇ!? 俺強くなりすぎちゃったしぃ? はあ、罪な男になっちまったぜ……」
アホな事を大声で、しかも独りで言う程度には嬉しかったらしい。
「はっ! こんなことしてる場合じゃねぇ。魔石を回収しないと……!!」
前々回にやらかしたミスを再び繰り返す訳にもいかない。
せっせと甲冑をぶった切り、心臓部にある魔石を取りだした。
拳程の大きさの魔石をリュックにしまい、ルンルン気分でゲートをくぐり帰還した。
「ふぅ、もう夕方か。帰ってゆっくりしようかな」
ダンジョンから出ると、沈み始めた太陽が街をオレンジ色に染めていた。
ここから家までは歩けばそれなりに時間がかかる。
かといって、血の着いた服で電車に乗りたいかと言われれば、それも違う。
「うーん……たまにはタクシーくらいの贅沢はしてもいいよな?」
幸い換金した金には手をつけておらず、予算は十分にある。
響は、普段滅多な事では乗らないタクシーを利用しようと決めた。
だが大金を持ち歩くと使ってしまうのは、何も響に限った話ではない。
タイミングよく目の前を通ったタクシーに運命を感じ、手を挙げてとめる。
ガチャりとドアが開き中に入ると、
「お客さん、どちらまで?」
「探索者総合病院までお願いします」
赤鼻のドライバーはそれを聞くと「あいよ」と、少し砕けた口調で返した。
車が動きだして直ぐに、響はドライバーがチラチラとミラー越しにこちらを見ているのに気が付いた。
「あの、何か?」
「兄ちゃん、探索者かい?」
「はあ、そうですけど……」
それを聞くとドライバーはあからさまにため息を着いた。
なんだかよく分からないが、失礼な人だな。と思ったがどうせ30分もすれば、もう会うことはないんだから気にしない事にした。
「別に兄ちゃんが悪い訳じゃねぇんだけどよ。俺ぁな、探索者ってもんが大嫌いなんだ」
「そうですか」
この手の輩は語り出すと長い。
まともに返せばもっと長くなると思い、素っ気なく返事をした。
「俺の息子も探索者だったんだ。B級の覚醒者でな。でもすぐに死んじまったよ」
悲しむでも怒るでもなく、淡々と話すドライバー。
「それは……」
「毎日ダンジョンだなんて、死にに行くようなもんじゃねぇか。もう少し命を大事にしろってんだ! 兄ちゃんも早く辞めて普通の仕事に就いたほうがいいぜ? まあ、余計なお世話だよな」
響は何故か、このドライバーの言葉が胸に刺さった。
「そうですね。ダンジョンは危ないですから……」
──そっか。最近、強くなってきたせいで忘れてた。ダンジョンは常に死と隣り合わせなんだ。それを忘れるなんて……
「捕まれェッ!!!」
突然、ドライバーが叫んだ。
それと同時に急ブレーキがかかり、車は直進を避けるべくドリフトをした。
「うわっ! いてっ……なんだよもう……」
窓に頭をぶつけ文句を言おうとミラー越しにドライバーを見ると、その前にあるものが目に入った。
「な……なんだぁ!?」
車の目の前の存在にドライバーが声を上げた。
「──は? なんで……」
それは見覚えのある存在だ。
人の遺伝子が紛れ込んだような、二足歩行の狼。
その体躯は優に2メートルは超え、肥大化した筋肉と、両手に伸びる尖爪。
そして、こちらを覗く深紅の瞳。
ダンジョンの住人、コボルトだ。
「なんで街にモンスターがいるんだよッ!!」
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