第44話 臨界点到達②
傷も、痛みも疲労さえも全て消え去った。
「身体の底から力が湧き上がってくる……」
自分が自分じゃないような、感じた事のない圧倒的な力。
今なら誰にも負ける気はしない。
【レベル上限が解放されました】
【功績:頂点を達成しました】
【頂点:全ステータスが20上昇】
【功績:
【限界突破:レベルアップ時のステータス値に+1の補正が入る】
【スキル 臨界点が佐藤響の功績に基づき再構築されます】
大量に表示された文字列からは、どれもずっと響が喉から手が出る程欲しかったものだ。
──スキルの再構築? 聞いたこともないな。でも、それを確認するのは後でいい。今は……
「ミアを助けるのが先だ」
思い切り大地を蹴り、疾風の如く速度で駆け出した。
嘘みたいに身体が軽い。
ミアはドラゴニュートの尾を首に巻かれ、今にもブレスが放たれそうなところだった。
白光にサンダーボルトを纏わせ、ドラゴニュートに感知される前に即座に尾を斬り落とす。
「ぁ──」
重力に従って落下するミアを抱き、
「ごめん、遅くなった」
優しく微笑み、傷だらけのミアを強く抱いた。
「ひ、びき……うぅ……響っ!」
響にしがみつき胸に顔を埋めて涙を流した。
「怖、かった……もう、駄目かと……思った……本当に……でも、響が……来てくれた」
一体どれだけの恐怖と戦っていたのだろう。
どれだけの絶望に支配されていたのだろう。
普段あまり感情を見せないミアがこんなにも涙を流すとは、どれだけ苦しかったろうか。
──許さねえ。コイツら……絶対に許さねぇ!!!
普段温厚な響が鬼の形相になっていた。
湧き上がる怒りを堪えることはしなかった。
「グオオオオオッ」
尾を切断されたドラゴニュートは、怒り狂い二人めがけてブレスを放つ。
が──
「……うるせぇんだよてめぇ」
一閃。
ただ、一刀の元にドラゴニュートの首を刎ねた。
堅固な龍鱗で覆われた図太い首を、だ。
【レベルアップしました】
「ミア、悪い……もう少しだけ待っててくれ。すぐに終わらせる」
そっとミアを離し、壁に持たれかけさせた。
「……約束……ちゃんと、戻って……きて」
「うん、約束だ」
二人は指切りをして微笑みあった。
最後に頭を撫でて振り返る。
「我と刃を混じえる資格はあるようだな。我、龍人族の戦士、水禍のフラクタス。貴様を切り刻む者なり」
高みの見物を決め込んでいたフラクタスが三叉槍を構えニヤリと笑う。
生まれ変わり別次元の強さを手に入れた響を見ても動揺すらしない。自分の実力に圧倒的な信頼があるのだろう。
「お前は許さない。覚悟しとけよ」
その刹那、白光を構えた響は駆け出した。
滾る怒りを乗せた刃は速く、そして何よりも重かった。
三叉槍で受けたフラクタスの両足が大地にめり込む程に。
「サンダーボルト」
鼓膜を揺らす金属音が響き、閃光と共にサンダーボルトを放つ。
しかし、ほぼ同時に三叉槍の先端から渦巻く大量の水が吹き出し雷を掻き消した。
「我に雷は効かんぞ」
「純水か……」
純水とは不純物の極めて少ない水の事であり、通常の水とは異なり電気を通しにくい水の事だ。
完全に遮断することは出来なくとも、フラクタス程の力を持っていれば無効化と言っても過言ではないだろう。
弱点である雷属性を無効化したとなれば、火属性を持たない響にとっては好ましくない展開だ。
弱点特攻で威力が上がろうが電気を通さないのであれば意味はない。
「だからどうした!」
「ぐうッ」
身体を旋回し、強烈な後ろ回し蹴り。
腹部に踵がめり込みフラクタスは吹っ飛ばされる。
「お前が何をしようが関係ない。必ず俺がお前をぶっ飛ばす。何があっても、必ずだ」
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