第32話 ふたりぼっちの攻略隊②

Dランクダンジョン入口付近。

響は早速戸惑っていた。


──この子、この服装でよくきたなあ。誠に眼福でございます。


一言で言えば紺色のセーラー服。それとニーハイ。

先程のダルダルパーカーから着替えたいと言って、わざわざ着替えたのが今の制服だ。

何か付与魔法でも施されているのだろうか。それともただの趣味か。


「あのー……ミアさん? その服、もしかしなくても制服だよね?」


恐る恐る尋ねるとミアはムフーと鼻息を荒くして、


「ん……かわいい……?」


くるりと回りスカートを捲し上げ、渾身の決めポーズ。

ミアの周りにキラキラと光が見えるのはきっと気のせいだろう。

それを見た響はニヤケ面のアホ面で、


「いや、あっ……ふっ……」

──好きい”い”い”い”い”い”い”い”い”い”い”ッ!!


言葉にする勇気こそなかったものの、性癖にぶっ刺さりすぎて脳内でそれが爆発してしまった。

が、しかしそんなことを知らないミアは、


「……かわいくない……?」


あからさまにシュンと落ち込む。その姿すら魅力的だ。

我に返りとっさにフォローしようとする響。


「そうでもない! かわいいんだけど! そう! とっても!」

「……でしょ?」


それを聞くとミアはパァっと笑顔になり嬉しそうだ。

響は思った。もしかしたら会話と言うのは本来非常に高度なツールなのかもしれないと。


「あと、ミアで……いい。貴方の、名前……は?」

「俺は響。佐藤響だよ。改めてよろしくな……み、ミア……」


こんな所でも童貞大爆発。女子と関わってこなかったツケが回ってきたのだ。

名前を呼ぶ、ただそれだけの事ですら赤面している始末。


「……響……よろしく……です。響は……どうやって、戦うの」


そう、この重要な情報をお互いにまだ知らなかった。

前衛なのか後衛なのか、それともヒーラーや付与術士と言った支援系なのか。お互いの事を何一つ知らぬままダンジョンへと来てしまった。


「俺は剣だから前衛だよ。一応魔法スキルもあるから中距離からの攻撃もできる。ミアは?」

「ミアは……これ……!」


下げているポーチを漁り、スっと取り出したのは、


「杖? 魔法系か! ……てかそれ、もしかして収納魔法付きのポーチなんじゃ……」


取り出した杖はミアの背丈程もあり、勿論そのサイズがポーチ等に入るはずもない。

つまりは収納魔法が付与されているポーチという事になる。


「……だめ。これは……あげない」


大事そうにポーチを抱えこみ響を睨む。


「いや、大丈夫です……それより今後の事だけど、俺が前衛でミアが後衛でいいよな? 上手くフォローしてくれると助かる」


コクリと頷き了承したが、響は正直ほんの少し不安だった。

見た目は完全に性癖にぶっささってはいるものの、ミステリアスすぎていまいち彼女の事が分からないのだ。悪い子ではないと認識しているが、命を預けるに足る信頼はない。


──とりあえず、ソロの感覚で挑もう。全部俺が倒せればそれに越したことはないんだしな。一応、ミアのステータスも確認しておくか。


【D級覚醒者 ミア Lv50】

HP 390

MP 760


力 35

防御力 51

速度 70

知能 195

精神力 160


──偏りえげつないな!? 魔法使いとかってみんなこうなの!? でも速度が割と高いから回避性能はあるのか? なんにせよ、とりあえず進んでみないと分からないな。


表示されたステータスは物理面がかなり弱く、反対に精神面が異様なまでに伸びていた。

今まで見てきたステータスの中で、異質な数値だった。


だが魔法使いというのであれば、分からなくはない。

人のステータスをあれこれ考えても仕方ないので、とりあえず攻略を開始する事にした。


「よし、じゃあ行こうかミア!」

「ミア……がんばる……!」

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