第33話 ふたりぼっちの攻略隊③


今回のDランクダンジョンの舞台は森林だった。

幸いな事に大雨や嵐といった天候ではなく、暑くも寒くもない曇り空。

攻略において1番楽だと言われている天候だ。


「森か……獣系ならいいけど、昆虫系だったらまじで嫌だな」

「ミアも……虫、や」


などとくだらない事を呟き呑気に歩いていると、ふいにミアが立ち止まる。


「響……あれ、敵……」


呟き指を指す方向を見てみるも特に変わった様子はない。

鬱蒼と生い茂る木々があるだけだった。


「何もいないじゃん……──ッ!」


その時、奥に生えていた木々から数本の蔓が響目掛けて迫ってきた。

念の為と白光に手をかけていて正解だった。


反射的にバックステップをし、それと同時に抜刀。

居合の要領で蔓を斬り落とす。


「まさか木のモンスターとはな。サンキューミア!」

「ん……ぶい……!」


緊張感の欠片もなくドヤ顔でブイサインをするミア。彼女はD級探索者だ。似たようなモンスターとは何度も遭遇しているのだろう。


──危なかった。 ミアが教えてくれなかったら、対応出来なかった……やっぱりEとDじゃ全然違うな。気を引き締めないと。


白光を構え相手の情報を得るべく、目目連をつかう。


【トレントLv12】

・弱点 火属性 雷属性

・特性 木に擬態しているため判別が困難。紫色の蔓は麻痺属性があるため注意が必要。動きは極めて遅い。


「火と雷か……って事は──サンダーボルトッ」


次の蔓が伸びてくる前に直ぐさまサンダーボルトを放つ。

雷鳴を響かせ一直線にトレントに迫る。

蔓での迎撃にでるトレントだが、蔓と雷撃では話にならず蔓を焼き払い本体に直撃。


一瞬にして焼け焦げ絶命したのか、根元から折れた。


「響……おめっ」


親指を立てグッジョブのサイン。


「ミアのおかけだな!」


響も同じくそれで返す。

トレントの魔石は折れた幹の所に埋まっていて、取るのに少しばかり苦労した。


Dランクダンジョンのモンスターと言えど、弱点をついた事で一撃で仕留めることが出来た。

勿論響自身のステータスのおかげでもあるが、己の力が充分通用するとわかっただけでかなりの収穫だ。


それから暫く進んでいる間に3体のトレントと遭遇した。

しかし、ミアが場所を教えてくれたおかげで先制攻撃を仕掛けられ、危なげなく討伐する事ができている。


順調に森を進んでいると、前方で草が揺れているのを確認。

直ぐさま白光を構え臨戦態勢に入る。

ミアはその後ろで杖を構えてはいるが、ここまで魔法を使ってはいない。


というのも、弱点特攻のおかげで火力がアップしているためほとんどが一撃で死んでしまっているのだ。

そもそもの出番がないと言うだけの話である。


ゆっくりと草むらをかき分けて出てきたのは、5匹の狼だった。

ただ普通の狼と違うのは、背に生えているのが体毛ではなく木の枝のようなもの。

ゆつまくりと距離を詰めながら、喉を鳴らし威嚇する。


唾液を垂れ流しにしている事から空腹で気が立っているのかもしれない。


「フォレスト、ウルフ……今度は、ミアの……番っ」


今にも飛び出しそうなフォレストウルフよりも、先に動いたのはミアだった。

その場から1歩も動くことなく、杖でトンと地面をつつく。


すると、パキパキと音を立てながら杖を中心に円形に地面が凍り付いた。範囲はおよそ半径10メートル。

響の周りだけ器用に対象外なっているのは、さすがとしか言えない。


しかし、地面を凍らせたからと言ってフォレストウルフを倒せるわけではない。

フォレストウルフは凍りつくと同時に距離を取り、その範囲外に逃げている。


「おいミア──」

「し……まだ、終わって……ない」


響が何か言いかけると、潤んだ唇に人差し指を立て遮った。

直後、凍てついた地面から巨大な氷柱が出現しフォレストウルフを貫いた。


あまりにも一瞬な出来事で、反応すら出来なかったフォレストウルフは、腹部を貫かれジタバタと暴れる。

しかしそんな事で脱出出来る訳もなく、徐々に傷口すらも凍りつき始め、やがて小さく呻きうめき絶命した。


「す、すげえ……」

──緩急を付けて油断を誘ったのか!? 凄いな。俺がしっかり前衛を務めれば2人でも充分かもしれない!


「響……ぶい……!」


ふふん、と得意げな顔でピースサイン。

響はそんなミアをニヤケ面で眺めていた。

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