第26話 俺なんかしちゃいました?①


扉を開いた先はだだっ広い霊安室のような場所。

冷たい空気が頬を撫で、異様な雰囲気を醸し出している。


その中央にいるのは赤黒い鎧を纏った大男。

2メートルは優に超える巨躯だが、その手に持つ長槍はそれさえも凌駕する程の長さだ。


「目目連」


【アンデッドジェネラルLv20】

・弱点 心臓部 光属性

・特性 不死属性。一定時間経過するとアンデットナイトを召喚する。


──心臓部? 光属性以外にも弱点があるのか。それより……あんまり時間をかけると面倒くさそうだな。


「グオオオオオオ!」


ジェネラルは響を見るや否や、雄叫びを上げ長槍を振り回し切っ先を向けた。

しかし、響はもうそこにはいなかった。


「隙だらけだぞ!」


ジェネラルはまるで反応出来ていない。

跳躍した響は落下ともに白光を左胸に突き刺した。

硬いと思われた鎧もなんの問題にもならなかった。


柄の部分まで刃を差し込むと──


「サンダーボルト」


白光にサンダーボルトを纏わせ、そのまま放電。

雷は逃げ場をなくしジェネラルの体内を駆け回る。


ジェネラルはよろめきながらも、響を掴もうと腕を伸ばすが、


「サンダーボルト」


再びのサンダーボルトにより、感電状態に陥ってしまう。最早一方的過ぎて戦いにすらなっていない。


「ふッ!」


突き刺した白光の刃を振り上げ、胸から肩にかけて斬り裂く。

そしてその軌道をなぞるように、左胸から股にかけて白銀の刃を滑らせる。

二刀の元、アンデットジェネラルを両断した。


白光に着いた腐敗した血液を払い、納刀。


「悪いな、早く風呂に入りたいんだ」


接敵してから僅か1分程度。アンデッドジェネラルは崩れ落ちた。

響はF級ながらにしてEランクダンジョンをソロ攻略したのだ。


【レベルアップしました】

【功績:単独踏破を獲得しました】

【単独踏破:ダンジョンにソロで挑む場合、レアドロップ率30%上昇 経験値10%上昇 全ステータス5%上昇】


「お、いいじゃんこれ。今後もソロでいこうと思ってたし、中々優秀な効果だな」


レアドロップ率と経験値だけでも相当に貴重だが、それに加えステータス補正も入るとは本当に優秀な功績だ。

今回のアンデッド系ダンジョンでは、光属性で完全に消滅させなかったのでドロップアイテムはなかった。


だが、こんなダンジョンは滅多にないので今後大いに役立つ功績と言える。


ボスであるジェネラルを倒した事で、外へと繋がる青いゲートが出現。


「よし、帰るか!」


響はゲートへと踏み込み、無事帰還を果たした。


────


──



「あれが例のゲートか。まだ生存している可能性はある、急ぐぞ」

「はい!」


探索者組合と書かれたバンからぞろぞろと、6人ほどの男女が降り、ゲートへと走る。

派遣された執行部を率いているのは部長であるエレナだった。


真紅の鎧を身にまとっているが、これが中々際どい。

太腿や肩、くびれが露出され、そこからきめ細やかな柔肌が顔を出す。こんな時でなければ魅了されてしまうほどエレナは美しかった。


それに気付いたゲート監視員は敬礼し、


「お、お疲れ様です! まさか部長が来られるとは……」

「ああ、丁度手が空いているのと少し気になる事があってな。それより話は後だ、直ぐに戻……る……?」


その時、ゲートの空間が歪み始めた。

それは入る時や出てくる時に起こる現象であり、この場の誰1人ゲートに突入してはいない。

つまり、


「ん〜! やっぱりシャバの空気は一味違うな!……あれ、エレナさんこんにちは。奇遇ですね」


と、グググと大きく伸びをして呑気に姿を現したのは他でもない響だった。


それを見てギョッとする組合員達。

それもそうだ。ゲートをくぐって72時間以上が経過したというのに、この男は余裕な顔で出てきたのだ。

組合員達の顔を見てさすがに何かを感じとり、少し気まづそうに、


「……あ、あれ? 俺なんかしちゃいました……?」


いまいち状況を飲み込めていない響はポリポリと頭をかいた。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る