第13話 探索者組合執行部②
「はぁ……はぁ……クソ、我妻ァ!」
「くふふ、良いざまですね武田俊哉。かつての部下にやられる気持ちはどうです?」
戦況は我妻が優勢。優勢と言うよりも、一方的すぎる。武田達は為す術がなく、ただやられるのを待っているだけの状態だ。
そして響は未だ動かずにそれを見ていた。
「なんだろう。あの人……楽しんでる?」
響から見た我妻は異常だった。必要以上に嬲り、捕縛やトドメなど容易いはずなのにそれをする素振りは一切ない。
まるで遊んでいるかのように見える。
ドクン、と心臓が一際大きく鳴った。
まるで警告をしているように思えた。
──何か……何かおかしい。あの報告書と名刺は間違いなく本物だ。でも冷静になって考えてみると、何でわざわざダンジョンに入ったんだ? 本当に武田さん達が詐欺師なら、外で捕まえることだって……
「まさか、騙してるのはアイツ?」
そう考えると納得できることもある。さっきは急な事で深く考えずに、名刺と書類で我妻が正しいと思い込んでいた。
だがよくよく考えてみると、おかしな点は幾つかある。
まず逮捕するにも何するにもダンジョン内である必要がない。
武田達が本当に詐欺師なら正体が割れた段階でカミングアウトしてもおかしくはない。
それに──
「武田さん達はさっき捕縛って……」
普通、この手の輩なら捕縛なんて言葉は使わない。
相手が組合だとしても、ダンジョン内なら死んでも事故扱いできる。
武田達は我妻が相手でも殺すつもりはないと言うこと。
「嘘をついているのは、我妻さんの方?」
自然と口にした言葉は我妻本人にも届いていた。
武田の攻撃を捌きこちらを向くと、
「くふふ、やっと気付きました? 今更気付くなんて頭の方もF級なんですねェ」
「──ッ! お前!!!」
下卑た笑みを浮かべ我妻。しかし、それがわかったからと言って響がどうこう出来る相手ではない。
響はF級で彼はB級なのだから。
攻略隊はもう武田一人。戦力差は絶望的だ。
「響君……に、逃げるんだ」
「おやおやしぶといですねェ……さっさと諦めればいいものを」
「俺は攻略隊のリーダーだ……仲間の命はお、俺が守るンだ」
ボロボロになりながらも、それでも武田は臆せず剣を構える。
「武田さん……俺は、なんて勘違いをしてたんだ! クソ、どうにかしないと!」
その時だった。
痺れを切らしたのか、遂に大蛇が動き出した。
狙いは我妻。どうやら大蛇のテリトリーで暴れ回っているのが気に食わないらしい。
しかし、響にとってそれは幸運にも近い出来事。武田と大蛇が共闘すればあるいは我妻を倒せるかもしれない。
そのためにはまず情報がいる。
──なんでもいい、あの蛇の情報を!
【ブラックサーペントLv13】
・弱点 口腔内、眼球
【目目連の熟練度が一定に達しました。可視化範囲が増加します】
【ブラックサーペントLv13】
・弱点 口腔内 眼球
・特性 視力がほとんどない為ピット器官による熱感知が主。動いている獲物を率先して狙う傾向有り。また、体温を1200度まで上げることが可能。
「わ、なんか色々増えたぞ!?」
熟練度が上がったおかげで、可視化情報の幅がグンと広がった。
モンスターの特性が事細かく記されているのは、この場面でなくとも相当役に立つに違いない。
ブラックサーペントは目目連の通り、動かない響には目もくれず標的は完全に我妻だ。
そして我妻はまだブラックサーペントが動き出しているのに気が付いていない。
しゅるしゅると音もなく這い寄る漆黒の大蛇。
対峙している武田はそれに気付いたようだ。
──一か八かだ!
「武田さんッ動いちゃダメだ!!!!」
「えっ!?」
響は敢えて大声を上げた。ブラックサーペントは音にはあまり反応しない。
武田は一瞬ビクリと動いたが、それ以上に我妻は大きく振り向いた。
それと同時にブラックサーペントは飛び出し、巨大な口腔が我妻へと迫る。
「チッ!! 蛇如きがッ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます