第一章 31 「状況開始」

廃砦を望む森の木陰にアカリは身を潜めていた。

砦は周囲の視界をよくするべく森が伐採されており身を隠す場所が少ない。この状況では敵の門番は狙撃で処理するしかないと判断する。

消音器を取り付けたHK433をバイポッドを内蔵したフォアグリップで地面に固定、ホロサイトの倍率ブースターをセットして標準を定める。


- 距離は目算で三百メートル…か。ただ敵は案山子同然と


最初に狙うのはアカリから見て奥側、城門の右に立つ男だ。

ブースター越しに見る男の表情に緊張感は無く、漫然と周囲を見ている。対して、手前の男に至っては手持ち無沙汰なのか、剣を布で磨いているあり様だ。

緩み切った男達の状況はアカリにとっては好都合である。

アカリが深く息を吐くと同時にトリガーが引かれ、乾いた音と共に発射された五・五六ミリの弾丸が男の頭部を撃ち抜く。

その場に崩れ落ちる男。

その異変にもう一人の門番が気付くが、彼が何が起きたのか理解する前に、その思考も撃ち抜かれた脳と共に失われる。


門番達が声を上げずに倒れたのを見計らい、アカリは素早く次の行動へと移行する。

彼女は全力疾走で砦の城門へと移動。倒れている門番の内、城壁内から見える位置に倒れた男の脚を掴み、壁の陰に移動させる。

アカリは壁内の様子を確認すべく、手鏡を取り出した。


- 気付かれてない。変わらず焚火の横に二人…もう一人は…姿が無い…


ドローンで偵察した時には焚火横に三人だったので、もう一人が移動している。


- 見回りに出た?いや、門番の様子からしてそんな真面目に仕事をしてる様子は無い…砦の中に行ったかな


少なくとも門から焚火のある壁内の広場までは一直線。こちら側には居ないのは間違いない。ならばと、アカリはプランを変える事なく門を潜る。

男達がこちらに気付く前にコスタ撃ちの構えで急接近し射撃。

「っぐう‼︎」

「⁉︎、誰…ガハッ‼︎」

二人の男は短い悲鳴と共にその場に倒れ伏せた。

アカリは男達の側に行くと足で突いて死亡確認をする。

その刹那。

「おーい、どうした?今なんか音が…って誰だテメェ⁉︎」

砦の入口からもう一人の男が姿を見せた。

「ッチ‼︎」

アカリは直ちに男にライフルを向けて数発射撃。

「グハッ‼︎」

腹部を撃たれ蹌踉めく男に向かって駆け寄ると回し蹴りを繰り出して男を転倒させる。

「て、テメェ…何者…ガハッ⁉︎」

アカリは喋ろうとする男の胸元を踏み、ライフルを眉間に押しつけた。

「…拐われた娘は何処にいる?」

「あ、あの女の仲間か…っけ、残念だったなぁ…今頃地下牢で…仲間達が宜しくしてやって、ゴフッ‼︎」

アカリは無言で男の首を撃った。

「…苦しんで死んどけよ」

ヒューヒューと呼吸が出来ずに苦しむ男を捨て置き、アカリは砦の入口に侵入する。


- 地下牢か…


先程の男が言ってる事が本当なら、既にリアに魔の手が伸びているという事になる。

「…クソッ」

猶予が無いことに焦りが滲む。同時にそれが悪手なのも分かっていた。


- 落ち着けよ、俺…敵を排除してリアを救出する。今はそれだけ考えろ


この世界に召喚される前、ゲームで戦っていた時と同じだとアカリは心を殺す。





「オエッ‼︎ゲホッ…‼︎」

口の中に注ぎ込まれた男達の汚物を身体が拒絶し、リアは激しく嘔吐する。

もう何度吐いたか分からない。すっかり胃は空っぽなのに、嘔吐感だけが襲ってくる。

「ゲホッ…ハァ…ハァ、もぅ…嫌ぁ…」

「また吐きやがった。飲めって言ってんだろ⁉︎」

そう言って男が乱暴にリアの髪を引っ張り、その口に異物を押し込む。

「ギャハハ‼︎リアちゃん可哀想に、そいつ絶倫だから飲むまで出し続けんぞ⁉︎」

リアを痛ぶり、下品に笑う傭兵の男達。

その様子を見ていたユージンがソファーから立ち上がった。

「あれ、旦那。もういいんですかい?」

「ああ、記録魔道具の容量がもう一杯だ。餌としては十分だろ」

「そいつは残念。ようやく尻の穴もほぐれてきたんで、そろそろ突っ込んでやろうと思ったんですが」

ユージンは尋ねて来た傭兵の男の肩を叩き笑った。

「好きに続けていいさ。初物だけ手をださければね」

「ひっひ、そう来なくっちゃ!」

男が嬉しそうにリアへの凌辱の輪に戻るのを見届けると、ユージンは地下牢を後にした。


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