第2話 黄チューリップが睨む頃。
その少女は、大人しげだった。しかし、彼女はそれを致命的な欠点じゃなくて褒められる長所へと変えるような狸だ。実際、少しおどおどしつつも、はにかんでいる様子を周囲が可愛がっている様子からも、それがよく分かる。
それに、あの少女は所有欲の塊だ。今だってまーくんの隣をさり気なくだが、独り占めしている。その様子に思わず唇をきつく噛み、胸元の赤いリボンを皺が出るか出ないかギリギリのラインを保ちながら左手で握った。
「秋乃‥‥。」
少女は鏡に写ったようにそっくりだった。それも当たり前。何故ならば、その少女が私の双子の秋乃だからだ。秋乃とは顔の造作も傍からみられる雰囲気もかなり一致していて、ほくろの位置も似通っている。私は春乃なのに『秋乃』と親にも頻繁に間違えられている。
そんな彼女が、私の好きな人と付き合った、という話が漏れ出たときの私の心情を誰か原稿用紙何枚でもいいから説明してほしい。喉には何度も恨み言がせり上がってきて、肺は憎悪に塗れていた。まーくんから告ったらしいその関係を見て、何度も何度も歯ぎしりする。
もはや何も見たくないと昨日は背中を縮めた。
でも、今日からは違う。堂々とする。そして、まーくんに秋乃にない私の良さをアピールして、私を選んでもらうのだ!
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