第15話 ダメス・ナカダサーレの忠義
3日ほどかけて準備を整えてから、詩織隊は東京に向けて出立した。主力メンバーが5人減ったが、新たに加わった者もいる。そうダメス・ナカダサーレだ。
ダメスはまだ
地下44階のフィールドは広大だ。具体的な大きさは分からないが地下33階よりも大きいのは間違いない。魔人になって翼が生えたので、今は空を飛ぶこともできる。飛んで確認してみたが地下33階の倍はあるだろう。東京23区相当ぐらいの面積だと思われる。地下55階にはワイバーンの群れが飛んでいるので気軽には飛び回れない。が、おそらくそう変わらないのではないだろうか?
地下50階から地下55階まで下りる過程でも感じていたのだが、もうこれ以上階層の面積は広くならないのかもしれない。1つの階層が北海道ぐらいの面積まで広がったら、このダンジョンの攻略に途方もない時間を要求されるのでありがたい傾向だ。
地下44階のフィールドは溶岩地帯だ。トカゲ型のサラマンダーや闇騎士の炎版と言った感じの炎上騎士など、火属性に強い魔物が多い。たいてい水属性か氷属性が弱点になる。地下55階まで辿り着いた俺たちにとってはそれほど厳しい敵ではない。
空中に飛び上がって現在位置を確認できるので、最短ルートでこの階層の宮殿へと向かった。それでも広いので到着までは2日を要したが……。
やがて地下44階の宮殿が見えてくる。壁から溶岩が流れ出していて、陽炎がゆらめいている。火耐性を育てているので、見た目ほどは暑くは感じない。火属性が苦手だったら地獄だろう。
「宮殿まであと少しだにゃ」
アヤさんがそう呟いた時に初見の敵が現れた。「ヴォルカニック・アルマジロ」という魔物だ。体長は2mほどあり、体は鎧で覆われているのだが、鎧の隙間からは火炎が吹き出ている。レベルは48。
アヤさんが【乱撃爪】を放つと、敵は丸まってボールのようになって転がっていく。それが猫人の本性を刺激してしまったらしく、アヤさんは夢中になって追いかけては爪攻撃を放ってボール状になったアルマジロを転がしていく。
アヤさんが放った横からのフックがクリティカルで入ると、ヴォルカニック・アルマジロは勢いよく転がっていき、岩にぶつかって俺の方に向かってきた。体は真っ赤に光りだし、目も赤く充血している。見るからに嫌な予感がする。
<敵は自爆する可能性があります>
ソフィアからの警告と同時にダメスが叫んだ。
「危ない!」
俺の前にダメスが身を挺して飛び出す。そして、それと同時にヴォルカニック・アルマジロが自爆する。爆煙が消え去った後に俺が目にしたのはズタボロになったダメスだった。まだコイツは火耐性が+8あるが流石に自爆の影響は甚大で虫の息になっている。
「ご、ご主人さま……ご無事ですか?」
ダメスは消え消えの声でそう尋ねた。
<「うむ。大丈夫だ」>
実際のところ俺のほうが火耐性は高いので、直撃を受けても致命傷にはならなかったのだが、俺はダメスの働きに満足していた。
「お役にたててよかった……。死ぬ前にお願いがあるのですが、言ってもよろしいですか?」
<「なんだ? 言ってみろ」>
「……キスしてください」
顔を真っ赤に染めながらダメスが言った。すでにさんざんやることはやっているのだが、なかなか良いデレ具合だ。
「いいだファック」
ダメスを抱き起こして唇を重ねると彼女はすぐに回復した。アイテムボックスからマックスポーションを取り出して口に含んでからキスしたのだ。
「これは……マックスポーション!? このように高価なものを私ごときによろしいのですか?」
<「もちろんだ。俺の子供を産むまで死ぬことは許さん。100人ほど産んだら、性奴隷から妾に出世させてやる」>
真人へと進化しているのでダメスの寿命は俺とそう変わらない。これから千年ものあいだずっと奴隷のままというのは流石に不憫なので、チャンスを与えてやることにした。ふっ、我ながら心が広いな。
ダメスは大喜びで俺に抱きついて、元気よく叫んだ。
「ではすぐに種付してくださいっ!」
「今、ここでファック?」
そう言いながら、あたりを見渡すと呆れたような顔つきをしたアヤさんがこちらを見ている。いや、元々はアヤさんが招いた事態なんですよ?
あまり緩みすぎていると足元を救われかねない。そっち方面はこの階層のボスを攻略するまで自重しよう。
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