第14話 別働隊
「なるほど、進化したいのか。だったら正天使である私に真っ先に相談すべきだったな」
俺たちを家に迎え入れると、ユリエルはそう言って微笑を浮かべた。
「さて……どちらでも相手にできるが、どうする?」
「どちらでもファック?」
てっきり異性のみが対象だと思っていたので、思わず地声が漏れる。
「ああ、2人ともファック可能だぞ、性転換すること無くな。ふふふ」
<「ま、まさか……ふた!?」>
ユリエルは微笑を浮かべたまま首肯したが、不意に真面目な顔になってこう続けた。
「とはいえ、やはり相手することになるのはメグになるな。晶はガラガエルが狙っているのだろう? アヤツにはちと借りがあるので事を構えたくない」
ユリエルがそう言うと晶の表情が曇った。メグのほうは満更でもないようで、「でも……、困ったわ……」などとつぶやきつつも表情は紅潮している。
「ガラガエルは処女厨だからな……。
ダメスの処女ならば別に与えても良かったのだが、今になって言われてももう遅い。
「お前たちの戦闘に一枚噛んでいたようだから、流石に自分からは言いづらかったのだろう。処女厨としての欲望を充足させるために非番の時に職権乱用したと思われかねないからな」
俺の考えを読み取ったのか、ユリエルが補足説明する。
「他にも方法はあるぞ――引き換えにお前自信の処女を捧げるのだ」
<「処女って、俺は男だけど? ま、まさかアナ……」>
「いや……そういう意味ではない。次は女の化身を作ってもらうということだ」
つい最近【化身】スキルのレベルアップが可能になったのだが、化身の数を増やすのか化身を強化するのか決めかねていた。ユリエルはどうやらそのことを知っているようだ。高レベルの【鑑定】スキルだとそこまでわかるのかもしれない。
女の化身を作ってユリエルにやられるのなら悪くない話だ。女の快楽にも興味があるが、いきなりガチムチの男を相手にするのは流石にハードルが高い。ふたの美女というのはうってつけの相手だろう。だが、処女厨なのはガラガエルなのだ。いくら化身とはいえアイツにやられるなんて、考えただけでも身の毛がよだつ。
「嫌いな上司に無理やりされて快楽堕ちする話が好きだって言ってたじゃないですか?」
詩織が口を挟んでくる。いや確かにそういうの好きだけど、化身とはいえ自分で経験するのはちょっときつい。あくまで傍観者として楽しみたい。
<「ちょっと考えさせてくれ」>
「構わんが、あまり時間をかけると他の者に使ってしまうかもしれんぞ?」
ガラガエルは休暇中なのでこれからどこに移動するのか見当もつかないが、ユリエルに関してはこのダンジョンの44階と55階の担当だ。暫くの間は誰もこないだろう。
ユリエルの館を出た俺たちは会合を開いた。
<「ここから下の階層は進化していないと厳しいが、どうやら簡単には進化できないようだ。そこで、またパーティを2つに分けようと思う」>
「またネコ組とフクロウ組に分けるということですか?」
<だいたいそんなところだな……。だが別働隊は詩織に率いてもらおうと思っている>
「なぜです!? やりまくっていたのが実は気に入らなかったのですか?」
詩織は涙を浮かべて抗議してきた。やりまくっているのを隠そうともしない。すでに開き直っている。
<「そういう訳じゃない。東京に行ったほうが詩織の本領が活かせるだろう。サキュバスである詩織の能力は人間の男を相手にした時に最大限発揮される。未だに東京圏には3千万人近い人間が住んでいてそのうちの半分は男だ」>
「なるほど……お屋形様は組織を拡張しようとしていましたね。そういう意図があるのであれば確かに適任だ」
小太郎がつぶやく。
<「そうだ。組織を拡張して、同時に複数のダンジョンを攻略する。ここのような巨大ダンジョンはまだまだ攻略の目処が立たないが、男爵級や子爵級の小型ダンジョンは急がないとすべて他人に掻っ攫われてしまうからな」>
「残念ながら、我々は別働隊には加入できぬ。このダンジョンから出ることができないのだからな」
寂しそうにモンタロスがつぶやくとニャンキーやブラックモアが首肯する。このダンジョンから出ると召喚魔法が無効になってしまうのだ。その代わり、ダンジョンをクリアすると「真の生」を得て地上や他のダンジョンでも活動できるようになるらしい。
<「いや、お前たちがいるからこそこのダンジョンの攻略に全員は必要ないだろうと考えたのだ」>
詩織たちがいなくなれば戦力ダウンは間違いない。が、このダンジョンの中であればモンタロスたちを召喚魔法で呼び出せるので、戦い方を工夫すれば十分にやっていける。
<「それに、東京にはアウストレイヤ様もいる。彼はユリエルやガラガエルより上位の存在なのだから、なにか良い知恵を与えてくれるかもしれない」>
結局、旧フクロウ組の晶、白姫、メグ姉、小太郎に詩織を加えた5人で東京へ向かう別働隊を結成することにした。それに加えて俺の化身である『人間伊東3号』と双子の姉である香月歌が道案内と連絡係を兼ねて同行する。
命がけで『人間伊東3号』を守ろうとした歌の評価は俺の中で瀑上がりしているので、400万マカほど渡してレベル42になっている。よほど危険な場所に行かない限り心配はないだろう。
残りのメンバーは引き続きこの「裏庭ダンジョン」でレベル上げに励みつつ、一部を相模原のダメス領(旧中足領)の守備に向かわせることにした。
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