第13話 進化の秘密を求めて
地下44階の闇騎士はサクッと倒すことができた。街に戻り、守護天使に挨拶しておこうと広場へと向かう。が、守護天使の代わりにそこにいたのはガラガエルだった。
<「この階層の担当になったのか?」>
「いいや。この階層には守護天使はいない。ユリエル殿が一応兼任という形になっているがな」
<「人手不足なのに休暇とは良いご身分だな」>
「ふん。皆が休んでいた時に自分だけ働いていたのだ。当然の権利だろう」
ガラガエルの言うことも一理ある。このような場合に空気を読んで会社のために自己犠牲精神を発揮し続けていると精神を病む原因になりかねない。会社員時代の俺がまさにそうだった。『大魔王ガーマの全身鎧』を無理やり俺に押し付けていなかったならば、同意していただろう。
「その鎧を引き受けてくれた貴様には感謝している。困っていることがあるのだったら相談に乗ってやってもよいぞ?」
<「相談? 冗談はやめてくれ」>
エレベーター塔で化身を守ったのは事実だが、とてもではないが信用できない。
「これからその者の性転換をするのだろう?」
ガラガエルはそう言って、晶に熱い視線を送る。
一体全体、どこから情報を入手してくるのだろうか? 詩織の様子を伺ったが、平静にしている。後ろめたい時の態度はわかりやすいので彼女が情報を漏らしているということはないだろう。
だが誰かの脳の中に「盗視聴ミミズ」がいつの間にか入れられているという可能性はある。アウストレイヤが持っているのだから、ガラガエルが持っていてもそれほど不思議ではない。
「オマエにはファッキン関係ねぇ」
俺は地声で吐き捨てるように地声で言って、ガラガエルを無視して立ち去ろうとした。
「進化できないままで良いのかな?」
ガラガエルがボソリと呟き、俺は思わず歩を止めた。
「性転換後に処女を私に捧げれば進化できるようになるぞ?」
ガラガエルはそう言って微笑を浮かべる。
本当にコイツはゲスだ……。しかし、晶とメグ姉のレベルがこのまま46で止まり続けるならば、地下55階のボス戦に連れて行くのは危険すぎる。進化の解禁は是が非でも実現したいのも事実だ。
<「検討しよう」>
俺はソフィアの声でそう呟いた。ガラガエルは相変わらずムカつく奴だが、進化のヒントは手に入れた。やはり天使が関係しているようだ。
「僕はお屋形さま以外の人とはしたくありません」
晶は目をうるませて言った。ガラガエルのことだから恐らく晶が嫌がれば嫌がるほど歓ぶのだろう。きっと奴はそういう性格をしている。
意思に反してガラガエルに晶の躰を差し出すのは嫌だ。が、進化してくれないと困るというのも事実だ。
とりあえず俺たちはエレベーターに乗って地下33階へと移動して、広場へと向かった。ガラガエルと最初に出会った場所だ。噴水前ではミルチェルがぼーっと突っ立っている。まだ見習い天使なので、本来であれば守護天使にはならないのだが、ガラガエルの代理として勤務しているようだ。
「ミルチェル!」
アヤさんが駆けよってハグすると、ミルチェルの表情が明るくなった。
「ここの担当ににゃったの?」
「ガラガエルさまの休暇が終わるまではここにいないとならないのだー」
ミルチェルは例によって『獣王の鉤爪』というレジェンダリー級の武器をアヤさんにプレゼントしている。
<「ミルチェルは進化の条件を知っているか?」>
2人の会話が一段落したところで割り込んだ。
「知っているけど言ってはいけないのだー」
どうやらミルチェルも知っているようだが、まだ見習いの彼女にはリミッター解除の権限は無いらしい。
その後は地下22階の街に守護天使ウンブリエルを訪ねた。他の天使たちが個性的なので影はうすい。が、人畜無害な良い人だ。
「ほう……進化の条件を知りたいのか?」
ウンブリエルはそう言うと、ネバネバとした視線でメグ姉を舐め回すように見た。まずいな。やぶ蛇だったかも……そう思ってヤキモキしたが、しばらくすると吐息混じりに呟いた。
「残念ながら私には権限がない」
<「ガラガエルは可能だと言っていますが?」>
「ガラガエル殿は正天使に昇進したからな」
どうやら天使の位階が関わっているのかもしれない。だとすれば、やはり最上位の天使であるラクスティーケと直接的に関わることが大事なのだろうか?
<「いろいろと教えていただいて、ありがとうございます」>
立ち去ろうとすると、ウンブリエルが続けた。
「決めるならば早くしたほうがいいぞ。数に限りがあるからな」
<「え?」>
「当然だろう。際限もなく進化させることができると思ったか?」
<「つまり進化を解禁する個体の数に上限があるということですか?」>
「詳しいことは言えんが、察するのは得意だろう?」
はっきりとした事はまだ分からないが、だいぶヒントは貰った。天使の中でも上位の存在でないと権限がないようだ。
<「もう少し情報を集めてみよう」>
「残念ながら、私にも権限がない。お前たち2人が進化できたのは私と寝たからという訳ではないな」
地下11階の街のアリーチェルを尋ねると彼女はそう言って、意味ありげに俺と小太郎を交互に見た。
「あらあら……いつの間に兄弟になってたのかしら?」
続いてメグ姉がジト目で俺と小太郎を交互に見やる。
<「せっ……接待だ」>
「ほほう。言うものだな。接待と言うからにはもう少し気持ちよくしてもらわねば……。今からどうだ? ガーマの技を堪能してみたいものだ」
アリーチェルは直截的に誘ってきたが、今はそういう気分ではない。後でまたお相手してもらうことにして、地下55階へと向かった。ユリエルの家に招待されているし、彼女の話も聞いてみたい。
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