第5話 魔人忍者(小太郎視点)
目を開くと皆がこちらを見ている。これはあれか、なんか言わないといけないのか?
「魔人の風間小太郎だ。よろしく」
俺もお屋形様のように外国語っぽい響きにしたかったのだが、ハンドルネームも二つ名もあだ名も無い。仕方がないので人間の時の名前をそのまま流用している。
母ちゃんが大きな姿見を持って来てくれた。お屋形様の姿を見ていたのでだいたい想像通りの姿だ、翼も髪も瞳も黒いが、2本の角は青い。角の形や色はお屋形様と多少違うようだ。ていうかパンイチなんだけど、俺。
<「なんだ、かっこいいな。ちょっとうらやましいぞ」>
お屋形様がスピーカー越しにソフィアの声で感想を漏らす。
「どうも」
気の利いた返事が浮かばないので、とりあえず短くそう返事をする。
<「これは進化祝いだ」>
お屋形様はそう言って、黒装束の揃え装備を俺に手渡した。
<「風魔上忍装束の揃え装備だ」>
「ありがとうございます」
俺は一礼して渡された装束を装備した。ステータスが一気にあがるのを感じる。俺は自分自身を鑑定してみた。
風間小太郎
種族 魔人
レベル 47
HP 9276/9276(+1855)
MP 10290/10290(+1855)
膂力 8846(+1769)
体力 9367(+1837)
知力 10261(+2052)
素早さ 27621(+15345)
器用さ 24004(+12002)
直感 11345(+2269)
運 8906(+1781)
スキル 【隠密+7(+2)】【鑑定+5(+2)】【分析+5(+2)】
【不意打ち+6】【暗殺+1】【索敵+1】【念話+7】【遠視+4】
【暗視+5】【強弓+7】【投擲+7】【鋳造+4】
【アイテムボックス+2】
魔法 【火+6】【風+9(+2)】【水+4】【氷+4】【土+4】【雷+5】
【回復+4】【補助+3】
耐性 【物理+5】【精神+6】【毒+4】【麻痺+5】【石化+2】
【火+6】【風+9(+2)】【水+4】【氷+4】【土+4】【雷+5】
武技 【変わり身】【分身】
進化に伴い【暗殺】という物騒なスキルを獲得してしまった。が、素直に受け入れている自分がいる。というかむしろ積極的に使いたいぐらいだ。ふふふ。
『風魔上忍装束の揃え装備』は武技【変わり身】と【分身】という実に忍者らしい技を提供してくれる。「素早さ」と「器用さ」を中心としたステータスの上昇も大きく、更に【隠密】【鑑定】【分析】を+2してくれる。密かに鍛え続けていた【鑑定】スキルと【分析】スキルだが、揃え効果のお陰でかなり使えるようになった。
このように振り切れた特性を持つようになったのも、晶がフクロウ組のリーダーをやってくれたからだろう。なんだかんだと言って、自分はリーダー向きじゃない。
<「小太郎も進化したことだし、下の階層に再挑戦だな」>
すぐに出立ということになった。俺が『進化のコクーン』に入っている内に沼底と繋がる螺旋階段を見つけたらしい。近場にいた敵はレベル57だったということなので、かなり深いところまで潜ることになるのだろう。
「偵察は俺に任せてください」
自分にしては珍しく自信満々な調子で言った。今の自分の能力ならばレベル57の強敵相手でも通用する気がする。無論、一人で敵を蹴散らすのは無理だが、俺の任務は偵察だ。
【隠密】スキルが+9になったことで光学迷彩を使用することができるようになった。匂いを含めてほぼ完璧に気配を消せるので、強敵でも簡単に気づくことはできないだろう。
全員で長い螺旋階段を降りて、地下深くまで降り立った。
心なしか空気の質が違うような気がする。詩織さんにバフを掛けてもらってから、気配を消してどんでん返しを回して部屋の外に出る。
200メートルほど先に奴らはいた。気配を忍ばせたまま鑑定可能な距離まで近づく。
『ステータス25,000前後、精神無効、物理、火耐性大。雷は7未満。弱点は光、水、氷。尻尾の猛毒と口からの火炎ブレスに注意』
俺は手短にそう報告した。それと同時に、エスカトニック・スコーピオン達は何者かに鑑定されているのに気がついたようだ。こちらに向かって凄まじい勢いで走ってきた。
俺は踵を返してすぐに逃げ出す。レリックの揃え装備のお陰で、俺のほうがスピードは上だ。
俺は麻痺効果のある煙玉を背後に向かって投げながら進んだ。麻痺が弱点という訳では無いが、数秒程度の時間は稼げるだろう。
俺が逃げ戻ると、パーティ全員がすでに廊下に出てサソリの軍団を待ち構えていた。
人間が通れる程度の大きさの隙間から俺がバリケードに入ると、お屋形様が【天魔断罪】を連発する。何度見ても凄まじい武技だ。
雷耐性もそれなりにあるようだが、雷撃を受けるたびに動きが固まるので、モンタロスなどの光属性攻撃の使い手達が1匹ずつ集中砲火を浴びせる。
土魔法が得意な味方は敵の前に土魔法で新たなバリケードを築き、出来上がると詩織さんが結界魔法で補強する。
【天魔断罪】を11連発したところで御館様のMPが尽きた。マジックポーションを3本まとめてがぶ飲みしている。行動の自由を遂に回復したエスカトニック・スコーピオン達が凄まじ勢いで、バリケードを破壊していく。
「エレクトリック・ストーム」
雷魔法と風魔法の複合技を俺は放った。バリケードに取り付いていた敵を麻痺させた状態で後方に吹き飛ばす。俺の意図を察したアヤさんがすぐに「トルネード」を放って敵数体を更に後方へと押しやった。
MP補充を完了したお屋形様が再び【天魔断罪】を連発し、光魔法で各個撃破していくと。敵の数が半分以下になった。お屋形様が11発目の【天魔断罪】を放つと同時に、アヤさんが敵陣に入って相手を撹乱する。俺もその動きに合わせて、敵陣へと打って出た。
目的は敵の殲滅ではなく撹乱だ。敵の合間を全速力で駆け抜けて、敵の背後から【ウォータービーム】を撃ちまくる。俺の水魔法では致命傷にはならないが、タゲは取れる。俺を追いかけてきたサソリの背中に誰かが放った【アイスランス】が突き刺さる。
こちらの優位が決定的になると、アヤさんと白姫が【獣化】スキルを発動して一気に敵を殲滅した。
「<小太郎の偵察のお陰で犠牲者を出さずに完勝することができた。見事な働きだ。これからも頼むぞ!>」
お屋形様がそう激賞すると、皆が口々に俺のことを褒めそやした。注目をあびるのは苦手なのだが、悪い気分ではないな。
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