第4話 螺旋階段
詩織の進化が完了したのでダンジョンの探索を進めることにする。
4日ほど掛けて地下36階を探索してから、地下37階へと降りた。地下37階の休憩室を拠点にして付近を探索していると小太郎がレベル46になる。進化ラッシュだ。
<「小太郎の進化先は何なんだ?」>
「どうやら魔人しか選べないようです」
どういうことだろう? 俺の時は
翌日には晶と白姫もレベル46になった。白姫についてはアヤさんと同様に上位獣人にエスカレーター式で変化するのだが、問題は晶だ。進化先がわからないのだという。それから2日後にメグ姉もレベル46になったが晶と同様に進化先が見えない。
<高坂晶と風間恵は進化の要件を満たしていません。「6,345,125マカ」と「進化の種3つ」に加えてもう1つの要件があります>
ソフィアによるとそのもう1つの要件というのは明らかにされていないようだ。
みんなでいろいろと討論したが、結局のところよくわからない。詩織がサキュバスになったように極端な個性があれば、それが進化に結びつくという可能性はある。が、それではなぜ俺が天人を選ぶことができたのか説明できない。
人を殺めたことがある者は魔人の適性が上がるという仮説も考えられる。小太郎も母親であるメグ姉を実家に迎えに行ったときに、近辺で悪行三昧を尽くしていた野盗の集団を屠ったそうだ。
「良くはわかりませんが、進化にはラクスティーケさまが関わっているような気がしますね」
詩織が意見を述べた。
<「たしか
「ああ、ラクスティーケ様は俺たちが9番目だって言ってたな」
俺の質問に小太郎が答える。
獣から獣人への進化は『進化の種』とマカだけで可能だが、人間が進化するにはラクスティーケに直接会う必要がある。現時点での仮説はそんなところだが検証のしようがない。
とりあえず小太郎には『進化のコクーン』に入ってもらった。メグ姉は息子の進化ということで心配なようだから、休憩室に残って見守っている。俺は狩りのルートを決定するために半日だけパーティに同行し、午後は休憩室でメグ姉といちゃついた。
暫くのあいだ、晶とメグ姉はレベル46でやっていくしかない。進化しなくてもレリックまでは使いこなすことができるので、レリック装備は優先的に彼らに渡して生存率を上げることにした。
「オヤカタサマ、池を見つけたぞ!」
興奮した調子でモンタロスが念話を飛ばしてきたのはその日の夕方だった。
小太郎のことはメグ姉にまかせて、俺は池に向かう。
「下の階へと続く螺旋階段を発見しました!」
現場に着くと晶が笑顔で報告した。付近にいた敵を一掃した後で、池の底に隠された階段を探し出すために人海戦術で床を叩きまくったようだ。指示されなくても、ちゃんと動いてくれるのは頼もしい限りだ。
「みんなよくやっファック! 降りてみよう!」
俺も思わず興奮して地声がでる。
この螺旋階段は地下36階から地下25階へと続くものより更に長かった。
「2000段までは数えましたが、切りがないですね」
数を数えるのが好きな詩織も呆れている。
ようやく辿り着いた部屋には何もなかった。恐らく、地下36階のときと同じパターンでどんでん返しか隠し扉があるのだろう。
「ありましたぞ!」
全員で手当たり次第に壁を押したり叩いたりしているうちに、鬼王のニャンキーがどんでん返しを見つけた。最近は詩織のバイブ的な立場なので影が薄い。いやもともと薄めかもしれない。夜の生活以外で活躍することができて、ニャンキーは嬉しそうだ。
<「かなり下まで降りたから、不用意に外に出るのは危険だな」>
こういう時に化身が使えると便利なのだが、今は東京で活動中だ。結局【眷属召喚】で呼び出せる鬼人四大将を中心とした偵察部隊を結成して、外の様子を偵察させることにした。
彼らは殺されてもクールタイム後に再び呼び出せる。ただし、『原型』からコピーされたものが呼び出されるので、再呼び出しされた者に記憶はない。よって最低でも1名は生きて戻ってくれないと、偵察にならないということになる。
5分後に鬼姫の侍女がただ1人で戻ってきた。
「大型のサソリが12体いました。【鑑定】スキルを持っている青大将殿がレベル57のエスカトニック・スコーピオンだと叫んでいました」
彼女はそう報告すると床に崩れ落ちた。まだ息はあるのですぐに回復魔法を掛ける。
レベル57が12体か……かなり下の階層まで下りてきたのは間違いない。無理して戦うのは危険だ。今日のところは一旦戻って、小太郎の進化が終わってから再び挑戦しよう。
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