第3話「至高の悦楽」と「究極の快楽」

****** 詩織視点 ******


 いままで「至高の悦楽」を求めて生きてきた。ここ最近はすごく気持ち良い経験をしている。頭が真っ白になって失神しちゃうやつも遂に経験した。というか最近はそれが普通になりつつある。つくづく自分は幸せも者だ。


 感謝、感謝、大感謝ーっ していますぅー!

 ああ、ホントに、ホントにしていますぅー!


 なぜかテンションが上がって、歌って踊りたい気分だ。これが進化というものか……。


 だが、まだ何かが足りない。まだ極まったという感じがしていないのだ。もっと上があるんじゃないだろうか? ——きっとあるはずだ。


 とは言え……意識が飛んじゃってるんだからこれ以上感じることは不可能なのでは? 何しろ感じる主体が空白状態になっているのだ。


 どうやら自分がどっかに行っちゃうのが快楽の正体のようだ。つまり自分が無い状態である以上、これ以上何かを感じることは無理なはず……。


 その答えは不意にやってきた。降臨したラクスティーケさまが片目を顕にして、お屋形さまとまぐわった後、ほんの一瞬だけラクスティーケさまと目が合ったのだ。


 まさにその刹那、私は「至高の悦楽」の正体についに気づいた。


 気づいてみれば「ああ、なんだ。そんなことか……」という感じだった。トイレに行こうと思って立ち上がったら、1つ欠けていたジグソーパズルのピースがお尻の下に落ちていた……みたいな?


「至高の悦楽」とは「究極の快楽」を与えることと見つけたり!


 自分が経験した最も気持ち良いことを他の人達にも経験させてあげるのだ。いままで我慢を強いられてきた者、不遇だった者ならばなお良い。なぜならば、その「差」こそがすなわち快楽の正体!


 早く地上に戻って世界中の非モテを全員いかせてやりたくてウズウズする。ふふふ。


 今この瞬間に私の淫乱は「エロ道」へと昇華したのだ! 


 われなくほかなし、あるのはエロのみ。

 それぞ我が流派の極意なり!


『進化のコクーン』が溶けていくのを感じる。


 待っていろ世界……気持ちよくしてやるからね!



****** 主人公(魔人レオナイト)視点 ******



「ミシッ」

 真っ白な殻のような状態になった『進化のコクーン』に亀裂が入る。考えてみれば進化の瞬間を間近で目撃するのは初めてだ。亀裂が全体に広がると「ぽわーん」というやや緊張感に欠ける効果音とともに『進化のコクーン』が消滅し、進化した詩織が姿を表した。


「こ、これがサキュバス?」


 オレの心を代弁するかのように、小太郎が驚きの声を上げる。

 想像していたサキュバスとはだいぶ見た目が違うのだ。普通のサキュバスは黒いコウモリのような翼を生やしている筈だが、詩織の翼は純白の鳥の翼だ。一見すると天使のような外観をしている。角も柔らかそうな感じでピンク色をしていてなんかエロい。


「我が名はシオリ。原初のサキュバスにして『究極の快楽』を与える者。今後ともよろしく」

 詩織はそう叫ぶと同時に襲いかかってきた。


「今日は私の進化祝いをしてもらいますよ! 男も女も全員服を脱ぎなさい!」


 お、いままで受けに徹してたんだけど、痴女っぽくなったな。陰極まって陽となるというか、M極まってSとなるといったところか。ちょっと楽しみだ……え、いきなり!?

 

 ああ、吸い取られるぅ〜!!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る