第14話 相模原ダンジョンの悪夢(風間視点)
「正月にハイキング?」
山岸の誘いに俺は少し困惑した。どちらかと言うとインドア系の人間なので正直言って乗り気ではない。
「人数合わせなんだよ。男3人、女3人のほうがバランスが良いだろ?」
なるほど。女が来るとなるならば考えよう。
山岸は高校時代の同級生だ。
今は別々の大学に通っているが、未だに付き合いがある。陰キャで人付き合いが苦手な俺にとっては、リア充世界との唯一のつながりが彼だった。
大学生になって参加した合コンはすべて山岸が誘ってくれたものだし、BBQに誘ってもらったこともある。そう言った意味ではけっこう感謝している。
こういうケースで女の子が3人ともかわいいということは滅多にない。どうせいつものパターンで「マイナー登山道開拓団」のリーダーである
だが、たまに俺にとってどストライクな娘が人気薄で俺に回ってくることがあるので無下に断るのは得策ではあるまい。自分の好みが割りと独自なお陰だろう。
結局、山岸に押し切られる形で俺はハイキングに参加することになった。カップリング的にはほぼ予想通りだったが、3人ともそれなりにかわいかったので問題はない。むしろ棚ぼただろう。
後に「シューターズ・クラウド」と呼ばれることになる「おでんの大根のような雲」が現れた時のことは今でもよく覚えている。みんなの額に突然「一」の文字が浮かんた。いや、中足だけは最初から「二」だったか。アイツの方が文字通りレベルが上の存在だったのだ。
俺たちはすぐに黒い石板と地下へと続く階段を見つけた。辺鄙な山中にこのような人工物があるなんて普通に考えたらありえない。しかも都心の新築ビルよりもきっちりした造りなのだ。
女子たちは消極的だったが、俺たちに押し切られる形でダンジョンに突入した。その時にパーティを組んだ感覚があって、中足が自然にパーティリーダーになっていた。
それから2ヶ月間ほど一緒にパーティを組んで戦っていたので、山岸以外のメンバーともそれなりに仲良くなったと思う。何度も死にそうになったが、ゲームの知識が役に立った。俺以外はみんなライトゲーマーだったので、それなりにパーティに貢献してきたという自負はある。
なんだかんだと言って楽しかった。ラスボス戦までは上手く行っていたのだ。
ラスボス戦で山岸が死んだ。
山岸がボスのヘイトを買っているあいだ、中足は残り全員にボスを攻撃するように命じた。山岸がタンクだったらそれでいい。だが彼は魔法使いで、タンクは他ならぬ中足だったのだ。
俺が中足のことを認めていたのは、アイツが自ら率先して一番危険な役割を引き受けたからだった。だが、最後の最後でアイツは自分の役目を放棄して、山岸に押し付けた。
中足の指示に従ってヒーラーのくるみちゃんまで攻撃に参加してしまったので、山岸は持ちこたえることができなかった。俺は中足の指示を無視して山岸に回復魔法を掛けたが、焼け石に水だった。
役割分担がはっきりとした6人編成のパーティだ。俺は宝箱や奇襲などを主に担当するシーフ/忍者タイプなので、回復魔法は「+2」しかなかった。
山岸が死に、男爵領の
中足が俺のことを邪険に感じ初めてているのは間違いなかった。山岸が死んだ件で内心含むところがあるのも気づかれているのだろう。そこで俺は領内の人間を集めて「子パーティ」を結成することを提案して、ここまで逃げてきたのだ。
タイミングを見計らってどこかに雲隠れするつもりだった。が、目の前に現れたこの高レベルの男が話のわかるヤツならば、下に付くのも悪くないかもしれない。
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