第6話 ダンジョンの中の街

 道具屋では催涙効果や麻痺効果がある煙玉も売っていたので、いくつか買っておいた。マジックポーション、エリクサー、矢などの消耗品も補充する。


 鍛冶師もいたがエピック・クラスまでのアイテムしか強化、改造できないようだ。とりあえず大量の魔石を消費してミノタウロスの大剣を+2まで強化してもらった。ようやく魔石の使い道ができた。


 雑貨屋では米やビールを売っていた。無洗米5kgが180マカでビールは350mlが25マカ。ものすごく安く感じるので買いだめしておく。


 街には定食屋もあったので、久々にカレーライスを食べた。ああ幸せ。幸せってカレーライスを食べたい時に食べられることだったんだね……。


「さてと……この階はどこから攻略したら良いのかな」

 フロアボスは最後でいい。この階の闇騎士は恐らく地下22階よりも強くなっているだろうから、闇騎士を楽に倒せるようになってから挑戦した方がいいだろう。モンタロスと戦ったときのような危ない橋はなるべく渡りたくない。


「まずはオークがいるか確認しましょう」

 詩織はそればっかだな。

 流石に毎日のようにずっと「あの行為」をしているとそれほどハングリーではなくなる。週に2回ぐらい濃いのをやるぐらいのペースのほうが気持ちいい、と個人的には思っている。溜め攻撃を多用しているうちにの重要性に気づいたのかもしれない。


「まずはエレベーターをチェックしてみよう。ひょっとしたら道中にオークがいるかもしれん」

 まずいないと思うけどね。一応、詩織にも配慮しておく。


 街はこの階層の一番南側に位置していて、エレベーター塔まで街道が伸びている。天井まで達する塔なので、エレベーターの位置は簡単に確認できた。街から北に向かって5kmほどだろうか。


 地下33階のフィールドは草原でちょっとサファリっぽい。

 道中ではゴールデン・ライオンの群れと遭遇したが、アヤさんが吠えると戦わずに立ち去っていった。同じ猫科だからだろうか?

 

 更に進むとサイクロプスの集団がブラディ・ライノというサイを狩っていた。これは久しぶりに「高みの見物で漁夫の利作戦」ができるかもしれない。そう思って近場に土魔法で台を作って観戦していたが、マカが飛んでこない。ひょっとしたら戦闘にエンゲージしている必要があるのかもしれない。

 

「詩織、サイクロプスをてくれ」

 俺はそう言ってから、自分も弓を取り出しブラディ・ライノを射た。エピックの弓も持っているがあえてレア・クラスの弓で射る。ダメージを与えるのが目的ではなく戦闘にエンゲージするのが目的だからだ。


 だがエピックの『氷魔のロングボウ』を使って詩織が放った一撃はサイクロプスの大きな目に命中した。スキル【強弓】を併用しているのでかなりのダメージだ。ドヤ顔で詩織が俺に向き直る。


「上手くなったな。さすが詩織だ」

 とりあえず褒めておく。褒めて伸ばすタイプです! 作戦の趣旨は後で説明しておこう。


 激怒したサイクロプスがブラディ・ライノを無視してこちらに向かって突進してくる。いや、もうしばらく魔物同士で戦っていてください。サイクロプスの前に土魔法で壁を作るが、この階のサイクロプスはレベル40でなかなか強い。激しく暴れてすぐに土壁を粉砕してしまう。


 そこにブラディ・ライノが突進して角を突き立てた。背後からもろにヒットしていたのでクリティカルになったのだろう。サイクロプスたちの注意がブラディライノに戻る。


 戦闘にエンゲージしていないとマカは飛んでこないという仮説は正しかったようだ。その後は敵同士で殺し合うたびにこちらにマカが飛んでくる。最後に残ったサイクロプス2体はすでにHPが半減していたので、パーティメンバー全員で一斉に攻撃してあっさりと倒す。負けようがない。 

 サイクロプス10体、ブラディ・ライノ20体で十万マカほど。特に美味しい相手ではないが楽だし、サイクロプスはエピックの槍を落とした。


 その後も魔物を倒しながら進む。この階層は獣が多い。ダイヤモンド・バッファローの集団を倒すと肉をドロップした。グレートボアという大きなイノシシも同様に肉を落とす。街には定食屋があるので飢える心配はないのだが、食材ドロップは常に歓迎だ。


 けっこう頻繁に敵にエンカウントしたので、エレベーターの塔にたどり着くまでに3時間ほどを要してしまった。


 塔を守護していたのはオーク・キングに率いられたオークの軍団だった。

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