第5話 天使ガラガエルと呪われた鎧

 更に2週間ほど掛けて地下30階にたどり着いた。下に降りるごとにどんどん広くなっているので、攻略にも時間がかかる。敵も徐々に強くなってきたので、この階でまたしばらく滞在してレベルを上げた。


 ようやく地下33階にたどり着いたのはダンジョンに潜って64日目のことだ。

 地下33階は久々のオープンスペースで、地下22階よりも更に広い。スケール感が桁違いなのではっきりとしたことは分からないが、恐らく倍はあるだろう。東西に10km、南北に20kmだとすると200平方km、大阪市の面積に匹敵する。


 地下33階に到着するやいなや、いきなり街を見つけた。宿屋とか武器屋とか道具屋とかがあるいかにもRPGに登場するような町だ。

 ありがたいことに充電スポットまである。Wi-Fiも使えたら言うこと無いんだが、それはさすがに無理なようだ。


「驚いたな。もうこの階層まで到着したのか」

 道具屋の親父が驚嘆の声をあげた。禿げ上がっていて口ひげを生やしたオッサンだ。道具屋のくせに鍛え上げられた身体をしている。


「まずはこの町の守護天使であるガラガエル様に挨拶しておいた方がいい」

 親父にそう言われたので、街の中心にある広場へと向かった。


「あれが守護天使?」

 広場の中心にある噴水の前にあぐらをかいて座っている奇妙な天使がいた。真っ黒なガマガエルの被り物のようなものを着込んでいて、数秒ごとに「ファック……」「ファック……」と呟いている。見るからに関わらないほうが良さそうな人だ。


【鑑定】

ガラガエル

種族  天使

レベル 59

HP  72,000/72,000(+48,000)

MP  99,000/99,000(+66,000)

膂力  57,000(+38,000)

体力  72,000(+48,000)

知力  96,000(+64,000)

素早さ 72,000(+48,000)

器用さ 72,000(+48,000)

直感  108,000(+72,000)

運   90,000(+60,000)

※下3桁切り捨て

【鑑定妨害】スキルによりその他不明


「おい、そこのファック野郎。勝手にファッキン鑑定してるんじゃねぞ……ファーック!」

 ガラガエルは天使とは思えないガラの悪さで悪態をついた。

「あ、すみません。ゴメンナサイ」

 とりあえず自分よりもずっと強いので平謝りに謝っておく。


「ゴメンでファックったら……ファックはいらねぇんだよ!」

 なんのこっちゃ?

「あの~Fワードなしで普通に話してもらえないですかね?」

「ファック!? 俺だって好きでファックしてんじゃねぇんだよ。このカエルをファックしてみろや!」

 

 ん~ソフィアさん通訳お願い。

<このカエルの鎧を鑑定しろ、という意味のようです>


 カエルの全身鎧を鑑定しようとして視線を移すと、鎧の頭部に付いている目に睨まれた。すごい迫力だ。正直言って怖い。


大魔王ガーマの全身鎧

種類    防具

クラス   神宝(Ⅰ)

物理防御力 108,000

魔法防御力 105,000

アビリティ 全ステータス200%向上

      闇無効

      大上昇耐性(+3):物理、火、雷、弱体

      中上昇耐性(+2):土、水、氷、弱体

戦技    【操邪眼】【誘惰眠】【与魔快】【性転換】

特記事項  6つの惑星を支配した大魔王ガーマが生きたまま鎧にされたモノ。

      装着する者は定期的にFワードを使わないと死んでしまう。

      誰も着ていない状態が続くと大魔王は復活する。


 クラスは神宝でぶっ壊れ性能だけど、呪われている。絶対に着たくない。


 戦技は特に酷い。

 【操邪眼】精神耐性+7以下の相手を自分の思いのままに操る。

 【誘惰眠】四肢を切り落とされても気づかないほどの深い眠りに相手を落とす。

 【与魔快】相手に麻薬的な快楽を与えて依存させる。

 【性転換】相手の性別を強制的に変更する。


 しかもこれらの戦技をすべて特定の相手に使用すると、相手は絶対服従することになるという。こんなの着ちゃったら「これなんてエロゲ」的展開しか考えられそうもない。


 そんな事を考えながらあっけに囚われていると、ガラガエルの瞳が怪しく光る。

「えっ、ここからまさかのTS展開!? まだ心の準備できてないわよっ!」

 とばかりに身構えたが、単に話がしたくて仕方がなかったようだ。


 彼は機関銃のように言葉を発し続けたが、単語の2つに1つぐらいはFワードなので何が言いたいのかさっぱりわからない。


「ファック、ファック、ファック——」

「さすがっす。ファックっす」

「ファック、ファック——」

「しらなかった! ファックっすねー」

「ファック——」

「すごい! ファック!」

「ファッ——」

「センスいいっすね! ファックっす!」

「フ——」

「そうなんですか! ファーック!!」


 発言内容はまったく理解できなかったが、奥義「さしすせそ」を駆使してなんとかその場を凌いだ。詳細についてはソフィアにまとめてもらう。


 1.ボスが居るオープンフィールドの階層にはここと同様に街がある。

 2.エレベーターを使って上の階層に行くことができるが、行ったことがない下の階層に降りることはできない。

 3.下の階層にある街ほどグレードの高いアイテムが手に入る。

 4.【鋳造】スキルと同時に街は実装された。


 こんなところらしい。いやーソフィアさん、行間を読むのが天才的にお上手。

 とりあえずはこの街で必要な物を揃えよう。

 

 現在の持ち物を確認する。 

 ほぼすべての近接武器でエピッククラスの物は手に入れたが、レリックのものは未だに手に入れていない。


 防具の方は『鬼武者の軽鎧』というエピックのシリーズで揃えたいのだが、足甲と兜が足りなかった。真紅の和式甲冑でデザインがカッコいい。いわゆる「赤備え」というやつだ。


 兜については『叡智のヘッドギアPRO』以外を使うことは考えられないので諦めていたのだが、『神性結晶の鍬形くわがた』というオプションパーツを付けると、揃え効果におけるワイルドカードとして使えることがわかった。


 つまり「揃え効果の必要装備品数が1つ減る」ので、兜を入手しなくても全部揃えたのと同じ効果が得られる。『神性結晶の鍬形』には「運30%増」の効果もある。


『神性結晶の鍬形』は40万マカで『鬼武者の足甲』は15万マカだった。レベル46が遠のいてしまったが、どのみちまだ300万マカほど必要だ。揃え効果で戦闘力を強化した上で強敵を狩ったほうが効率が良い。


 揃え効果は「敵を倒すとHP・MP10%回復」「物理耐性+2」「精神耐性+2」「溜め時間40%減」と強力。


伊東 玲於奈 

種族  人

レベル 45

HP  5769/5766(+2047)

MP  6307/6307(+2102)

膂力  4882(+1265)

体力  5716(+2028)

知力  6282(+2094)

素早さ 4174(+1082)

器用さ 4288(+1111)

直感  6521(+1690)

運   7763(+2409)

スキル 【戦独楽+7】【回転斬り+4】【破荒突き+6】【五月雨突き+7】

    【乱打+3】【強弓+5】【乱射+4】【無詠唱+8】【念話+5】

    【統率+2】【性技+3】【絶倫+3】【アイテムボックス+3】

    【鋳造+5】

魔法  【召喚+5】【火+7】【風+5】【水+7(+3)】【氷+5(+1)】

    【土+6】【雷+7】【光+3】【闇+4】【回復+5】【補助+4】

    【弱体+2】【結界+1】

耐性  【物理+9(+3)】【精神+10(+2)】【毒+6】【麻痺+5】

    【石化+3】【睡眠+3】【火+7】【風+5】【水+7(+3)】

    【氷+5(+1)】【土+6】【雷+7】

武技  【雷束撃】


 アイテムボックスをスキルとして覚えたので、マジックポーチは詩織に渡した。スキルレベルが+2になった段階でマジックポーチに入っているものは全部入るようになったので、育てれば一軒家が入るようになるんじゃないだろうか。知らんけど。


 シャルエスに騎乗しているときは【馬落斬まらくざん】も使える。同じハルバード使いということもあって闇騎士の技を覚えるのは簡単だった。


破荒突はすさずき】は溜めた後の一撃必殺が気持ち良いので近頃は多用している。『鬼武者の軽鎧』シリーズの揃え効果で「溜め時間40%減」が付いたので今後更に使うことになるだろう。


【統率】スキルは自然に覚えた。リーダーに必要なスキルだろう。若干指示が通りやすくなって、1%ほどの軽微なステータス上昇バフがパーティメンバーに掛かる。


【性技】と【絶倫】に関しては詩織のお陰だろう……。他人に鑑定されたらちょっと恥ずかしいが。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る