第51話 毒になれよう

 翌日はちゃんと朝6時に起床。オンオフのメリハリを付けないとね。アヤさんの進化が完了するまでは地下22階でレベル上げだ。


 宮殿の宝箱2つから『エリクサー』が出た。HP、MP、状態異常を全部一度に回復する。理想的にはパーティメンバー全員に1つずつ渡しておきたい。回復役がやられるとパーティ全体の崩壊につかがるので1つは詩織に渡しておく。


「この階層には他にオークが出る場所はないのですか?」

 午前中の狩りを終え、オークの洞窟で昼食を取っている時に詩織がモンタロスに尋ねた。


 最初はモンタロスに怯えていた詩織だが、一緒に戦っている内に苦手意識もだいぶなくなったようだ。モンタロスも最初はレベルの低い詩織をあからさまに見下していたが、戦力になるようになってからは態度が軟化している。


「森の西にオークの拠点がある……余はあまり気が進まんな」

「どうしてです?」

「毒矢を放ってくるのだ」


 モンタロスは毒耐性がない。詩織も同様だ。レベル上げばかりに注力してきたが、今後のことを考えると耐性上げもしておいたほうが良いだろう。


「今日は午前中にクローム・アリゲーターが出てだいぶマカも稼げたことだし、午後は毒沼に行って毒耐性をあげよう」

 俺はそう切り出した。


 詩織のレベルはレベル28になり俺のレベルも31に上がった。モンタロスが得るマカの半分が俺に流れてくるのが地味に大きい。


「毒耐性上げ……なんだそれは?」

 モンタロスが不思議そうな顔をして尋ねる。 


「毒沼に身体を浸して、わざと毒に侵されるんだよ。死なないように回復魔法を掛けながらね」

「そんなことが可能なのか? 持って生まれた得手不得手を無理やり変えるというのは不自然な気がするが……」

「あからさまな弱点属性があると今後の攻略が難しい。森の西のオークは毒耐性を上げてから攻略する」


【眷属召喚】のレベル制限も緩和されたので、ミノタウロス・メイジ(LV28)の代わりミノタウロス・コマンダー(LV29)が【眷属召喚】で呼び寄せられた。


 かなり大幅な戦力アップだ。【眷属召喚】で呼び出された「名無し」はステータスやスキルが固定で成長することができないので、同じ眷属をずっと呼び出している理由はない。


 30分ごとにやってくる鎧カニアーマードクラブは基本的に俺とコマンダーだけで対応し、モンタロスと詩織はひたすら毒耐性を上げた。毒耐性上げのトレーニングは回復魔法も同時に鍛えられるので一石二鳥だ。


 食後の4時間ほど毒耐性上げのトレーニングをしたのだが、詩織はLV3まで上がったのにモンタロスはLV2にしかならなかった。適性の差があるようだ。俺の毒耐性はLV4に上がった。


 詩織の回復魔法はすでに俺やアヤさんを超えている。これならば少々毒矢を受けても大丈だろう。


「今日は『オークの睾丸』が1つしかドロップしませんでした。明日はオークを中心に狩りましょう! 3つぐらいいっぺんに食べてみたい!」

 寝室で2人きりになると、詩織が切実に訴えた。


「あんまり食べ過ぎるとオーバードースするかもしれないぞ。中毒の危険性もある」

 そうは言ったが、ハマっているのは俺も同じだ。今後はオークのいない階層を探索することもあるだろうから少しストックがほしい。


 その日の夜も俺たちは躰を重ねた。俺としては「いちゃらぶ系」のプレイをしてみたいのだが、彼女はいわゆる「どМ」のようでその手のプレイを求めてくる。

 ベッドの上での乱れ方は凄まじく、清楚系のルックスとのギャップに興奮してしまう。


 間抜けなアヘ顔で失神しているところを写真に撮ろうかと思ったが、流石にそれは自重した。それは紳士のすることではあるまい。

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