第49話 進化のコクーン
「ふぅ……。もう昼か。いくらなんでもちょっと羽目を外しすぎたな」
俺たちは手早くシャワーを浴びて、部屋の外に出た。するとタキシードを着たミノタウロスが待ち構えていた。ミノタウロス・バトラー……執事か。
「国王陛下とアヤさん様は早朝から狩りへと出かけております」
執事はうやうやしく頭を下げて言った。
もう昼だもんね。こりゃパーティーリーダー失格と言われても文句は言えない。ダンジョンを攻略しているパーティは他にもいるのだから、ダラダラやっていたら先頭グループから置いていかれてしまう。反省せねば……。
しかし狩りということは宮殿の外に出ているのだろうが、距離が離れてもパーティから抜けたりすることは無いんだね。
<同じダンジョンにいる限り、別行動を取っているメンバーがパーティから抜けることはありません。ただし、本人がパーティからの脱退を強く望んだ場合や、パーティーリーダーの権限により追放された場合は別です>
ソフィアが説明する。
もうちょっと真面目にやらないとアヤさんに見捨てられてしまうかもしれない。ソフィアが地図機能を使って、アヤさんとモンタロスの位置を示す。
すでに狩りを終え、宮殿の近くまでまで戻っているようだ。アヤさんは進化に必要なマカをすでに獲得しており、更に俺と詩織にもマカが分配されいた。詩織に至ってはいつの間にかレベルアップしている。
俺たちは慌てて宮殿の入口まで出向いて彼らを出迎えた。
「ようオヤカタサマ、お楽しみはもういいのかい?」
モンタロスはそう言ってニヤリと笑い、『オークの睾丸』を手渡してきた。
「オークの洞窟でドロップしたぞ。
ちょっと恥ずかしいが否定できない。コクリと頷いて受け取る。
「許可を取らずに勝手に出撃して悪かったな。事後承諾ってことにしてもらえるとありがたい」
「ああ、もちろん問題ない。助かったよ」
「ついでに宝箱も開けてきた」
そう言ってモンタロスはスクロールを渡してきた。【弱体魔法】つまりデバフのスクロールだ。
「お前も【弱体魔法】は持ってないだろう。取っておいてくれ」
「いや。これはその女……詩織が持っていたほうが良いだろう」
確かに。パーティ全体の構成を考えれば、【回復魔法】と【補助魔法】を中心に育成している詩織が持つ方が理にかなっている。
「アヤさんもそれでいい?」
「にゃー」
「じゃ、これは詩織が使ってくれ」
俺は詩織にスクロールを手渡す。
「よろしいんですか?」
3人がうなずくと詩織は「モンタロスさま、ありがとうございます」と言ってスクロールを使用した。
「ところで……彼は?」
アヤさんとモンタロスの他にミノタウロスが1体いることに気づいて、俺は尋ねた。
「ミノタウロス・メイジだ。今朝から【眷属召喚】が使えるようになったから狩りに同行させた」
眷属召喚? と俺が疑問に思うと同時にソフィアが説明する。
<お屋形さまがお楽しみの最中に【召喚】スキルが+2になり、【眷属召喚】が可能になりました。被召喚者が君主の場合、その配下をパーティに加えることができます。【召喚】スキルが上がるたびに【眷属召喚】で呼び出せる個体が増えます>
現時点では1人だが、スキルレベルが上がるたびに1、2、4、8と倍増していくという。これは強力な能力だな。制限もあって、被召喚者(モンタロス)よりもレベルが低い個体しか【眷属召喚】できない。現時点ではモンタロスのレベルが29に制限されているので、レベル28までの個体しか【眷属召喚】で呼び出せないということか。
「にゃーおん!」
アヤさんが「さっさと進化させろ」と言っている。モンタロスの進言に従ってホールの隠し部屋で進化を行うことにした。
ソフィアによると<個体差があるが進化にはだいたい3日前後が必要で、その間アヤさんは身動きが取れない>とのことだ。ホールにはミノタウロス・ジェネラル以下の軍勢が待機しているので、確かにあの場所ならば安全だろう。
俺がマジック・ポーチから『進化の種』を取り出すと、アヤさんは躊躇せずにパクリと食べる。すると彼女の身体が半透明の輝く球体に包まれた。
<この球体は『進化のコクーン』です。すべての属性に対する強い防御力を有しています>
ソフィアによるとレベル50以下の存在が傷をつけることはまず不可能だという。付きっきりで守る必要はないだろう。進化中にもマカは分配されるようだし、アヤさんの進化が完了するまでに少しでもレベルを上げておくとしよう。
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