第47話 オークの睾丸
結局この日は、ワニの群れとオークの洞窟の往復を7回繰り返したところで俺のレベルが遂に30となる。
途中にいる単体のはぐれワニ5体を倒すと、1時間ちょっとで往復できるのでリスポーンのタイミングと重なって無駄がない。単調な作業になるので飽きるが、今は効率が最優先だ。
額の紋章の変化はこれまでと違っっていて、9個ある四角形のうちの真ん中のものが丸になった。
■■■
■●■
■■■
洞窟の宝箱からは『妖精のストッキング』というレアクラスの足装備が出てきたので、詩織に装備してもらった。最大HPが固定値で200上がる。現時点の詩織のステータスを考えると特定倍率でHPが増える装備よりも有用だ。
レベルが30になると『天魔のハルバード』を以前よりも少し上手に使いこなせるようになった。
天魔のハルバード(※能力を発揮するために必要な要件を満たしていません)
種類 武具
クラス 神器
属性 物理、雷
物理攻撃力 2505/16700(835上昇)
魔法攻撃力 2235/14900(745上昇)
固有戦技 【雷束撃】(【天魔断罪】)
アビリティ 各種ステータス9/60%向上(3%上昇)
その他 【自動装備】
同時にモンタロスのレベル制限も29になったので大幅な戦力増だ。
詩織のレベルは24になった。俗に言うパワーレベリングというやつだ。純粋にダンジョン攻略をゲーム感覚で楽しみたいのならばあまりやりたくない行為だが、実際に死ぬことがある現実なのだから
地下22階の人工太陽はすでに昏くなりつつあったし、腹も減ってきた。
今日中にアヤさんの進化準備を整えたいのでもう一周しようとしたところ、モンタロスに止められた。
この階層は夜に強い敵が現れることがある。闇騎士――通常の迷宮型階層には出現しないが、フィールド型階層に夜限定で現れる。かなりの強敵だという。
レアドロップがあるかもしれないのでいつかは戦いたいが急ぐ必要はない。アヤさんの進化が完了して、詩織がレベル29になってからでいいだろう。
今日はオークの洞窟でマスター・クラスの中盾もドロップしたので、詩織の盾もアップグレードしている。それほどリスクはないと見て、狼たちを倒してから砦経由で宮殿にもどることにした。
なんだかんだと言って30頭ほどの集団なので舐めてかかりすぎると危険だ。仲間を呼ぶ前に小グループごとに撃破していったが、残り10頭ほどになったところで、仲間を呼ばれて乱戦になってしまった。こうなるとどうしても多少はダメージを受けてしまう。
とはいえ、ダメージを受けないと耐性が伸びないので、あまり詩織を過保護にしすぎると強敵と出会った時にかえって危険だ。彼女の側で立ち回りながらも、必要に応じて前に出た。
砦のミノタウロス達に見送られて、宮殿に戻ってきたときはすでに日が落ちていた。モンタロスに案内されて食堂へと
「せっかくなので今日の狩りでドロップした肉を食べたいです! 自分が参加した戦いのドロップ品の肉を食べてみたかったんです」
詩織が言った。
あの階層で出会う前もダークボアの肉などはドロップしたようだが、隊長が食すのを許可しなかったそうだ。
「えっと、じゃあワニ肉でいい?」
「オークの肉が良いです。それにあの……大きい干しレーズンみたいなのも落ちましたよね。ちょっと味見してみたいです」
「あれは『オークの睾丸』だよ。本当に食べるの?」
詩織はなにも言わずにコクリと頷いたので、俺はゴクリと喉を鳴らした。さすがに媚薬を密かに食べさせるなんて真似はしたくないので、オークの肉と睾丸の効果はすでに説明してある。
食堂のキッチンにはミノタウロスのシェフがいたので彼にオークの肉を大量に渡した。『オークの睾丸』についてはそのままスナック感覚で食べられると聞くと、詩織はさっそく一口サイズにちぎって口に入れる。
「あ、すごく美味しいです。とても甘い!」
そう言うと詩織はぱくぱくと食べだして、あっという間にペアの片側を完食してしまう。
「お屋形さまも食べてください……」
すでに効いているのか、詩織の顔は紅潮している。
「あ、ああ」
詩織に促されて俺も一口食べてみた。確かに美味しい。癖になるジャンクフード系の味だ。
手が止まらなくなってしまい俺もあっという間に残りを完食してしまった。先に食べていた詩織の様子はあきらかにおかしい。内股になってもじもじしている。顔は上気して酔っ払ったように真っ赤だ。
俺のほうでもすぐに効果が出た。完全にスイッチが入ってしまいあのこと以外なにも考えられなくなっている。
俺と詩織はガツガツと大急ぎでオーク肉を食べた。ご飯は食べないでオーク肉だけだ。これから何が起こるのかふたりとも予感していた。
「お前たちはこの部屋を使うが良い。魔導具のシャワーもついている。余とアヤさんは奥の部屋で休もう。大きな声を出しても聞こえないから安心しろ」
食事が終わるとモンタロスが宮殿の客間に案内して言った。
「ニャーオン!?」
アヤさんが不満げな声を上げる。
「不満ならばお前も獣人に進化して伽をすればよかろう。今日のところはあの2人に楽しませてやれ」
アヤさんは不承不承、モンタロスの後に付いていく。
モンタロスはちらりと振り返ると、ニヤリと笑って親指を立てた。
俺はその素振りに気づかないふりをしつつ、心のなかで深々と頭を下げた。
いやー持つべきものはミノタウロスの召喚亜人だね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます