第38話 階段とエレベーター

 ラクスティーケ像の前にいつの間にか大きなレバー出現していた。恐らくモンタロスを倒したタイミングあたりで出現していたのだろうが、いろいろと立て込んでいたので気が付かなかった。


 レバーをぐいっと手前に引くと「ゴゴゴ」という低い音が響き、ラクスティーケ像が上に持ち上がり下り階段が現れる。

 階段を下りると廊下があり、その先の部屋に淡く輝く円形の台座が置かれていた。おそらくエレベーターだろう。その横には鍵がかかった扉があり、モンタロスを倒した時に入手した鍵を使うと開いた。


 扉の奥には下に降りる階段があったのでそのまま下りていくと『B23F』と書かれた扉が現れる。休憩室だ。ようやくいままでいた階層が地下22階だということがわかった。


 地下23階の探索は後回しにして、エレベーターをチェックしてみることにする。

 台座の上に乗り真ん中にある直径50cmほどの円形の突起を踏むとゆっくりと台座が上昇し始めた。台座の直径は5mぐらいあるが、アヤさんがこの調子で大きくなり続けたら乗れなくなるかもしれない。


 エレベーターが徐々に加速していく間に、すでにお馴染みになりつつあるあのアップデートの感覚がやってきた。


 最近アップデート頻度が上がっている。気がついていないだけで寝ている間にもあるのかもしれない。俺以外にもダンジョンに踏み入る人間が増えていて、それに合わせた対応をしていると考えるべきだろう。


 エレベーターのスピードが徐々に遅くなり、下の階と似たような構造の部屋についた。てっきり地下一階へのショートカットを開通したのかと思っていたが、見覚えのない部屋だ。

 四方を壁で囲まれているが、そのうちの一面に魔法陣が描かれた御札が貼ってある。引き剥がしてみると、壁が崩れ落ちて通路が現れた。恐らく逆側から見ると隠し扉になっているのだろう。

 アップデートを重ねている内に閉じ込め防止策も進化したようだ。


 さてここは何階だろうと思いながら、エレベーター室を出る。通路は真っすぐ伸びていて、奥には下に降りる階段がある。その手前の左側に部屋の出入り口があり、そこから光が漏れていた。


 ソフィアは敵の魔力を感知していないようだが、一応用心しながら中に入るとそこは見覚えがある部屋だった。

 部屋の中には豪華な宝箱が置かれており、その先には黄金色に光り輝く廊下がある。渡ろうとして落下してしまった「幻想床の廊下」だ。


「なるほど。だから地下7階には下に降りる階段がなかったのか」


 ここを渡らなければ地下8階には行けないのだから、なにか手段があるはずだ。

 俺は土魔法を使って砂を廊下の床一面に撒いてみた。ほとんどの砂はそのまま落下していくが、廊下に残る砂もある。その残った砂はクランクのような形をしていた。こちら側から渡るには、右端を通って進み中央付近で逆側にわたり左端を通る必要がある。


「初見でこれに気づくのはかなり難しいな」

 これからもたくさんの人が落ちるのだろう。しかし、ここはダンジョンだ。危険があるのは仕方がない。


 向こう岸に渡る前に先に豪華な宝箱を開けると、中から出てきたのは『進化の実』だった。

 確定ドロップなのか、それともラクスティーケと会った直後で『運』が倍増しているおかげなのかはわからない。何れにせよ、後はマカを獲得するだけでアヤさんの進化が可能になる。

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