第37話 召喚しちゃうぞ☆
この部屋には宝箱がない。あれだけ苦労して倒したのだから、せめてレリック装備をドロップしてほしいものだが……。そう思って、ミノキンがいた場所を見やると鍵とスクロールが落ちていた。
『召喚魔法:ミノタウロス・キング』
うおっ、あいつを召喚できるのか? ちょっと性格に難があるけど、めちゃくちゃ強くね?
「召喚契約を結びたいのであれば、良い名前を余に名前をつけよ」
ミノタウロスの声が思念となってスクロールから流れ込んでくる。そう言えば名前がないの気にしてたな。
「じゃ、『ミノキン』で」
「嫌だ。『ミノキン』って単にミノタウロス・キングを略しただけだろ、そんな安直な名前は絶対に嫌だ」
うーん。俺の中ではもう「ミノキン」で定着してるんだけどな。
「ミノ太郎」
「嫌だ」
「ミノ助」
「嫌だ」
「ミノッチ」
「嫌だ」
「美濃守」
「嫌だ」
「ミノキシジル」
「嫌だ」
「我儘なやつだな……。よし。じゃぁ『ミノさん』にしよう。『さん』づけしてるんだから文句はないだろ?」
「嫌だね! もっとこう……ラテン語とかサンスクリット語とかを使った格調高い名前を付けろよ!」
「そんな教養ねぇよ!」
Wi-Fiにつながればネットで調べてそれっぽい名前をつけられるかもしれないが、自分の頭の中にある知識だけで付けられる名前なんてせいぜいこんなものだ。
ソフィアに相談してみたが<名付けの権限は与えられていません>と言われてしまった。権限なんているのか?
「……モンタロス」
「ん、今までのとはちょっと違うな『ミノ』で始まらないし。どういう意味だ?」
「とある伝説的な司会者に由来する名前だ」
「司会者とは?」
「進行を司る者……と言ったところかな」
「うーむ」
「これも嫌だっていうんだったら、お前と召喚契約を結ぶのは諦めるわ。このスクロールは燃やして先に進むよ」
「待て! 早まるな! うん。よくよく考えてみれば悪くないかもしれんな。『モンタロス』でいいだろう」
ようやく交渉が終わるとスクロールが消え、光の粒子が俺の中に入ってくる。
<さっそく召喚するように『モンタロス』が要求しています。なお、召喚には最大HPとMPの半分が要求されるので、回復する必要があります>
ソフィアの声が聞こえる。スクロールのときは直接念話できたのに、中にはいったら喋らないのか?
いや、あいつに頭の中で騒がれたら敵わないのでソフィア経由でコミュニケーションしたほうが良いだろう。ソフィアの声は落ち着く。1/fってやつ?
俺は言われた通りにポーションを使用して回復した。ボス部屋前の光る球に行けばポーションを消費しなくて済んだ、というのは飲んでから気づいた。
「いでよモンタロス!」
眼前に光の粒子が集まり、片膝を付いたモンタロスが出現する。
「余はミノタウロス王モンタロス。今後ともよろしく……」
そのセリフなんか懐かしいんですけど……てか、小さくなってない?
<召喚者以上のレベルの存在は召喚できないため、お屋形さまより1つ低いレベル28の状態で召喚されています>
なるほど。つまり俺のレベルが上がればレベル44の第2形態で呼び出せるようになるのか。
<名持ちの存在は元のレベルを超えて成長することが可能です>
敵を倒したときは、召喚されているモンタロスにもマカが分配されるらしい。ただし、そのうちの半分は召喚主である俺に分配される。
たとえば、これから3名で狩りをして300マカが入ったとすると、まずは一人あたり100マカずつ分配され、モンタロスの取り分の100マカから俺が50マカを受け取る。つまり、俺が150マカ、アヤさんが100マカ、モンタロスが50マカといったように分配されるようだ。
モンタロスについはそれでいいが、ちょっとアヤさんに悪い気がするな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます