第33話 勝ちは勝ち
ミノタウロス・キング(以下ミノキン)が出現し始めると俺はすかさず毒矢を3連射した。最初の2本は半透明な身体を素通りしたが、最後の1本が当たる。的が大きいので当てるのは簡単だ。
「卑怯者め。騎士ならば正々堂々一騎打ちで勝負せんか!」
出現と同時に攻撃を受けてミノキンが怒りの形相で叫ぶ。やはりキングともなると喋るのか。
ミノキンのヘイトを買った俺は『鉄鋲の大盾』に持ち替えて【
「エンハンス・ストレンクス」
ミノキンの背後に廻り込んでジャンプしたアヤさんにバフを掛けてから俺はHPを回復する。
「ぐぁ!?」
ミノキンの弱点である背中にアヤさんが炎エンチャした【
だが、ミノキンは背後からの攻撃を無視して、アヤさんに【
「させるかよ!」
『天魔のハルバード』に持ち替えて、【
アヤさんが自分を回復するのを見届けてから、俺は【雷束撃】を放ったまま少しずつ近づき、【五月雨突き】を二連続で放った。同時にアヤさんが炎エンチャした【
「
ミノキンがそう叫んだ瞬間、衝撃波に襲われて俺たちは10m以上後方に吹き飛ばされた。ダメージはそれほど大きくない。敵を自分から引き離すための技のようだ。
「森羅万象にあまねくおわす
ミノキンが片膝をついて回復魔法を詠唱すると、HPが全回復する。
「ふん。少しは楽しめそうだな」
ミノキンはそう言うと【閃光列刃】を連射してくる。あれを避け続けるのは骨が折れる。
「アヤさん、長期戦で行くぞ」
俺はそう言って、ラクスティーケの像の方に走り出す。
毒による継続ダメージが入り続けているというのに、奴は解毒しなかった。恐らく「できなかった」のではないだろうか? 俺はジグザグに動きながら像の裏側に走り込んだ。背中をかすっただけでHPが100ほど削られるので生きた心地がしない。
像と壁の間の幅は1mちょっとと言ったところだ。狭すぎて奴は入ってこれない。
「つくづく姑息なやつだなお前は!」
そう叫びながらミノキンは【閃光列刃】を連射してきたが、ラクスティーケの像の周りには魔法の結界が張られていて、こちらまで届かない。同様にこちらからの魔法攻撃も結界の外には効果を及ぼさないが、この状況ではこちらに有利に働く。
ミノキンは像ごとこちらを両断する構えで『ミノタウロス王の大剣』を振るうが、アダマンタイト製の像に跳ね返されている。
業を煮やしたミノキンは無理な体勢になって縦にした大剣を突き入れてこようとしたので、毒矢をヤツの顔面に叩き込んだ。像にさえ当たらなければ物理攻撃は有効だ。
横からの攻撃を諦めたミノキンが正面に廻ると像の股下越しに弓矢で攻撃し、ミノキンが距離を取ると打って出て、アヤさんが【挑発】する。
ミノキンはHPが半分程度になると例によって【フルヒール】を使ってHPを全回復するが、毒状態のままなので徐々に体力は減っていく。
そのような攻防を続けていくうちに、ミノキンはМPを消費していった。形勢の不利を悟った彼は盾を構えたまま、じりじりと像から離れていく。
ふたたび打って出て今度は【ファイヤーボール】を使って攻撃する。ミノキンが【閃光列刃】を連発して応戦してくると、俺たちは回避と防御に専念した。
敵のМPが無くなるのを確認すると、俺は毒矢をもう1本当てて、像の裏の安全地帯に退避した。マジックポーションを持っていなければこれで決まりだろう。
「こ、こんな馬鹿げた戦いがあるはずが……」
ミノキンは涙を浮かべながら地団駄踏んで悔しがり、やがて力尽きた。
「勝ちは勝ちだ……」
大きくため息を突いて俺は呟いた。
これも頭脳戦の一種ですよ。
ええ。全然恥ずかしくなんてありません。
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