第34話 反則的第2形態

 さてと、なにかドロップしないかな。レリック3つも持ってたよね? と思ってミノタウロス・キングの骸を眺めていると魔法陣がふたたび現れて、遺体が光に包まれる。

 次の瞬間、ミノキンは復活していた。より大きくなっていて、角も立派になっている。


ミノタウロス・キング(第2形態)

種族  ハイ・ミノタウロス

レベル 44

HP  4500/9100(+2100)

MP  1500/3000

膂力  7700(+2200)

体力  7300(+1200)

知力  2600

素早さ 1400

器用さ 1200

直感  2000

運   6400(+3200)

※下二桁切り捨て


 ステータスが反則的に瀑上がりしている。HPとМPが半減しているのがせめてもの救いだが、第二形態が登場すると同時に2体の部下も同時に召喚されていた。


ミノタウロス・ロイヤルガード

種族  ハイ・ミノタウロス

レベル 31

HP  2250/2250(+450)

MP  890/890

膂力  1090(+180)

体力  2150(+430)

知力  800

素早さ 680

器用さ 860(+140)

直感  790

運   700

※下一桁切り捨て

戦技  【閃光刃】【シールドバッシュ】

スキル 【鉄壁】【自爆】

魔法  【氷】【光】

耐性  【麻痺】【石化】【水】【氷】【土】

※+4以上のみ表示


【分析】

攻撃手段  近接武器、魔法

弱点部位  背中、足首

弱点属性 【毒】【火】

特記事項  防御特化。王の命令に応じて自爆攻撃をする。


 ふたりとも『ミノタウロスの盾』を装備しており、その効果により『HP』と『体力』が上昇している。ひとりはエピックの片手剣で、もうひとりは槍だ。槍の場合、戦技は【閃光弾せんこうだん】になる。


「騎士ならば正々堂々一騎打ちで勝負するんじゃなかったのか?」

「前半戦は2対1で後半戦は3対2なのだからおあいこだ」


 そう言うと、ミノタウロス・キングは片膝を床についた。

「アヤさん、まずは槍をやるぞ!」

 回復魔法の詠唱中は攻撃のチャンスなのだが、召喚された2体に邪魔されるのは火を見るよりも明らか。

 ミノタウロス・ロイヤルガードの身長は3mほどなので、安全地帯にいても攻撃を受けてしまいそうだ。このまま3対2になれば勝ち目はない。


 アヤさんが【咆哮】してロイヤルガードたちの動きを止め、続いて俺が【雷束撃らいそくげき】を放つと同時にアヤさんは飛びかかって、火属性の【乱撃爪らんげきそう】の連撃を加える。俺もすかさず飛び出してロイヤルガード(槍)に【五月雨突き】を放つ。


 ロイヤルガード(剣)がアヤさんに斬りかかるが、アヤさんは無視して【乱撃爪】を打ち続ける。彼女の肉が裂け、HPが300以上減る。だが攻撃を止めない。

 アヤさんを治療したいのはやまやまだが、いまコイツを倒しきらないとふたりとも死んでしまう。


 ロイヤルガード(槍)が倒れると同時に、HPを回復したキングが【閃光列刃せんこうれっぱ】を放ってきた。瞬時に『鉄鋲てつびょうの大盾』に持ち替えて受けるが、ミノキンのステータスが上がっているため先程よりもずっと痛い。盾越しでもHPが300削られる。


「安全地帯に逃げるぞ!」


 ロイヤルガード(剣)が天使像の裏側まで入ってきても1対1ならばまだなんとかなる。リーチが長く女神像の股の下越しの攻撃も届く槍のほうがやりにくいから先に倒したのだ。


 防御と速度向上のバフを掛けながら左右に分かれて天使像の裏に駆ける。背中に【閃光刃せんこうば】を受けて冷や汗が流れたが、ミノキンではなくロイヤルガード(剣)が放ったものだったようで、致命傷にはならなかった。


 俺たちはラクスティーケ像の裏側に2人同時に入ることができた。アヤさんのほうがずっとスピードが速いのだが、俺がたどり着くまで、ミノキンを引き付けておいてくれたのだ。素早さがあがったミノキンの攻撃を躱し続けるのは難しかったようでかなり被弾している。


「オールヒール!」


 全体回復魔法を掛けると同時にマジック・ポーション(効果中)をポーチから取り出そうとしたが、ロイヤルガード(剣)が盾を捨て、天使像の裏の安全地帯に巨体を半身にして入ってくる。

 МP残量に余裕がないが、コイツさえ倒せばこちらの勝ちだ。第2形態のミノキンは格段にパワーアップしているが、ここには入ってこれない。


 俺は身をかがめ、ロイヤルガード(剣)に【キャプティブ・ボルト】を放つ。

 攻撃力よりも敵の身体を痺れさせることに重点を置いた魔法だ。半身になりながら突きを放とうとしていた、ロイヤルガード(剣)が固まる。


 動かない的になった敵にアヤさんが【ファイヤーボール】を連続で叩き込む。一撃あたりのダメージは【フレイムランス】のほうが上だが、МP消費量とトータルダメージを考えるとこちらのほうがコスパが良い。さすがアヤさんはわかってる。


 ファイヤーボールを十発以上連続で放つとアヤさんのМPが底をついた。俺のМPも尽きかけている。

 俺は【キャプティブ・ボルト】を継続したまま、ポーチから毒矢を取り出し、敵の身体に突き刺した。弓ではなく手で握ったままだ。

 敵のHPはまだ200以上残っているが、回復魔法を持っていない。後は盾で防ぎ続ければ継続ダメージで落ちるだろう。


「親衛隊員よ。お主の身を捧げるときがきたようだ」

 手を出すことができず、静観するしかなかったミノキンが口を開く。

「御意。国王陛下万歳! 大ミノタウロス王国――」


『叡智のグラスの』の【分析】が警告を放つ。ロイヤルガード(剣)は【自爆】スキルを使うつもりだ。

 俺はとっさに女神像の股の下に飛び込んだ。アヤさんはすでに後方に跳んでいる。

 次の瞬間俺のヒザ下が吹き飛ぶ。


「早くマックス・ポーションを!」

 マジックポーチからマックス・ポーションを取り出そうと仰向けになると、眼前に大剣の切っ先が見えた。

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