第19話 ワニ

 毒沼を抜けると低木が茂る湿地帯になった。ところどころに沼があって地面も湿っているが、毒性はあまり強くないようだ。


「ザザッ」

 不意に音がしたので俺は逆方向に飛び退く。すると草むらからワニが出てきた。キラー・アリゲーター。体長は5mほどあり、レベルは24。


 ぱっと見はかなりヤバそうな敵だったが、2対1で戦えたこともあって苦労はしなかった。噛みつき攻撃は強烈だが、冷静に動きを見ていればまず食らわない。

 雷の耐性もあまりななかった。が、湿地帯ということもあって自分が放った雷撃で自分自身もすこし感電してしまった。


 ドロップ品はワニ肉と皮。ワニ肉は美味しいという噂を聞いたことがあるので、ちょっと楽しみだ。


 その後5回ほど遭遇したが、コイツは腹が弱点だということがわかると苦労しなくなった。土魔法の【ストーンランス】を地面から出して腹を刺し、動きを止めたところを二人がかりでフルボッコというパターンで楽に勝利できるようになった。


 湿地帯を抜けると森が広がっていた。上空の人工太陽は外の世界と連動しているのか徐々に昏くなっていく。これまでの階層では昼夜という概念がなかったのでちょっと新鮮だが、正直言ってそろそろ休みたいのでどうにかして安全地帯を見つけたい。


 森の中をしばらく彷徨うと道があった。道と言ってももちろん舗装などされていないが、木々の間を闇雲に進むよりはだいぶ通りやすい。

 道沿いに北に進んでいくと東側にすこし小高くなった丘が見えてくる。双眼鏡で丘の様子を確認すると洞穴があり、槍と大盾をもった人型の魔物2体が入り口を守っていた。


「オークだ!」

 上層階ではゴブリンばかりだったが、やっと出てきたか。RPGやエッチな同人誌で定番のモンスターだ。俺たちは音を立てないようにして彼らの死角からゆっくりと近づいた。


 洞穴の入り口を守っているのはレベル22のオークガードだった。恐らく中にはたくさんのオークがいるのだろう。すべてのオークを同時に相手にしたらかなり厳しいだろうが、洞穴の大きさから言って一度に大勢で襲ってくることはできない。

 攻略が難しそうだったら逃げるのも簡単だ。


 俺はオークの後ろに土魔法で壁を作った。驚いたオークガードが何事かと振り返る。馬鹿め、注意すべきは前だ。

 アヤさんが飛び出して正面から【咆哮】と火炎ブレスを同時に放ち、オークたちが固まったまま焦げる。

 そこに俺が真横から【雷束撃らいそくげき】を放つ。クリティカルで入り、一体が溶けた。


 硬直が解けてオークガードが動き出そうとした瞬間に、雷属性を付与したアヤさんの【乱撃爪らんげきそう】が連打で入り、オークガードはふたたび硬直する。そこを狙って『天魔のハルバード』を振るって、俺はオークガードを斬り捨てた。


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