第20話 オークの洞窟

 洞窟の入口を守っていたオークガードを倒すと、異変に気づいたオークたちがやってくる。彼らは数人がかりで土魔法の壁を半壊させていた。レベル20のオークソルジャーが8体ほど目視できたが、壁を乗り越えているのは2体だ。

 

 俺は【ストーンランス】を洞穴の壁から繰り出して、壁の後方にいるオークソルジャー達を攻撃した。これは通路を通りづらくして大人数が一気に出てこれないようにする意味もある。


 同時にアヤさんが【咆哮】を放って敵を硬直させ、俺は【ファイアフィールド】を使って動きが止まった敵の足元を焼く。

 料理で使うときは威力を抑えているが、本気で出せばなかなかの威力だ。


 オーク達は通りづらくなった通路にいるために引くことも進むこともできなくなっている。壁の奥にいた6体のオークソルジャーは進退窮まって、なにもできないままに溶け去った。


 その間に前に出てきたオークソルジャー2体はアヤさんが始末している。

 打って出るつもりだたオークたちだが、この場所で戦い続ける不利を察知したらしい。こちらを睨んだままじりじりと奥に下がっていく。


 自分で作った土魔法は簡単に消せるので、俺たちは通路を片付けて先に進んだ。

 レベル25のオークオフィサーがこの群れの隊長のようだ。

 オークガード2体と一緒に奥へと後退りしている。


 そこに奥から杖を持ったオークプリーストが駆けつけてきた。回復魔法や補助魔法を使ってくる可能性がある。こいつに合流されると面倒だ。……ん、そういえば補助魔法って俺たちも持ってたよね。入手直後に罠にはまって奈落の底におとされたので、すっかり使うのを忘れていた。


「エンハンス・ストレンクス!」

 膂力向上の補助魔法を使うと力が向上する。アヤさんも気がついたようで自分にバフを掛けている。


 オークプリーストは優先して倒したい。いまだに使っていなかった弓矢を試してみるには絶好のシチュエーションだ。


 俺は矢を三連射した。2本は外したが、1本が運良くプリーストの顔面に当たりのけぞっている。続いて俺は狙いをよくつけて、なるべく威力が高い一撃を狙って矢を放った。その瞬間、スキル【強弓ごうきゅう】を獲得したことを直感的に理解する。やはりそこそこ強い敵を相手に実戦で使用すると覚えが早いようだ。


【強弓】がもろにヘッドショットになってオークプリーストの膝が折れる。レベルの割に脆い。もはや虫の息だ。知力全振りタイプなのかもしれない。


 プリーストにとどめを刺そうと俺が弓を構えると、オークガードが盾を掲げて矢の軌道に飛び出してきた。しかしその所為で陣形は乱れている。アヤさんがすかさず【咆哮】付きの『火炎ブレス』を吐き出し、プリーストの防御に回ったオークガードを横から攻撃する。


「矢もエンチャできるかも?」

 アヤさんの攻撃を見ていたらそんな考えが浮かんだので、試してみる。硬直して動かない的になっているオークガードの顔面に、火属性を付与した矢を至近距離で叩き込むとオークガードは倒れた。


 奥の方から更に2体のオークがこちらに向かって走ってくるのが見える。弓を持っているようだ。プリーストも満身創痍ながら立ち上がろうとしていた。


 ふたたび火属性の【強弓】でプリーストにとどめをさすと、俺は弓矢を一旦ポーチにしまった。


 そのタイミングでアヤさんが風魔法の大技【トルネード】を放つ。オークガードとオークオフィサーが上方向に吹き飛ばされて天井に頭を打ち付け、こちらに向かって飛来していた矢も暴風に巻き込まれて飛散する。


 矢?

 そういえば弓使いのオークがいたよね。こちらに向かって矢を放っているのに全然気が付かなかった。さすがアヤさんや。


 体制を崩して地面に落下したオーク・ガードを【絶牙】で仕留めると、アヤさんは奥に突進してオークアーチャーに攻撃を加える。弓兵達はアヤさんのスピードにまったくついていけないようなので任せておいて良いだろう。


 起き上がろうとしている敵のリーダーに【雷束撃】を加えて硬直させてから、【五月雨突き】を二連発して、俺は隊長にとどめを刺した。同時にアヤさんもオークの弓兵2体を始末する。長距離攻撃は厄介だが接近戦には弱い。これで全16体撃破。


 オーク・プリーストは杖を落としていて、これは消費MP軽減や魔法威力微増の効果があるようだ。なかなか使えるかもしれない。肉もドロップした。二足歩行でそこそこ知能も高そうだが豚扱いのようだ……。まぁ、食べられるのならばそれでいいか。


 レベル的にはこちらの方が上とはいえ、敵16体を2人で始末できたのだから、なかなか上手に立ち回れたと言って良いだろう。レベルも大事だが、戦術も大事だ。

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