第18話 毒と耐性
周りを囲んでいる液体に手を浸してみたが、やはり猛毒だった。速攻で引き抜いて状態異常回復魔法をかける。
ハルバードの柄を浸してみると水深は50cmほどだろうか。歩けないことはないが、毒にやられながら移動するのはかなり厳しい。
マジックポーチから双眼鏡とコンパスを取り出して周りを確認してみる。東西方向はずっと毒沼が続いており、遠く彼方にダンジョンの壁のようなものが見える。
ダンジョンの中だということを忘れるほどに壁は異常に高い。天井は高さ100メートルぐらいあって、人工太陽のような照明があたりを照らしている。脳がバグる光景だ。
南北方向には陸地があり、南のほうがちょっと遠い。500メートルと言ったところか。南側の陸地には天井まで垂直に伸びる塔らしき建造物が見える。北側の陸地までは400メートルほどだが、ここよりも一回り小さい孤島が途中にあるので一息つけそうだ。北に行く方が楽だろう。
「どっちにするかな~。北のほうが楽そうだけど南にある塔も気になるな。てか、それ以前に対岸に辿り着く前に死にそうだよね?」
顎に手を当てながら物思いにふけっていると、アヤさんが毒沼の中に降り立っている。
「な、何やってるの!?」
アヤさんは毒に浸りながら回復魔法を掛け続けて1分ほど耐えた後、陸に上がって状態異常回復魔法を掛けた。そして俺の方に歩いてきて「にゃーぉん」と鳴く。どうやらマジック・ポーションをよこせと言っているらしい。
猫用容器にマジック・ポーション(小)を1本入れると、もっと入れろと言ってくるので10本ほど空になるまで入れる。
するとアヤさんはマジック・ポーションを飲んでMPを回復させ、ふたたび毒沼の中に入っていった。そして同じ手順を繰り返すと今度は少しだけ長く耐えた――なるほど耐性をつけているのか。
俺も真似をすることにした。かなり辛い。途中で意識が飛びそうになるが、意識を失ったら死んでしまいそうなのでなんとか我慢する。2回ほど繰り返したところでアヤさんが鳴く。
「ニャニャッ(お前はやらなくていい)」
え、どういうこと? よくわからないが、アヤさんの意図を尊重することにする。残りのマジック・ポーション(小)を更に10本ほど猫用容器に入れ、俺はたまにやってくる
5分ほど耐えられるようになるとアヤさんは満足したような表情で方箱座りをして鳴いた。
「にゃー(乗れ)」
なるほど。アヤさんに乗れば俺はほとんど毒によるダメージを受けないから、アヤさんの回復に専念できる。それに彼女はHP自動回復付きの『獣王の首輪』を装着しているから、俺よりも耐えられる時間が長いだろう。
俺はアヤさんの上にまたがって回復ポーションと毒消しポーションを用意する。ポーションでは不十分な場合は回復魔法を使おう。マジック・ポーションはあまり残っていないが、その他のポーションはまだ在庫が豊富だ。
準備が完了すると、アヤさんはやおら立ち上がって北側に向かって駆け出した。中継地点の小さな陸地に向かって全力疾走する。途中で俺たちに気づいた鎧カニたちが水の中から出現するが、無視して進んだ。
「ヒール!」
ポーションふりかけ(以下リピート)。
ポーションを4本ほど消費した頃にアヤさんは陸地に飛び乗った。すぐに毒消しポーションをふりかける。
するとまるで俺たちを待ち構えていたかのように、鎧カニ3匹が元気よく毒沼から飛び出してこちら側に向かってくる。この小島はちょっと小さすぎて戦いに向かない。
「アヤさん、逃げよう!」
俺がふたたびアヤさんに飛び乗ると、彼女は華麗なフットワークで鎧カニの攻撃を躱してふたたび毒沼に飛び込んだ。
「ヒール!」
ポーションふりかけ(以下リピート)。
陸に到着するとアヤさんは倒れ込んだ。すぐに解毒してポーションを振りかける。すると俺たちの後を追って鎧カニが2匹追いかけてくるのが見える。
このまま進んだ先に他の魔物が待ち受けていて、挟み撃ちにされる可能性もある。面倒くさいが、こいつらを倒してからひと息ついたほうがいいだろう。
鎧カニとの戦いもわかってきた。二匹ぐらいならどうにかなる。
土魔法で壁を作り、奴らの進路を決定づける。マジックポーション(中)を飲んでから、壁の切れ際で待ち構えて【五月雨突き】を二連続で叩き込んだ。
もう一方の壁では同様の戦法でアヤさんがもう一匹を倒す。カニカマと甲羅(素材)がドロップしたので、まぁ良しとしよう。
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