第4話 「ライトノベル宣言」堅洲名興文庫相談役が言う紙媒体がない件(現時点)

 それでは、ここにきてやっとの本題です。

 この作品をカクヨムに上げようと思うきっかけとなった言葉です。


 私は角川方面にあまり明るくないというか、フォーチュンクエストとかを、あき時間に図書室へ行って読んでいただけのある種「ニワカ」でもあります。

 漫画を制限されていた関係で無造作に借りてきた、洋書翻訳日本作家問わずの児童書や自分で買った漫画、書籍は許可されてたのかな? 多分あれだけ所有していたので、お小遣いだけではなく買ってもらっていたのだと思うのですが――コバルト文庫や講談社の文庫などを読み漁っていて。

 なので正直なところ詳しくありませんでした。


 ただ、本格ファンタジー云々でSNSがけんけんがくがくしている時に、角川文庫の有名な文言を用いた出版社・名興文庫のコラムが出て、私なりに調べてもみたのです。

 それがこの作品二話目ですね。


 調べていた時に当然、その派生の話としてライトノベル宣言にも触れている方がいらっしゃったので、そのような宣言があることもその時知りました。


『ライトノベル宣言』

 二〇二〇年八月プレオープン、十一月に開館した、マンガ・ラノベ図書館にある宣言です。

 こう書くと不思議なことに気づきます。


 二〇二〇年のものが、何でロードスの頃にあるの? と。

 さてそのあたりを、彼の言葉と、私がSNSにて広く募集させていただき知り得た情報とを突合して、紐解いていけたらなと思っています。

 まずは、言説の引用から。

 全て一度にまとめます。

 


 引用はじめ――――――


 堅洲さんのおっしゃってるライトノベル宣言は、

 電撃文庫創刊に際して

 のことですか?

 堅洲 斗支夜/Toshiya Kadas 

 堅洲 斗支夜/Toshiya Kadas 

 0

 おそらくその時のだと思いますね。


 引用おわり――――――堅洲斗支夜SNS内質問箱にて ※下記URL

 https://peing.net/ja/q/c7df53fa-ca9b-4164-99f5-dbca0fbcfbe0



 引用はじめ――――――


 堅洲さんの言うライトノベル宣言はこれですか?

 以下引用

 多様化した対象に応え、歴史に耐えうる作品を収録するのはもちろん、新しい世紀を迎えるにあたって、既成の枠をこえる新鮮で強烈なアイ・オープナーたりたい。

 その特異さ故に、この存在は、かつて文庫がはじめて出版世界に登場したときと、同じ戸惑いを読書人に与えるかもしれない。

 しかし、〈Changing Time,Changing Publishing〉時代は変わって

 堅洲 斗支夜/Toshiya Kadas 

 堅洲 斗支夜/Toshiya Kadas 

 0

 んん? これだったかな? ロードス島戦記に言及しながら展開していく文体だったはずですよ。


 引用おわり――――――堅洲斗支夜SNS内質問箱にて ※下記URL

 https://peing.net/ja/q/baeffd6a-e2ba-47b4-b949-8415c8078378



 引用はじめ――――――


 ロードスに言及…これですか?

 以下引用

 ライトノベルの起源はイギリスの“円卓の騎士”や『指輪物語』から影響を受け、RPGリプレイから生れた『ロードス島戦記』だ。 座を囲んだプレイヤーの数だけ豊かな物語を紡ぐことのできるゲームから水野良は小説『ロードス島戦記』を誕生させた。

 角川文庫の一隅を占めたA6版のしゅっぱんぶつは

 堅洲 斗支夜/Toshiya Kadas 

 堅洲 斗支夜/Toshiya Kadas 

 0

 そうそう、この文言が含まれていましたね。


 引用おわり――――――堅洲斗支夜SNS内質問箱にて ※下記URL

 https://peing.net/ja/q/286d68f2-49a5-4d7f-9656-ea505a1e8c34


 上記は9月6日



 引用はじめ――――――


 堅洲 斗支夜/Toshiya Kadas@名興文庫相談役/総帥


 @kadas_blue

『ライトノベル宣言』って、もともとネットが普及する前に出たものですよ?

 それが焼き直されて某施設に貼り出されているわけです。


 私が言ってるものは当時のものですね。あれで西洋世界風で剣と魔法のファンタジーがほぼラノベ一色になってしまいました。

 午前11:02 · 2023年9月6日



 堅洲 斗支夜/Toshiya Kadas@名興文庫相談役/総帥


 @kadas_blue

 三分の二はほぼ原文だと思います。


 界隈で騒いでいるのはその歴史的な事実を知らない人たちですね。

 午前11:08 · 2023年9月6日



 堅洲 斗支夜/Toshiya Kadas@名興文庫相談役/総帥


 @kadas_blue

 昔なので正確な日時は覚えておりませんが、ロードス島戦記が大ヒットしたころで(もしかしたら電撃文庫の創刊に際しての事だったかもしれませんが)、これの焼き直しがカドカワのミュージアムに貼りだされていますよ。


 当時苦言を呈した先生方もやはりいたようですね。

 午前7:43 · 2023年9月7日



 堅洲 斗支夜/Toshiya Kadas@名興文庫相談役/総帥


 @kadas_blue

 バーンと掲示されていますが、初出の年月を伝えていただければと思います。


 確か当時の書籍の巻末か、一部の雑誌にも掲載されていた気がするんですよね。

 午前8:41 · 2023年9月7日


 引用おわり――――――堅洲斗支夜SNS(旧Twitter)より



 この言説から、彼のみた文章が『ロードス島戦記に文章内で言及し二〇二〇年のライトノベル宣言と三分の二ほど一緒である』ことがわかるかと思います。


 ねーよ!


 と、ライトノベルの成り立ちにお詳しい方ならもしくは断言できる場合もあるかもしれません。

 が、私は門外漢。

 全くもってそれがあるのかないのかがわからない。


 というわけでこうして調べることにしたのでした。



 電撃文庫については、アイ・オープナーという文言が印象的なその本文自体を彼が否定したことから除外が簡単でした。

 角川文庫発刊に際しても彼がコラムで引用するくらい思い入れがあるもの、と共に、角川文庫ファンにとっては宝物のようで、ウェブのあちらこちらに思い出として上がっており、また角川のHPにも記載があったので除外することができました。



 残るはスニーカー文庫だけです。

 私はSNSにいらっしゃる博識の諸兄諸姉に呼びかけをし、お力添えを得ました。

 やはりライトノベルは諸年代に刺さってきただけあり、続々情報集まり、ほぼほぼスニーカー文庫巻末も「角川文庫発刊に際して」であることがわかりました。

 Twitterにて、スニーカー文庫巻末は春樹で電撃文庫の巻末は暦彦だった、という言もありましたが、どうやら発行者名が、ということのようです。

 参考資料:

 スニーカー文庫巻末

 https://twitter.com/MdSawaTivevel/status/1700043079804481836

 https://twitter.com/cherry_hou/status/1700157631585714236/

 https://twitter.com/hir_CF/status/1700459683604250841

 https://twitter.com/MdSawaTivevel/status/1700505377157317101


 ちなみに一次資料をTwitterにあげている方々が結構いらっしゃり、またまとめのサイトを見つけましたので、URLを記載させていただきます。

 参考資料:https://togetter.com/li/2221459?page=2#h27_0



 残るは雑誌、野生時代とザ・スニーカーとコンプティークですが……現時点で非常に可能性は低い、と私は考えています。

 なぜなのか。

 それは、文章の性質です。

 ライトノベル宣言も電撃文庫発刊に際しても、角川文庫発刊に際して、ですらも全ては何かの始まりを告げる文です。


 小説野生時代は休刊のち二〇〇三年に再開しているそうですが、再開時にそういった文章が載るでしょうか?

 また、ウィキペディア情報によると、載っている情報や雑誌の方向性がライトノベルではなさそうです。

 なら、他の雑誌は?

 可能性としてだけならあります。

 ただ、情報をいただいたコンプティーク一九八六年九月号に初めてロードス島戦記が載った分については、愛読していた方によるとリプレイだったそうで。

 小説版のロードストはちょっというか大分毛色が違ったようです。

 内容も、ゲームの性質の方が色濃かったとの情報をいただきました。

 ということはこれも可能性を限りなく確実に除外できると考えて良いと思います。



 残るは、ザ・スニーカーの一九九三年四月創刊号、ということですが……なんらかの宣言をそこでしたというのなら、発刊した文庫巻末にも載せるのでは?

 ということもあり、可能性がとても薄くなってしまいました。

 まだ情報は募集中です。

 あった、ない、雑誌持ってる! 等々ありましたらご一報いただけたら助かります。


 そして取り急ぎ、文庫の巻末について今現在調べた限りの結果論。


『電撃文庫とライトノベル宣言のテレコ覚え』


 この論を私は今調べた限りの結論とさせていただこうと思います。



 ▽追記


 ネットを掘り掘りしていたら、Twitterにて興味深いページを上げてらっしゃる方を見つけました。

 コンプティーク元編集者へのインタビュー記事です。

 その中に、以下の文言を見つけたので引用させていただきます。


 引用はじめ――――――


 ――:これがその後00年代にラノベ、なろうなどネット文化で開花していくかと思うのですが、この90年代初頭あたりはどこが覇権を握っていたのでしょうか?

 もう、富士見ファンタジア文庫(1988~「ドラゴンマガジン」を母体としたレーベル。『スレイヤーズ』もここから生まれた)と角川スニーカー文庫(1989~)の二強でしたね。『ロードス島』を出したあと5年くらい、先ほども言いましたが、ちょっと驚きなんですけど中1から高2までの小説部門でずっと人気1位が『ロードス島』なんですよ。あらゆる小説のなかで、ですよ!そのくらい当時ラノベを浸透させるために、『ロードス島』が貢献したものは大きかった。

 最近活躍しているアニメ業界の方々でもよく言及いただくんですよ。それこそ「竜とそばかすの姫」の細田守監督もロードス島のファンだったり。


 ――:偏見などはなかったのでしょうか?実は個人的にはちょっと恥ずかしくて親に隠しながら読んでいた部分もあって。なんか親も、え、ゲーム?小説?という感じでした。

 これが一体どういう本なのか、この人気は何なのか?どう評価していいかわからなかった、というのが正直なところだと思います。ラノベという言葉が出てくるのはそこから10年以上もたってからですからね。ただ書店は売れてるものが一番ですからね。どんどん仕入れてくれました。


 引用おわり――――――【連載】中山淳雄の「推しもオタクもグローバル」第64回 演じるかのごとき出版展開-寺山修司から薫陶を受けた『ロードス島戦記』の編集者 より

 https://gamebiz.jp/news/369962


 やはり、ロードス島戦記が人気爆発の頃に「商業的に浸透したライトノベル」という文言はなかったようです。

 そして発売して割合すぐあたりにはもう既に人気作だった、ということは、もしもなんらかの宣言があるとしてもその頃でしょうか。

 何はともあれ。

 証言も紙媒体の証拠物品や画像、そういったものが何もない以上は、テレコの可能性を私は推しておこうと思っています。



 ▽追記:2024年4月22日


 ライトノベル宣言について、角川武蔵野ミュージアムにあるマンガ・ラノベ図書館へ行き、調査してくださった方がいらっしゃいました。

 引用を忘れていたので、以下引用します。


 引用おわり――――――


 そして、ライトノベル宣言についてですが。


 社内端末で調査していただきましたが、総帥の仰る三十年前のものは記録になかったとのこと。


 ミュージアムに掲示されている宣言については、このミュージアムが完成した際に書き起こされたオリジナルであり、何かを引用したものではないだろうとの回答でした。


 もっとも、当然のことながら、角川歴彦氏本人にお話をうかがえたわけでもありませんので、真実はわかりません。


 ただ、職員さんが言うには、三十年前のロードス島戦記刊行時、ライトノベルという言葉が公言されていたとは考えにくいらしい。


 カテゴライズも当時は曖昧で、別の呼び方もあったとか。


 引用おわり――――――駿河防人@タキオン・ソード(連載再開)@tachyonsword

 https://twitter.com/tachyonsword/status/1703284378582081909


 また、これを誤読したのか認識が変わって発言が変容していたので引用します。


 引用はじめ――――――


【答えはこちら】


 春なので変な人が騒いでますが、『ラノベ宣言』またはこれに準じたようなソースなんですが、残念ながら資料が散逸してて辿れないというのが公式な見解であり、某博物館の文書の初出年も良く分からないのだとか。


 真実なんて『証拠は?』とか簡単にやれるものではないって事ね。


 引用おわり――――――堅洲 斗支夜/Toshiya Kadas@名興文庫相談役/総帥@kadas_blue

 https://twitter.com/kadas_blue/status/1764617842480255114


 職員さんが言った話の内容と、当事者でないことから断言できず中立的な懸念を発した報告者の方の内容とが、混じってしまっています。


 職員さんが言ったのは【社内端末で調査していただきましたが、総帥の仰る三十年前のものは記録になかった】という話であって。

 「資料があったが散逸した」ではありません。


 職員さんが言ったのは【このミュージアムが完成した際に書き起こされたオリジナルであり、何かを引用したものではないだろう】という話であって。

 「某博物館の文書の初出年も良く分からない」ではありません。


 三十年前の「事実」を知りたいのなら、事前アポを取りミュージアムへの取材や角川春樹氏への取材も可能でしょう。

 それによって、もしもまた「別の事実が出てくるならば」ライトノベルファンは「その情報もまた喜ぶ」でしょう。


 実際に足を運んだ方の言葉を捻じ曲げるのならば、普段からの言説も捻じ曲げたものと受け取られかねません。

 言葉を扱う者として、各々気をつけたほうがいいな、という感想を抱きました。


 ライトノベル宣言につきましては、ハルヒの表紙(雑誌の)にライトノベル宣言!と書かれたものがあった、等情報が上がっているのも見ました。

 諸兄諸姉におかれましては『ロードス島戦記に文章内で言及し二〇二〇年のライトノベル宣言と三分の二ほど一緒である』文書にお心当たりありましたら、お気軽にお声がけいただけたらと思います。


 角川春樹氏へのインタビューするぜ!って猛者も募集中です☆



 ――――――――――――――――――

 他 参考資料:

 雑誌 ザ・スニーカー

 https://societyforlightnovel.wordpress.com/2012/02/02/ラノベ史探訪(5)-ラノベ専門誌の始まりを見て/

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