最終話 一生、あなたを愛し続けると約束します
フィガー王国から戻ったレツァード達は、戻るなり自室へ籠って一切の面会を拒んでいた。
「あらあらレツァードったら。ふふっ、戻ってきたなら挨拶くらいしたらいいのに。ねぇ、あなた」
「仕方ないだろう? 目を覚ましたと同時に聖女様がいないと暴れられて、この城はどうなってしまうのだろうと肝を冷やしたぞ」
崩壊しボロボロになった医務室を見ながら、サライはニコニコと温かく見守っていた。
あんなにテルズニアに属するように長年口説き続けたというのに、最愛の女性の為ならとあっさり了承して。ずっと可愛がっていた身としては少し妬いてしまうが、それ以上に楽しみだった。
「ねぇ、あなた。私達の孫はいつ見れるのかしらねぇ?」
「気が早いぞ? 義母のプレッシャーほど怖いものはない……子ができなかったお前が一番痛感してるだろう?」
「あら、私は楽しみで言ってるんですよ? 前王妃と同じにしないでくださいます?」
黙って聞いていたテルズニア王は、苦笑を溢しながらレツァード達の苦悩を案じて口を閉じた。
一方、部屋に篭ったと同時にベッドで抱擁を続けていたマルティカ達は、何も話すことなく、ずっと抱き合っていた。
互いの肌で存在を感じながら、強く。
「———マルティカ様、肝心な時にそばに入れなくてスイマセン。ずっと側でお守りしますと言っておきながら、情けないです」
「謝らないで下さい。それを言ったら私こそ、レツァード様が大変な時に側にいれず、申し訳なかったです」
互いに顔を合わせながら謝罪し、そしてゆっくりと距離を縮めて唇を重ね合った。この瞬間をどれだけ待ち望んでいたことか。
舌を絡め、咥内に忍ばせ舐め回し、息が乱れるまで求め合った。
「そういや、俺……さっきは一つ嘘をつきました」
「嘘……?」
「マルティカ様と婚約済って。ずっとお守りするとは言ったけど、きちんと約束してなかったと思って」
嘘と言われて身構えたが、そんなことかと肩の力が抜けた。いや、彼はちゃんと伝えてくれていた。親代わりにお世話になったサライ王妃の前でも、勿論マルティカの前でも、いつだって誠実に言葉にしてくれていた。
「嘘なんかじゃないですよ。でも私が躊躇ってて……返事が遅くなってすいませんでした」
今はクリスティーヌがフィガー王国を守ると約束してくれた。自分がいなくても問題ないと安心した今なら、躊躇うことなく伝えられる。
「レツァード様さえよければ、ぜひ」
「待って下さい。どうせなら……ちゃんと言わせてもらえませんか?」
ベッドから降りたレツァードが手にしたのは、様々な宝石が施された豪華なクリスタル基盤のケース。耳まで真っ赤にした彼が跪いて、マルティカの手を取った。
「俺……いや、私はこれから先、一生あなたを守り続けます。あなたがずっと幸せだと笑っていられるように、あなたの隣で共に笑い合えるように。なので私に、マルティカ様の一番近くで生きていく権利を……私と結婚して頂けませんか?」
真っ直ぐに見つめる目に心を射抜かれる。
不思議だ、彼と一緒にいると好きがどんどん大きくなる。切なくて胸が痛い。
「マルティカ様?」
「もちろんです……こんなに幸せな時間を過ごせるなんて、きっと少し前の自分じゃ、想像できませんでした」
きっとレツァードに出逢えなければ、ボロボロの身体で死んだように生きていただろう。虐げられるのが当たり前、命を削って尽くすのが当たり前、愛されなくても、それが当たり前。
きっと愛を知ることなく生きていただろう。
「一生、こうして手を取り合って生きていきましょう。愛しています、レツァード様」
「俺もです、愛してます」
キラキラと煌めく四角形のケースから取り出したのは、外装に負けないほど輝いたダイヤの指輪だった。
レツァードはマルティカの手をとって左の薬指にダイヤの指輪を嵌め、微笑んだ。
「右手のは、今度一緒に選びましょう」
こうして不遇な立場で戦ってきた可哀想な聖女は、一途な兵士に助けられ、幸せに暮らしました。
ずっと、ずっと……永遠に。
HAPPY END....★
魔物討伐最前線で戦わされる不遇の聖女、強面兵士に守られることになりました 中村 青 @nakamu-1224
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます