第36話

ーー36ーーーーーーーーーーーーーーーー


「ケイコ

あのね」


 ボク自身が、理解出来てないけど一応話だけはしておかないとな。


「どうしたの ??」


 不思議そうな、顔をするケイコ。


「対戦相手の 悪役令嬢なんだけどナコちゃんかも知れないんだ」


 ありのままを、伝えるボク。


「えっ

なにを言ってるの ??」


 おどろいた、顔をするケイコ。


「うん 本当にそうなのか わからないんだ」


 はっきり、断言出来ないボク。


「わかったわ

戦ってみたら わかるかも」


 ウインクするケイコ。

 こっちに来て、雰囲気が変わったな。


「うん そうだよね」


『続きまして

悪役令嬢とケモミミ魔物娘との対戦だーッ』


 審判兼司会者が、声をかける。


「頑張ってね」


 そう、ボクが声をかけると、


「うん

頑張って倒しちゃうかもよ」


 いたずらっ子みたいに、笑うケイコ。


「うん………」


 ちょっと、複雑な感情。


「誰が誰を倒すって ??」


 悪役令嬢が、悪態をつく。


「ナコちゃん」


 ガラが、めちゃくちゃ悪くなってる。


「今ちんは腹の虫の居どころが悪いちあ

ぶちのめすぞ」


 鬼だ。


「うわ」


 ビックリして、固まるボク。


「南湖さん どうしちゃったの」


 ケイコが、聞くが、


「うーるーさーいー」


 話し合いは、したくないみたい。


「魔王様

今は 悪役令嬢として振る舞って下さいませ」


 ノクターンが、小声で進言するが、


「わかってるわ めんどい」


 聞く耳を、持たない悪役令嬢の魔王。


『これより試合を始めます

悪役令嬢とケモミミ2名舞台上へ !!』


 審判兼司会者の男が、そう言うと、


「1発で殺してあげるわ

感謝しなさい」


 気持ち悪い、笑顔を見せる悪役令嬢。


「南湖さん

本当に南湖さんなの ??」


 戦いの前に、確認したいケイコ。


「ちんに勝てば 教えちゃる

まぁ 無理ぢゃろうがな」


 腰に、手を置き高笑いする悪役令嬢。


『さあ それぞれ構えて

レディーゴーッ』


 審判兼司会者が、合図を送る。


ドドーン


「くらえーッ」


 魔王は、右手を突き出しケイコに向ける。


「ふぅッッッ」


 両腕を、構えつつ顔をガードする。

 が、


「ん ??」


 なにも、おきなかった。


「ぉお? 出んぞ」


 右手を、めちゃくちゃにぶん回す魔王。


「なんですかぁ ??」


 腕の、スキ間から恐る恐る覗くケイコ。


「なんでもないわ

そりやーーッ」


 右手が、ダメなら左手を突き出す魔王。


「………??」


 しかし、なにも起きない。


「ちょっと 待ってよ」


 あきらかに、焦りを見せる魔王。


「待ってるよさっきから」


 しびれを、きらすケイコ。


「えーっと

なんだ? MP不足か? 詠唱がいるのか?」


 小声で、自問自答する魔王。


「なに ぶつぶつ言ってるの ??」


 完全に、ノーガードになるケイコ。


「よし これなら

ファイヤッ」


 初歩的な、魔法を出そうとする。


ボッ


 ピンポン玉ほどの火球が、ゆらゆらケイコに飛んでいく。


「キャア」


 油断していたので、避けきれずしっぽの先が焦げる。


「うわ ちっさ」


 逆に、ショックを受ける魔王。


「やったわね」


 しっぽを、フーフーするケイコ。


「ちっくしょおおおお !!」


 泣き叫ぶ魔王。


「なによいきなり」


「チョロ火のくせに連発もダメかよ」


「なにこれ勝てそう」


数分後


「はぁぁはぁぁ

ちんが負けるわけがなかろう」


 肩で、息をする魔王。


『ケモミミがギブアップ

勝者 悪役令嬢 !!』


ワーーーーー


「ケイコ! 大丈夫か !!」


 倒れたケイコに、駆け寄るボク。

 座って、抱える。


「………なんとかね」


 グッタリしているが、なんとか意識はある。


「そっか

いくらナコちゃんでも ゆるさないぞ !!」


 悪役令嬢を、睨め付けるボク。


「うるさい」


 悪役令嬢も、ようやく立っている。


「魔王様 こちらへ

ヒーリングいたします」


 舞台の、端で悪役令嬢を呼ぶノクターン。


「あぁ

情けないな あんな小娘にこんな」


 ヨロつきながら、ノクターンのそばに行く悪役令嬢。


『その前に

ケモミミから 何を奪いますか ??』


 審判兼司会者に、聞かれるが、


「後にしてくれ」


 頭だけ、振り返り答える悪役令嬢。


『はい わかりました』


 ケンイチロウと、悪役令嬢はボロボロになりつつも順調に勝ち上がり………


『グレゴリウス戦闘不能

勝者 悪役令嬢』


ワーーー


「ハァァァハァァァァハァァァァ」


 四つん這いで、荒い呼吸をする悪役令嬢。


『グレゴリウスから なにを奪いますか ??』


 審判兼司会者が、声をかけるが、


「あの 弓矢を奪い破壊したいがさわれないからいらない !!」


 死闘を、繰り広げた。


「グレゴリウスさん

しっかり !!」


 駆け寄るが、全身ボロボロだ。


「あぁ 大丈夫だ

動かせないから骨が折れちまってるみたいだ」


 体の、あちこちが骨折してしまったグレゴリウス。


「ミネルアーが ヒーリングしてくれるからすぐ良くなるよ」


 アルパカの方を見ると、ウンウンと頭を動かす。


『さあ 決勝戦です

この戦いの勝者は 魔王を討伐するリーダーとしてあの国へ赴いてもらいます !!』


 審判兼司会者の男が、そう言うと、


「ちんが その魔王だ」


 ノクターンに、回復魔法をかけてもらいつつ悪態をつく悪役令嬢。


「いけませんぞ

ケンイチロウから ジュレルを奪うまで名乗りをあげては」


 クギを、さすノクターン。


「わーってる

必ず 奪取してやるぞ」


 闘志が、みなぎる悪役令嬢。


『さあ 舞台上の中央へ』


 審判兼司会者が、呼び掛ける。


「それで ナコちゃんなの? 違うの? どっちなの ??」


 ボクは、そこにしか興味ないよ。


「そいつは 首をはねられ死んだ !!」


 半笑いで、そう言う悪役令嬢。


「え゛!!!!」


 死んだ!?。

 ウソだろォ。


「ちんがや───」


『両者構え

レディーゴーッ !!』


「いでよ

ファイヤーレッドドラゴンベクトラ!!」


 審判兼司会者が、開始の合図を出すと同時にベクトラを呼び出すボク。


「ちょ

いきなり」


 意表を、突かれた悪役令嬢。


「悪役令嬢を焼き尽くして粉々にしろ !!」


「グワーーッ」


 悪役令嬢が、ガードする前に炎を吹き出すベクトラ。


「ひぃ」


ぐちょちょちょ


「ギャアー」


 全身が、火だるまになりながらまだ立っている悪役令嬢。


「これで とどめだ

サンダーーーッ」


ピッッ

ズドーーーーーン

グァァアアアアア


「ギャハ」


 散り散りに、爆散する悪役令嬢。


「魔王さまぁーーーー」


 悲鳴のような、大声を出すノクターン。


「えっ

あいつが 倒す相手の魔王だったの ??」


 あっけに、とられるボク。


「おのれぇ」


 ボクに、向かって来るノクターン。


『そいつを 誰か捕まえろ』


 ノクターンを、制するよう指示する審判兼司会者。


「はいっ」


 近衛兵が、ノクターンを取り押さえる。


「ぐぬぬ

回復で MPを消費していなければここのヤツら皆殺し出来たものを」


 くやしがるノクターン。


「なんか 魔王に勝ったっぽいよ」


『魔王戦闘不能

勝者 転生者ケンイチロウ!!』


ワーーーーー


「ありがとう みんな」


 仲間に、お礼を言うボク。


「お礼を 言いたいのはワタシたちよ

ケンイチロウ」


 ミテオナーは、目に涙をうかべて言う。


「よーし

このまま魔王の国を倒してあの地を奪還するぞ!

イテテ」


 グレゴリウスが、寝たまま折れた右手を突き上げる。


「グレゴリウスは しばらく安静が必要ね」


 アルパカに、つっこまれるグレゴリウス。


「アハハ」


おわり

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異世界に行ったら巨大な魔王の国家の となりの つぶれない店みたいな 小国を守ることになったけど ワンチャン大国も つぶせそうな雰囲気だからやってみた(異世界リーダーの成り上がり) なばば☆ @bananabanana1E

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