第32話

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「ハァァァーア゛」


 タカが、ものすごいスピードで飛んで来るのをかわして念を込めるように右手の指をグッと曲げて胸の前に持っていき、腰と右腕を下げて構えるヒーラー。

 ツルを成長させて伸ばし、タカを捕らえようとする。


「ピィ」


 ギリギリで、かわしてクチから毒針を連発するタカ。


「クッ」


 ツルを、瞬間的に編み込んで盾にして毒針から身を守るヒーラー。


「案外 判断が速いね」


 舌を、巻くハトシ。


「フッ

あんたに褒められても ちっともうれしくないけどね」


 毒を、吐くヒーラー。

 左手を、巧みに使って、


「ああそうかぃ

クァッ」


 もう1本のツルが、ハトシの足を捕らえてバランスを崩して倒れる。


「イッテーなぁー

来いッ」


「ガウグル」


 いきなり、大きな狼があらわれハトシの足に絡まったツルを噛み切ろうとする。


「ちょっと 何匹出て来るのよ !!」


その頃


「なんかさぁ

以前 どこかであなたと会ったような気がするんだよね

どこで顔を見たのか 思い出せないんだけどなぁ」


 ミテオナーが、記憶をたどってみていると、


「気のせいですわ

はじめましてですから」


 間髪いれずに、そう言うベリルモート。


「うーん」


 腕組みして、考えこむミテオナー。


「それでは ごきげんよう」


 スカートを、つまんで作り笑いしてそそくさと立ち去るベリルモート。


「ごきげんよう………

やっぱり どこかで会っているわ」


その頃


「対戦相手のジョーカーは どこに行ったんだ ??」


 鑑定士が、試合会場を探すが見当たらないので森の近くまで行ってみると、


「こんなところに泉があるじゃねぇか」


 清らかな、水を湛えた池がある。


「少し 水浴びするか」


 事情があり、他人の目にふれるのを避けている鑑定士。

 服を脱ぎ、サラシを取ると豊かな胸があらわになると同時にドクロのような刺青が入っており、それも隠したいようだ。


「マーブルの野郎

次に会った時は 覚えてろよ」


 そう言いながら、水面まで肩を浸す鑑定士。

 体は、本人のかつての姿からかけ離れている。


「これは イイ水だな

泉の中央からこんこんと湧いている」


 ふと、背後に気配を感じる鑑定士。

 素早く、振り返って臨戦態勢をとる。


「おっ

お前はっ」


 そこには、憎きマーブルの姿。


「あたちの体

まだ無事のようね~」


 全裸の、元自分の体をまじまじとよく確認しているマーブル。


「マーブル

貴様 なんの用だ」


 マーブルを、睨め付ける鑑定士。


「あれぇ~ あたちと次に会ったらなんとか言ってなかったっけ~」


 見下すような、視線を鑑定士に向けるマーブル。


「卑怯だぞ

丸腰の時に来るなんて !!」


 怒りに、握りしめた拳を震わせる鑑定士。


「はぁ~? こういう時じゃあないとまともに話し合いにならないでしょ~」


 武器を、持っていないところを狙っていたマーブル。


「お前と話すことなんてない !!」


 水を、マーブルの顔面にひっかける鑑定士。


「まぁ そう言わずに聞けぇ~」


 舌を、伸ばして水を舐めとるマーブル。


「むぅ」


 眉間に、シワをよせる鑑定士。


「ケンイチロウという少年がトーナメントに残っているよな~」


 いきなり、ケンイチロウの話をはじめるマーブル。


「ああ

ライデンのジュレルを持つ少年か………

それがどうした ??」


 話の、脈絡が読めない鑑定士。


「一緒に あいつからジュレルを奪わないか ??」


 ニヤァと、笑うマーブル。


「なんだと」


 気の、抜けた声が出る鑑定士。


「お主

元領主を言葉巧みにだまして ジュレルを奪わせようとしていただろう~」


 前の試合で、対戦相手をハメたと突きつけるマーブル。


「えっ」


 ギョッとした、表情になる鑑定士。


「しらばっくれなくてもイイんだ

全部 見ておったのでな~」


 右手の、人差し指で頬をぷにぷにするマーブル。


「チッ」


 一番、見られたくない者に見られてしまったと後悔する鑑定士。


「あたちの体を使って イイように言いくるめたな~」


 おっぱいを、揉むマーブル。


「うるさい

お前だけで ケンイチロウに余裕で勝てるだろ」


 もっともな、つっこみをいれる鑑定士。


「………」


 一瞬だけ、ムッとした表情になるマーブル。


「それともなにか? 自分の手を汚したくないのか ??」


 探りを、入れるように言う鑑定士だが、


「そんなことではないわ~」


 すぐ、否定するマーブル。


「じゃあ なんだ ??」


 さらに、追及する鑑定士。


「その~ あの~」


「ハッキリと言え !!」


 答えを、迫る鑑定士。


「ビリビリ」


 うつむいて、小声でボソッと言うマーブル。


「はぁ ??」


 腰に、手を置く鑑定士。


「ビリビリが ニガテなのぉ~」


 脚を、内股にして声を絞り出すマーブル。


「へ? まさか電撃が弱点とは………」


 全く、予想外で目が点になる鑑定士。


「誰だって ニガテなものの1つぐらいあるでしょ~

お主だって アルパカに負けて外見をアルパカにされただろう~」


 元々、アルパカに負けて人間の姿を奪われてしまった鑑定士。

 その後、双子の妹から姿を奪ってさらにマーブルに負け奪われた。


「それを言うな !!」


 変な、汗が出る鑑定士。

 外見は、コロコロ変わったとはいえ鑑定士のスキルを奪われなかったのは不幸中の幸いと言えるかも知れない。

 見た目は、悪魔になったが。


「ハハ~

どうだ やるか ??」


 威勢の、良さを取り戻すマーブル。


「いや トーナメントで戦って勝つ」


 かたくなに、さそいを断る鑑定士。


「お前の次の対戦相手のジョーカーは強いぞ

気付かれないように援護射撃してやろうか~」


 具体的に、支援策を言うマーブル。


「いや 結構だ」


 断固拒否する鑑定士。


「まぁ そう言うなよ~」


 鑑定士の、肩に抱き付くマーブル。


「それに ビリビリがニガテと言っていた

がそれだけじゃあないよな ??」


 マーブルに、まだ隠し事があるなと見抜く鑑定士。


「ギク~

なっなんのことかな~」


その頃


「今度こそ 捕まえて焼き鳥にしてやる」


 タカの、体当たりを何発か受けて服がボロボロのヒーラーの女。


「さぁ 出来るかなぁ」


 また、タカに体当たりされ胸があらわになる。


「くぅーーー」


 左手で、乳首を隠すヒーラー。


「ハハハ

もうギブアップして谷に落ちたらどうだ?」


 不適な笑みを、うかべて余裕を見せるハトシ。


「そんなことするわけがないでしょ !!」


 顔には、闘志がみなぎっているヒーラー。

 ツルを、縦横無尽に動かしてタカを捕らえようとするも、


「かかったな

今だっ !!」


 ハトシの合図で、飛び回るタカが1点を突くと追って来たツルが絡まってヒーラーが張り付けになってしまう。

 自由に、飛行していたようで計算されていたんだね。


「ぐぁっ !!」


 今度は、ツルを伸ばせば伸ばすほどヒーラーの首が締まっていく。


「さあ 苦しめ」


 ツルの、先端が伸びないと見るやクチバシでそれをつまみ、飛び去るように羽ばたくタカ。


「くかかッッ」


 白目で、泡をふくヒーラー。


『おっと

1回目の気絶です』


 審判兼司会者の男が、ヒーラーの女の頬にふれる。


「やったぜ」


 跳ねて、喜ぶハトシだが、


『大会規定により

1回目は カウント無しで起こします』


 気絶の、1回目はノーカウントだと言う審判兼司会者の男。


「おいおい

勝負ついたろ」


 これ以上、戦う意味がないと文句を言うハトシ。


『いえ

1回目は 強制的に起こして続きをやってもらいます』


 冷酷に、そう告げる審判兼司会者の男。


「どんだけだよ

まぁイイや早くしてくれ」


 肩を、すくめて悪態をつくハトシだが内心冷や汗の出る思いにかられる。


『では』


 無理やり、回復薬をヒーラーのクチに流し込む審判兼司会者の男。


「ゲホッゲホッ」


 むせながら、意識を取り戻すヒーラー。

 状況が、飲み込めていないようでキョロキョロとあたりを見回す。


「あーあ

知らねぇぞー」

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