第30話

ーー30ーーーーーーーーーーーーーーーー


「おい

洞窟の奥から すごい音がしてないか?」


 破裂音が、洞窟内に響きわたっている。


「ケンイチロウが あぶないかも知れない」


 いまだに、大玉モンスターもケンイチロウも姿が見えない。


「まだ あの大玉モンスターは 見つからないの ??」


 あせる、ミテオナー。


「ちょっ

ワナを探りながらだから 大変なんだよ」


 壁際を、手探りでトラップを回避するグレゴリウス。


「穴にハマってもイイから急いでよ」


 グイグイと、グレゴリウスの背中を押すミテオナー。


「おぃぃ

押すなって !!」


その頃


「ハアッハアッ

何匹出て来るんだよぉ」


 倒しても倒しても、次々とわいて出て来るモンスターたち。

 部屋じゅうコゲ臭いニオイが充満して気が遠くなりそう。


「あたしぃも モンスターと戦うよ」


 そう言うと、地面に落ちていた剣を拾い上げて構える女。


「えっ

一緒に戦ってくれるんだね」


 重そうに、剣を構える女を見てたよりなさそうに思えてくる。


「そうよ」


 声の、威勢だけはよさそうだけどなぁ。


「いや 無理しないで

隠れていてよ」


 後ろに、下がるように言うボク。


「えぇーい」


 勢いよく、剣を振り下ろす女。


ズバッ


 その刃が、電撃で弱っていた大蛇の首を断ち切る。


「うぁ

すごいじゃん………」


 予想外に、強いかも知れない。


「あたしぃの名前はベリルモート

あなたは ??」


 いきなり、自己紹介をはじめるベリルモート。


「あっえっよろしくね

ボクの名は ケンイチロウ」


 つい、つられて名前を言うボク。


「ケンイチロウね

あまり聞かない名前だけどどこか辺境の出身かしら」


 首を、かしげるベリルモート。


「辺境………ボクは

って あぶない!」


 ベリルモートの、切り落とした大蛇の生首がそれだけで噛み付こうと飛んで来た。


「キャッ」


 ボクが、押したので死体の山にズポッとお尻から入るベリルモート。


「サンダー!」


 生首になったモンスターに、雷が落ちると、


ドゴーン


 ハジけ飛んで、しぶきが飛ぶ。


「ふぅ

大丈夫かな ??」


 右手を、差し出すボク。


「えっ

ええ大丈夫よ」


 手を、とって立ち上がるベリルモート。


「よし

ここを 切り抜けよう」


 ニコッと、笑って見せるボク。


「はぃ」


 少し、頬が赤くなるベリルモート。


「なんだ このモンスターはッ」


 部屋を、出ようとするが見たことない丸く大きなモンスターが立ち塞がっている。


「こいつです

大きいクチのモンスター」


 ベリルモートが、指差して言う。


「うわ めっちゃ強そうなヤツ来たな」


 ビックリして、ひるむボク。


「グゥアアーァァッ」


 奇声を、発する大玉モンスター。


「ひぃ」


その頃


「おーい

ケンイチローウ」


 ミテオナーの、声がむなしく洞窟内に響く。


「居たら返事してくれーい」


 大声を、出すグレゴリウス。


「やっぱり 分岐を右だったんじゃないの ??」


 ムッとした、顔をするアルパカ。

 ダンジョン内に、漂うモンスターの臭いのせいで鼻がダメになってしまった。


「おかしいなー

こっちからドッカンドッカン音が鳴っていたんだけどなぁ」


 腕組みを、するグレゴリウス。


「全然聞こえないわね」


 耳を、すませるミテオナー。


ズドーン


「ホラ

こっちだよ聞こえて来た!」


 少々、うれしそうに言うグレゴリウス。


タッタッタッ


 奥から、別の音もして来る。

 しかも、だんだんと大きくなって、


「うわ

大玉モンスターが来たーッ」


 短い足を、もつれさせながら必死に走って来る。


「クソっ

狭いところで」


 弓矢を、構えるグレゴリウス。


ズバーン


「グギァーーーーッ」


 見事に、大玉モンスターを捕らえて霧散していく。


「ふぅ

やっつけたのはイイが ケンイチロウが食べられてなければ………」


 しばらく、大玉モンスターが消えていく様を見ていたパーティーメンバーだが、


「ちょっと 縁起でもないことを言わないでよ !!」


 ミテオナーが、そうクチを開くと、


「そうだな

しかしなんで このモンスターが弱った状態でこっちに走って来たのか疑問点が残るが」


 おかしな現象だと、首をかしげるグレゴリウス。


「そんなの

この向こうに行ってみれば わかるでしょ」


 グレゴリウスの、腰を押すミテオナー。


「ああ

先を急ごう」


 ハッとしたグレゴリウスが、またトラップを警戒しながら歩みだすと、


「あれ

なにか光ってない ??」


 アルパカが、ダンジョンの奥に淡い光を見つける。


「うわ

またモンスターかな

サンダ」


 右手を、突き出すボク。

 何体目の、モンスターだよ。


「待て

オレだ グレゴリウスだ」


 薄暗い中で、よく見るとグレゴリウスの姿が見える。

 ヤバい。


「わーどうしよう !!」


 止め方が、わかんないよ。


ズガーン


「ギャア」


その後


「ったくよー

心配して損したぜぇ

アイタタ」


 ダンジョンを出て、横になるグレゴリウス。


「ちょっと 静かにしてよ

傷口が 開いちゃうわよ」


 グレゴリウスの、上半身を脱がせるミテオナー。


「早いとこやってくれ」


 ボソッと、つぶやくように言うグレゴリウス。


「ヒーリング」


 アルパカが、唱えるとグレゴリウスのキズがふさがって、元通りになる。


「ふぃー」


 ムクッと、起き上がるグレゴリウス。


「あの

グレゴリウスさん

ごめんなさい」


 まさか、味方を攻撃してしまったボクは恐縮しきりだよ。


「あぁ イイよ気にすんな

オレだってそうしただろうし」


 極限状態では、一瞬の判断力が必要だと教えてくれるグレゴリウス。


「にしても スゴいわねケンイチロウ」


 すごく、ニヤニヤしているミテオナー。


「えっ ??」


 ちょっと、不気味で引いちゃうボク。


「雷属性の魔法が使えるようになったんだね」


 ボクの、肩をポンポンと叩くミテオナー。


「あっ

そうなんだよ

まぁ ライデンの能力なんだろうけど」


 苦笑いするボクに、ミテオナーは、


「それでも スゴいことよ

ジュレルを使いこなせるなんて並の人間には難しいことなのよ」


 後ろから、ボクの肩を抱いて顔をのぞきこむミテオナー。


「そっ

そうなんだね」


 なんだろう。

 素直に、喜んでイイのだろうか。


「うん

自信持ってよ」


 そう言うと、ボクの背中を手のひらで叩くミテオナー。


「ッツ

痛いよ」


 笑いながら、向こうに行くミテオナー。


「これは 手強いライバルになったわねぇ」


 声の方を向くと、バニー衣装の華美がすぐ側で立っている。


「うぉっ

華美さん」


 足音が、しなかったのでのけぞるボク。


「負けないわよー

って言いたいけど」


 人差し指を、立ててボクの鼻にさわる華美。


「どうしたんですか ??」


ビクッと、なるボク。


「ケイコちゃんを かばった時にケガをしちゃって」


 一瞬、ケイコの方を見るとウンウンとうなずく。


「えっ! ケガの具合って ??」


「ワタシは 大丈夫だけど 華美さんは良くないみたい」


 ケイコが、申し訳なさげにそう言うと、


「ケンイチロウくんが相手なら手負いでも勝てるかもって考えていたんだけど」


 苦笑いする、ウサギの華美。


「あっそうですよね」


 うん、それはよくわかってるよ。


「ワッチは 次の試合

棄権するわ」


 スッキリとした、顔に変わる華美。


「えーっ」


 ビックリしてしまう。


「うん 思ったよりマーブルの攻撃が効いたわ」


 そうとう、強力な攻撃を受けたんだね。


「そうなんだ

ボクを探してくれる為に………

なんだか 悪いなぁ」


 なんだか、すごく罪悪感があるなぁ。


「気にしないでイイよ

ケンイチロウの方が強いってわかったからそれで十分満足なのよ」


 そんなに、簡単に決めた判断じゃあないみたい。


「そうですか」


 正直、華美さんに2~3発もらってギブアップするつもりだったのでプランが崩れる。


「だから 自信を持ってトーナメントをかけ上がってね」


「はい

華美さんの分まで 頑張ります」


 そう答えるほかないよね。


「よーし

そのいきよ」


「はい」


「もし 優勝して魔王討伐のパーティーメンバーを決める時は ワッチを仲間に入れて欲しいの」


 お願いを、してくる華美。


「えっ それは………」


 なんだか、また面倒が増えちゃった。


「お願いよ」


「えーっと

どうして魔王の国に行きたいんですか ??」


 ただの物見遊山だったら、御断りなんだけどね。


「魔王が支配する前は 4つの国があの地域にあったの」


 遠い目を、する華美。


「そうなんだ」


「そして ワッチのふるさとも魔王に支配されてしまったからこの小国に逃げて来たの」


 一瞬だけ、かなしそうな顔をしたがすぐニコッと笑う華美。


「それは 大変だったね」


 そういう背景の華美もいれば、賞金だけ欲しいっていうグレゴリウスもいる。


「だから またふるさとを一目だけでも見たいの」


 ボクも、急に異世界に来て帰れないから痛いほど胸に迫って来る。


「はい

そういうことならわかりました」


「うれしい

ありがとーう」

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