第29話

ーー29ーーーーーーーーーーーーーーーー


「すまねぇなミネルアー」


 グレゴリウスが、そう言って弓矢を構えるとマーブルに向けて矢を放つ。


ズバン


「くっ

まさかな」


 グレゴリウスの放った矢は、マーブルの左腕に命中して腕がボトりと地面に落ちる。

 少しだけ、ヨロめくマーブル。


「あーっ

ウチの腕がぁー」


 顔色が、一気に青ざめて大口を開けるアルパカ。

 自分が攻撃を受けたわけでもないが、一瞬左手に痛みがはしりムズムズする。


「いや

もうあの体は キミのじゃあない」


 冷静に、そう言うグレゴリウス。

 戦闘中なので、少々冷たい言い方をしてしまったのだが、


「キーーーーッ」


 アルパカの、逆鱗にふれてしまい不機嫌になってしまう。

 前足で、交互に地面を叩きイライラをアピールしている。


「人間にしては やるじゃないか」


 左腕が、切り落とされても余裕の表情を見せるマーブル。

 ボトボトと、血が噴出していたがなにかしらの能力で止血したようだ。


「頭を 狙ったが避けられてしまったな」


 小声で、反省の言葉をクチにするグレゴリウス。

 いくら、魔物とはいえ頭部が切断されればタダでは済まない。


「たいしたことないと思っていたが なかなかやりおるな」


 思ったよりも、ダメージがあったとわかって苦笑いするマーブル。

 さすがに、手負いの状態でこの人数と戦うことに若干分が悪いと考え始める。


「もう1発おみまいしてやるぜ

覚悟しな !!」


 素早く、弓矢を構えるグレゴリウス。

 今度は、手の内を知られているので慎重に狙う。


「チッ………

一旦引くか」


 このままでは、大ダメージを受けるかも知れない。

 そう判断し、撤退することにするマーブル。

 立ったままで、横にスライドしたかと思えばスーッと消えていく。


「待ちやがれ !!」


 グレゴリウスが、弓矢を放つがマーブルが消えたあとで大玉モンスターのそばをかすめ

て、後ろの山にぶつかって大爆発する。


「ぶびぃぃぃぃ」


 いきなり、1匹残された大玉モンスターは大量の汗をかいて立ち尽くしている。


「ふう………

よし ここまで来れば追っては来ないだろうねぇ~

ハアーッ」


 別の、場所に姿をあらわすマーブル。

 気合いを、込めると左手がズボッと再生する。


「ハァハァ

片腕だけだと 大技の命中率が悪いからな~」


 そう、つぶやくと森の中へと消えていくマーブル。


「いゃあ

マーブルって めっちゃ強かったな」


 ホッと、胸をなで下ろすグレゴリウス。

 ミテオナーを、チラッと見て後ろに振り返りアルパカを見るが、かなり怒っている。


「以前より だいぶ強くなってるわ」


 悔し気な、表情を見せるミネルアー。


「そうとう人間を喰ったんだな」


 唇を、噛むミテオナー。


「さてと 大玉モンスターは………

いない !!」


 グレゴリウスが、振り返ったら大玉モンスターの姿が忽然と消えている。


「あのー」


 もじもじしながら、話し掛けるケイコ。


「ケイコちゃんだっけ

どうしたのかな ??」


 ニコッと、笑うグレゴリウス。


「丸いモンスターは

洞窟に入って行きましたよ」


 申し訳なさげに、そう言うケイコ。


「それは間違いないんだね? 早く追いかけよう

ケンイチロウが あのモンスターに食われる前に !!」


 アルパカが、跳ねながらそう言うと、


「ええ そうよね急ぎましょう」


その頃


「炎の魔法と言われてもなぁ」


 詠唱が、必要だったりしたらボクには無理だよ。

 でも、このモンスターを倒さないと確実に食べられる。


「大丈夫

心に思った通りにやってみたらイメージした火が出るよきっと」


 やたらと、応援してくれる女。

 なんだか、ボクよりキミの方が魔力が高いんじゃないかと思うよ。


「そんなもんかなー」


 首を、かしげるボク。

 モンスターは、攻撃して来ないとわかるとジリジリと距離をつめて来る。


「やってみてよ」


 半信半疑だけど、やってみないとわからないからね。


「よーし

めっちゃ炎が出てモンスターを丸焼きに」


 声に出して、イメージを膨らましていると、


「別に 全部クチに出してしゃべらなくてイイと思う」


 と、つっこみを入れる少女。


「あっ

そんな感じかぁ」


 そりゃあそうだ。

 あまりの、極限状態でイメージをするのはしゃべらないとムズいんだよ。


「あっ モンスター来るわ」


 悲鳴のように、言う女。


「シャーァ」


 大きい割に、すごい速さでボクにめがけて飛びついて来る。


「ファイア!」


 ボクが、右手を突き出して唱えると、


ゴーーッ


 部屋の、天井がコゲそうなほどの火が出てヘビのモンスターを炎が包む。


「シュアー」


 ボールのようになったり、逆に伸びたりして火を消そうとするモンスター。


「わっ

イメージよりすごいの出た!」


 もっと、威嚇する程度のモノが出ると思っていたから腰をぬかしそうだよ。


「そう それでイイの」


 女が、満足そうにそう言う。


「そうだ

もしかしたら」


 赤色の、ジュレルに出来るなら黄色のもイケるかもね。


「どうしたの ??」


 少し、顔がほころんだボクを見てギョッとした顔をする女。


「ちょっと見てて

サンダー」


 ものは試しと、やってみると、


ビリビリッ

バーーン


 ものすごい轟音と共に、まばゆい閃光がはしりヘビのモンスターがビリビリとした刺激でのたうち回る。


「わっ 中に出ちゃった」


 まさか、室内なのにこんな強力な電撃を出せるなんて驚きだよ。


「そうよね

部屋の中なのに雷が」


 ビックリして、目を丸くする女。


「えっ

なんて言ってるか聞こえないよ」


 大音量で、響いたので一時期に耳がやられたみたい。


「だからね

部屋の中なのに………

って新しいの来たわよ」


 なんと、倒したヘビのモンスターと同じのが新たに2体出て来る。


「よぉーーし

何体出てこようが やってやる」


その頃


「ホントに ダンジョンに入るのかよ ??」


 狭いところは、自分の弓矢の能力が発揮されないので出来れば避けたいグレゴリウス。


「もちろん

そうしないと ケンイチロウが助け出せないじゃあないのよ」


 腕組みして、グレゴリウスを睨め付けるミテオナー。


「ホントに この中にケンイチロウがいるとは限らないだろ

このダンジョン自体がワナかも知れないし」


 少々、ためらうグレゴリウス。


「わかった

ワタシたちだけで行きましょ」


 多少、イラついてしまうミテオナー。


「うん

姉さん 行こ」


 グレゴリウスから、プイッとそっぽを向いて洞窟へと向かうアルパカ。


「わかったよ

オレも行けばイイんだろ」


 しぶしぶ、ダンジョンに入って行くグレゴリウス。


「そうそう

先頭に行ってね」


 先行するように言うミテオナー。


「おい………

まぁイイか ついてこい」


 急に、男らしく右手に拳を握って突き上げて言うグレゴリウス。


「ワー

頼もしい」


 棒読みで、讃えるパーティーメンバー。


「チェッ」


しばらくして


「うわっ

また 落とし穴かよ」


 洞窟内に、入ってすぐに深さが1メートルほどで落ちたら横からヤリが出る浅めの落とし穴があって、グレゴリウスは落ちたがギリギリ助かった。


「もう落ちないでよ」


 今度のは、深めで下にヤリがいっぱいある。

 穴の幅が、そんなになかったので両足を壁に付けてあと数センチでお尻に刺さるギリギリで止まることが出来た。


「うっ

ちょっと 油断してただけだよ」


 冷や汗をぬぐうグレゴリウス。


「にしても 2回も落とし穴に落ちるとか」


 あきれ顔の、アルパカだが、


「アルパカだって めっちゃ頭をぶつけてるじゃあねぇかよ」


 そう、つっこまれて顔色が赤くなるアルパカ。


「仕方ないじゃない

ウチは アルパカだし洞窟を歩くとか難しいのよ !!」


 前足を地面に、ガリガリと掻くアルパカ。


「さあ モメている時間があるなら ドンドン先に進みましょう」


 目を、細めて注意するミテオナー。


「いや モメさせてるの ミテオナーだからよ」


 ボソッと、つぶやくグレゴリウス。


「えっ そうだっけ」

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