第27話

ーー27ーーーーーーーーーーーーーーーー


「ねぇ ケンイチロウ~」


 絡み付くように、手を伸ばして来るミテオナー。


「なっ

なんですか ??」


 完全に、背後から抱きつかれて身動きがとれなくなってしまったボク。


「あのさぁ~」


 ミテオナーが、耳元でささやくように言ってくる。


「ちょっと どうしちゃったんですかミテオナーさん」


 いつも、変な人だとは思っているけど、今日は特別に変だなぁ。


「持ってるでしょ~」


 耳に、吐息がかかって妙にくすぐったいな。


「なんですか ??」


 逃れようとするが、だんだん締め付けが強くなっていく。


「しらばっくれてもダメよ~」


 半笑いの、ミテオナーだが目が笑っていない。


「ちょっ

痛いですよミテオナーさん

やだよ」


 だんだん、呼吸が苦しくなってくる。


「雷の召喚竜ライデンを封入したジュレルという石を持っているハズよ~ 渡して~」


 なんだか、言い回しに違和感がある。


「さぁ

どうだったかなぁ」


 少し、抵抗してみる。


「フフフ」


 骨が、折れてしまいそうなほどキツい。


「痛いっ

ミテオナーさん やめてよー」


その頃


「おい あれ見ろミテオナーだ

そばにいるのは 誰だ ??」


 グレゴリウスが、ミテオナーを発見するがいつもと雰囲気が違うのを感じる。


「あいつは アーサー !!」


 そばにいる男を見て、ミネルアーが声をあげる。


「アーサー? えっ もしかして騎士団長様のアーサー ??」


 グレゴリウスも、チラッとしか見たことがないのでよく判別が出来ない。


「そう

でも なんでヤツがいるんだ?」


 いぶかしがるミネルアー。

 この、小国の騎士団長とはいえ多忙なはずだ。


「おっと

お仲間が来たようなんで失礼するよ」


 人数が、増えたのを確認してアーサーが素早く身を隠す。


「待てぇーッ」


 走って、追いかけるミテオナー。


「ハハ………」


 森の中に、消えていくアーサー。


「チッ」


 悪態を、つくミテオナー。


「姉さん

なんで アーサーがいたの ??」


 素早く、駆け寄ってミテオナーに聞くと、


「知らない

ワタシの方が教えて欲しいわ」


 そう言って、唇を噛むミテオナー。


「そうなんだ………」


 アーサーが、消えていった森を見るアルパカとケイコ。


「それより ケンイチロウと一緒じゃあなかったの ??」


 少しだけ、声に緊迫感がまじる。


「いや

姉さんと 一緒にいると思っていたのに どこに行っちゃったんだろう ??」


 お互いに、ケンイチロウと行動していると思いこんでいた。

 はぐれてから、だいぶ時間が経過してしまっている。


「なんだか イヤな予感がするわね

アーサーが変なことを言っていたの」


 アーサーの言葉を、思いかえすミテオナー。


「ええっ

どんなことを言っていたの ??」


 ミテオナーに、詰め寄るアルパカ。


「ケンイチロウが 大変なことになっているとかなんとか」


 会話の、内容をニュアンスで伝える。

 正直、頭に血がのぼっていて詳細を思い出せないミテオナー。


「えっ

それなら 急いで探しましょ !!」


 あせりの、表情を見せるアルパカ。


「ええ」


その頃


「早く ジュレルを渡しなさ~い」


 ますます、締め上げて来るミテオナー。


「ちょっと ミテオナーさん………

苦しいよ………」


 腕を、つねったりして抵抗しているが一向に効果がない。

 このままでは、気を失ってしまうかも知れない。


「さぁ 早くしないと 骨が砕けるわよ」


 痛みが、ハンパ無い。

 もう、降参してジュレルを渡してしまおうかと思っている時に 、


「ぐわァ」


 ミテオナーの、頬にこぶし大の石が当たりひるんだスキに拘束が外れる。


「ッツっ

誰なの ??」


 どういうことだ ??

 服装も、同じようなミテオナーが目の前に2人。


「わっ

ミテオナーさんが 2人になった ??」


「あたちが本物よ !!」


「なにを言うか

ワタシが本物のミテオナーよ

ケンイチロウ」


 わー、なんだこれ。

 わかんねーー。


「やっぱり

ニオイを嗅いでたどり着いたら………

ってか あれはウチの体だかんね」


 ミテオナーに、抗議するアルパカ。


「わかってるわ

後で ちゃんとなおしてあげるわよ」


 えっ、よくわかんないけど妹のミネルアーの体なの ??

 もし、そうなら思い切りつねってゴメンよ。


「あーあ

見つかっちゃった~」


 ニヤニヤ笑って、緊張感のない偽ミテオナー。


「ミテオナーさんじゃない? お前は誰だ ??」


 頭が、混乱してくる。


「バレたら 仕方ないわね」


 肩を、すくめる偽ミテオナー。


「ケンイチロウ

そいつは ワタシでも ミネルアーでもないわ

離れて」


 もっと、距離をあけるように言うミテオナーっぽい人。


「じゃあ この人は誰なんですかミテオナーさん ??」


 もう、ぶっちゃけどっちも偽物っぽいけど一応聞いてみると、


「そいつは マーブル

妹の姿を 奪った魔物よ」


 ミテオナーっぽい人がそう言うと、アルパカがウンウンとうなずく。


「えっ魔物 !?」


 人間かと、思っていたら魔物だった。

 かなり、ショック。


「早く こっちへ来て !!」


 ボクに、近寄って来るミテオナーっぽい人。


「させないよ」


 また、霧が出て来て視界を奪ってくる。


「ミテオナー !!」


 偽ミテオナーもとい、マーブルに抱えあげられ森の奥へと連れて行かれるボク。


「ケンイチロウ !!」


 あわてて、手を伸ばすミテオナー。


「ケンイチロウくん !!」


 ケイコも、追いかけて来てくれている。


「ケイコ !!」


 霧で、その姿は完全に隠れてしまう。


「どこに 行っちゃったのかしら」


 ようやく、霧がはれて捜索を再開するミテオナーたち。


「姉さん またニオイをたどれば どこに行ったかわかるよ」


 アルパカが、鼻をヒクヒクさせる。


「そうね

お願いミネルアー」


 アルパカの、背中をさするミテオナー。


「わかってるわ」


その頃


「わーっ

はっなっせーっ」


 体は、双子の妹のモノだってわかったから手荒なことは出来ない。

 されるがまま、洞窟に連れ込まれ一番奥のところまで行くと、


「ここから 動くなよ

ケンイチロウ」


 そう言って、出入口の方へ走って行くマーブル。

 と、同時に洞窟内に入った時にマーブルが出した浮遊する火の玉はマーブルと一緒に出て行ってしまい、辺りは真っ暗闇へとなってしまう。


「待って

一人にしないでよー」


 この迷いの森ダンジョンから、早く脱出したい。


「懐中電灯………は

ないし」


 ポケットを、探ってみるけど明かりになりそうなモノがない。


「うわー

詰んだー」


 嘆きが、洞窟内に反響する。

 その時、ふと疑問がわく。


「でも なんでボクが持ってるジュレルをマーブルは強引に奪わないんだろう ??」


 何回も、強引に奪取するチャンスはあったハズだ。

 でも、それをしなかった。


「いや しなかったんじゃあなくて出来なかったのかも知れないなぁ」


 じゃあ、強引に出来なかった理由ってなんだろう。


「いや そんなことを考えている場合じゃあないな」


その頃


「ここで 合っているんだな ??」


 迷いの森のダンジョンの入り口までたどり着くミテオナーたち。


「クンクン

やっぱり この中よ」


 前足で、洞窟を指差すアルパカ。


「迷いの森のダンジョンか

出来れば 中には入りたくはなかったが………」


 げんなりとするグレゴリウス。


「ずいぶんと 時間がかかったじゃないの」


 洞窟の、入り口にスーッと姿を見せるマーブル。

 不適な笑みを、浮かべている。


「マーブル

きさま! ケンイチロウをどこへやった ??」


 大声を、出すグレゴリウス。

 ケンイチロウが、マーブルの側にいないので最悪の事態を想像してしまう。


「大丈夫 無事よ」


 多くを、語らないマーブル。

 それが、逆に不安をあおる。


「じゃあ どこにいるんだ」


 もう一度、同じことを聞くグレゴリウス。


「それは言えないし

今のところは無事なの」


 顔が、歪むマーブル。

 石が、ぶつかった頬は赤くなりクチの端には血がにじんでいる。


「なんだ

今のところって !!」

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