第25話

ーー25ーーーーーーーーーーーーーーーー


「なんだよ

もう少し話が聞きたかったのに」


 そう、つぶやきながら部屋を出て薄暗い廊下を歩いていると、


ドンッ


「わっ !!」


「キャッ」


 女の人と、ぶつかってしまった。


「大丈夫ですか? ってケイコ」


 ケイコは、思い切りしりもちをついて悶えている。


「イタターッ

ちょっと ビックリするじゃん」


 睨めつけるケイコだったが、ボクだとわかると警戒を解く。


「ごめんごめん

なにしてたの ??」


 一緒に、夕食を食べていたのに途中で姿を消していたケイコ。


「なにって

トイレに行ってたの」


 ちょっと、頬を膨らまして答えるケイコ。


「あぁ そうなんだ」


 多少、聞き方にデリカシーが無かったと反省するボクだが、


「ケンイチロウくんこそなにしてるの? トイレ ??」


 と、ケイコも聞いてくるので、


「いや もう子供は寝なさいって言って部屋から出されたんだよ」


 そう、正直に言う。


「そうなんだね

それじゃあワタシも部屋に入ったら追い出されるかしら ??」


 苦笑いしながら、そう言うので、


「いや すぐは追い出されないんじゃないかな」


 と、ついマジメに答えてしまうボク。


「そう?

ケンイチロウくんは もう寝るのかな ??」


 そんなことを、聞いて来るケイコの真意を感じとれずに、


「そうだな

だいぶ疲れたから すぐ寝るよ」


 そう、素っ気なく答えるボク。


「うん わかったわ」


 特に、リアクションをとることなく言葉だけで反応するケイコ。

 そのまま、食事をしていた部屋へと入って行った。


「そうだ

お風呂のことを聞いてなかったな」


 村長に、入浴が出来るのか聞いていなかったのだが探してみることにする。


「あっ お風呂ちゃんとあるね」


 すごく、立派な出入口の浴室がある。


「こっそり入って すぐ出よう」


 中は、ちょうど人が居ないように見える。

 ホントは、のんびりと入りたいなぁ。


「あーッ

完全に 旅館みたいなお風呂だ~」


 10人くらいは、余裕で入れそうな湯船にゆっくりと浸かっていると脱衣場から誰かが入って来るような人影が見える。


「あっ ヤバい

誰か入って来た」


 少し、目の下までお湯に潜るようにして様子をうかがうボク。


「わっ ケイコかぁ」


 誰かと、思えばケイコが入って来て、


「ケンイチロウくん

寝たんじゃなかったんだね」


 そう言いながら、ハンドタオルで巨乳を隠すような仕草を見せるケイコ。


「あっうん

ごめんね」


 なぜだか、謝ってしまうボク。


「いや 全然イイよ

ちょっと 話がしたかったし」


 桶で、お湯を汲んで体にかけるケイコ。


「えっ

話って なんだろ」


 なにも、思いつかないボク。


「こっちの世界に来る前のこと 覚えてるかな ??」


 お湯の、水面を見つめるケイコ。


「うん なんとなくだけど覚えているよ

ケイコは どうかな ??」


 なんだか、ずいぶん昔のような気がするけどついこの前だったんだよね。


「うん ちゃんと覚えてるよ

あのね」


 チラッと、ボクの顔を見るケイコ。


「よかった ちゃんとあっちの記憶が残ってて」


 同じ、世界の記憶を持っている友人がいるだけで心強い。


「うん それでナコちゃんに告白してたじゃん ??」


 あっ、忘れたい記憶を掘り起こしちゃうんだね。


「そっ

そうだね ケイコやっぱり見てたんだね」


 やっぱり、見てないフリしていただけなんだね。


「そう 見てた」


 ボクを、ジッと見つめるケイコ。


「告白してたことも 知ってたの ??」


 それが、知りたいなぁ。

 どういうつもりで、見ていたのか。


「いいえ

それは ナコちゃんに聞いたからね

でも その前になんとなくわかっていたけど」


 うつむくケイコ。

 なんだか、あやしい。

 たぶん、知ってて見てたんだよね。


「なんとなく………

ボクは 顔に出やすいからなぁ~」


 まぁ、深くは追及しないでおこう。


「うん それもあるんだけど

ワタ───」


「なになに? どうしたの ??」


 例のごとく、湯船から頭を出すアルパカ。

 ちゃっかり、潜んでいた。


「あっ ミネルアーさん いたんだ」


 前に、やられているから体がビクリとなっただけですぐ対応できる。


「ビックリしたぁ」


 目が、点になって驚くケイコ。


「うん 村長がさ

アルパカは 納屋にいろとか言って腹が立つから 一番風呂に入ってやろうと思ってね

よく考えたら ここ温泉だから別に順番とかあまり関係なかったけど」


 そうとう、おしゃべりを我慢していたのだろうけど一気に話しすぎ。


「えーっ

それで 一緒に食事をしてなかったんだね」


 そういえば、夕食の時にいなかったかも。


「ねぇ 話の続きをしないのぉ ??」


 ジトーっと、ケイコを見るアルパカ。


「うん そうだね

どこまで話していたっけ?」


 ボクも、話の続きに興味があるよ。


「ううん

もう大丈夫」


 そう言って、そそくさとお風呂から出て行ってしまうケイコ。


「ありゃ

完全に お邪魔しちゃったわね」


 ニヤーッと、笑いながらボクにくっつくアルパカ。


「なんだか 前回もこんな風に………

まぁ いっか」


 お風呂から出て、大きな部屋に通されると家を破壊された2家族10人が座っている。


「あっアルパカのそばにいたお兄ちゃん !!」


 そう言って、女の子2人が走り寄ってくる。


「ねーねーアルパカは~ ??」


 大きい方の子が、聞いて来る。


「どこにいるの ??」


 ちっちゃい方の子も、聞いて来る。


「あぁ 納屋にいるよ」


 笑いながら、そう答えると、


「えー

さわってイイよね ??」


 大きい方の子が、困り顔で聞いて来るので、


「あっ さわりたいんだね」


 どうやら、モフモフしたいみたいだね。


「うん

いいでしょ ??」


 ものすごく、物欲しそうな顔をする女の子たち。


「イイけど 明日にしないかな

もう 外は暗いし」


 まだ、犯人も戻って来る可能性もあるしなぁ。


「えーッ

さわりたい」


 ちっちゃい方の子が、泣きそうな声を出す。

 まいったなぁ。


「さわりたいって

今 ちょっと濡れててモフモフしてないよ

それでも 触りたいのかな ??」


 温泉から、出たばっかしだしタオルで拭いてあげたけどね。


「うん

それでもさわりたい」


 たぶん、癒されたいのかも知れない。


「どうしよう

あの~」


 両親の、ところに近付いて声をかけるボク。


「ああ 勇者様

どうかしましたか ??」


 なんだか、勇者様って言われるとくすぐったいなぁ。


「あぁ お子さんがアルパカが見たいと言うんで見せに行こうかと」


 簡単に、説明するボク。


「そんなことまで していただけるとは

ありがとうございますありがとうございます」


 何度も、頭を垂れる両親。


「いや そこまで………

それでは ちょっと行って来ます」


 なんだか、逆に恐縮してしまいそうになるよ。


「はい どうぞ」


 2人を、連れて納屋まで行ってみる。


「おーい

もう寝たかなぁ」


 扉を、開けて声をかけてみる。


「ケンイチロウかぁ

会いに来てくれたんだね」


 なぜだか、嬉しそうなアルパカ。


「うん

この子たちがアルパカが見たいって」


 見たいって、行っていたわりにボクにしがみついて身を隠すようにアルパカを見ている。


「ああ そうなんだ

フーーッ」


 なんだか、残念そうなアルパカ。


「わーアルパカ」


 大きい方の子が、アルパカに恐る恐るさわりはじめる。


「アルパカ~」


 ちっちゃい方の子も、ガシッと掴むようにさわる。


「わ~モフモフー」


 大きい方の子が、そう言うと、


「モフモフ~」


 マネを、するようにちっちゃい子も言う。


「キミたちって 姉妹なのかな ??」


 あまり、顔は似ていないようだけれど。


「ううん 姉妹じゃあないよ

おうちがとなりなの」


「なの」


 となり同士、家を破壊されてしまったようだね。


「そっかぁ」


 なんで、こんな幸せそうな一家を襲ったのだろうか。


「この子たちって ??」


 アルパカが、ボクに聞いて来る。


「うん ジョーカーに家を破壊されてしまったんだよ」


 少々、言葉につまるボク。


「そうなの? かわいそうね」


 目を、パチクリさせるアルパカ。


「フカフカ気持ちイイ」


「イイっイイっ」


 目が、トローッとなる子らを見て、


「この子たち 寝そうよ」


 アルパカが、困り声を出す。


「あっ

早く連れて戻らないと」


 あせるボクに、


「まぁ イイじゃない

ケンイチロウも 一緒に寝よ~」


 そう言う、アルパカ。


「うん そうだね」

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