第23話
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「チッ 1体やられたか」
テイマーの、ハトシが崖の上で少々くやしそうな表情をうかべながら眼下の馬車を眺める。
「まぁ あと2体いるんだ
なんとか やってやるさ」
右手を、前に突き出すハトシ。
それに、呼応するように複雑に飛びはじめる巨鳥たち。
「なんだ こいつら
攻撃パターンが変わったぞ」
鳥モンスターの、異変に気付くグレゴリウス。
器用に、矢を避けるように飛んでいる。
「そうね なんだか 前に戦ったんだけど
その時は 攻撃が単調で 1体倒したら
逃げて行ったわ」
前回の戦いを思い出すミテオナー。
表情が、一気に曇る。
「うわっ
あぶねぇ」
矢を、避けつつ体当たり攻撃を仕掛ける巨鳥。
すごいスピードだ。
直撃したら、即死するかも知れない。
「大丈夫 ??」
しりもちをついたグレゴリウスを、見下ろすミテオナー。
手を、差し出してグレゴリウスを起こす。
「あぁ 問題ない
しかし こう何度も攻撃をかわされたら」
鳥の動きを、目で追いながら右手で矢の残数を確認するグレゴリウス。
「でも どうしたら………」
弓矢を、構えながらジリジリ間合いをとるグレゴリウスとミテオナー。
「どうしたんですか ??」
ボクの背後から、声がして振り返るともう1台の馬車が、後ろからやって来て荷台からバニーガールが、跳躍して来る。
「あっ あなたはウサギの華美さん」
トーナメントで、次にあたる人なんだけどわかるかな。
「ケンイチロウくんだね
次の 対戦相手の」
ちゃんと、おぼえてくれていたみたいでうれしいよ。
「はい よろしくお願いします」
馬車から、飛び降りてペコッと頭を下げる。
「うん よろしく
で 何があったの ??」
巨鳥モンスターを、指差す華美。
「それが 鳥のモンスターに襲われて
立ち往生しているんです」
窮状を話すと、
「そうなの? 仕方ないわね」
そう言うと、ボクたちが乗って来た馬車の前まで出る華美。
「どうするんですか ??」
見た目から、強さを測れない。
「決まってるじゃない
モンスターの動きを封じるの」
振り返って、ニヤリと笑うウサギの華美。
「そんなのが 出来るんですか ??」
動きを、封じるって興味深いな。
「ウフフ
まぁ 見ておきなさい」
そう言うと、両手を前に突き出すウサギの華美。
目の前に、魔法陣があらわれ無数のちっちゃな青い人のようなのが出て来てフワリと空へと次々と舞い上がっていく。
「なんですか アレは ??」
あまりにも、弱そうなペラッペラな集団にちょっと、あきれてしまうが、
「あれは 言わば 雪の妖精みたいな存在よ」
簡単に、説明してくれる華美。
「へぇー」
その妖精たちが、巨鳥の翼へとくっついて次第に固まっていく。
ギャオェ
羽が、全部氷におおわれた1体がチカラなく地面に落下する。
「今よ !!」
その様子を、ながめていたグレゴリウスに指示する華美。
「助かったよ サンキュー」
地面に、転がってジタバタしている巨鳥を射ぬいて倒すグレゴリウス。
「よっしゃーッ」
ガッツポーズするグレゴリウス。
「あと 1体ね
あれっ」
どうやら、仲間がやられているのをそっちのけで、人間の女性をおそっている巨鳥モンスター。
「キャアー やめて
やめてよぉ~」
ものすごい早さで、腰を振っている鳥。
「早く 助けないと あの子が ヤバい」
矢を放ち、命中させるミテオナーだが威力がそれほどない。
「まかせて」
ウサギの華美が、魔法陣を出し妖精が一斉に巨鳥の腰の動きを止める。
「よしきた
これでもくらえ」
グレゴリウスの、放った矢が巨鳥モンスターの、頭に刺さって首から上が黒い霧になって消えていく。
「ふぅ
やったぜ」
額を、右手でぬぐうグレゴリウス。
「助かりました
あなた様のおかげで 娘も無事ですじゃ」
前で、立ち往生していた人たちがお礼を言う為に集まって来る。
「おう よかったな」
腰に、手を置きニヤッと笑うグレゴリウス。
「はい
なにか お礼がしたいのですが」
巨鳥に、服をビリビリにされた女性がポケットをまさぐっているのを見て、
「そんな 礼には 及ばないですよ」
右手を出し、制するグレゴリウス。
「それなら せめて お名前だけでも」
グレゴリウスに、しがみつく若い女。
「うん まぁ
名は グレゴリウスだ」
とりあえず、名前だけ教えるグレゴリウス。
「まぁ グレゴリウスさまぁ」
頬を、赤らめる女。
「おっ おう」
多少、気まずいグレゴリウス。
「その 聞いてもよろしいですか ??」
さらに、質問を続けようとする女。
「えっ なんでしょう」
グレゴリウスは、この展開になれている。
「彼女とか思いをよせている方は
いらっしゃるのですか ??」
予想通りの、質問が来たと思うグレゴリウス。
「いや
いませんね」
即答するグレゴリウス。
「そうでございますか」
両頬を、押さえる女。
「グレゴリウスさんって あなたと
どういう関係なんですか ??」
ボクは、そんな様子から目線をグレゴリウスのお供の女性に向けて聞くと、
「私は 一方的に グレゴリウスさまを
お慕いいたしているだけの身なの」
グレゴリウスが、推しだからかまわないみたいなんだよね。
「えっ
よくわからないよ」
もし、他の女と恋愛に発展しても黙ってついて行くのかなこの女の人は。
「キミも 大人になれば わかるよ」
なるほどね。
「そっか
グレゴリウスさんみたいな大人になりたいなぁ」
なんだか、グレゴリウスさんが輝いて見えるよ。
「ケンイチロウなら なれるさ」
ニコッと笑う女性。
「ホントに ??」
なんだか、心が温かくなってウホウホだ。
「うん 大丈夫だ
なれる」
頭を、ペコッペコッと下げる女。
「楽しみだなぁ~」
なんだか、希望がみなぎって来る。
「なにが 楽しみなのかしら ??」
こちらへと、歩いて来るミテオナー。
「ミテオナーさん
お疲れさま」
表情が、少し暗いミテオナーにねぎらいの言葉をかけると、
「あっ うん
ほとんど グレゴリウスが倒したんだけどね」
ニヒルに、笑うミテオナー。
「それでも 飛んでいる鳥に 弓矢を当てるなんて スゴいですよ」
素直に、ビックリした気持ちを言う。
「アハッ
うれしいこと言ってくれるね」
やっと、顔色が明るくなるミテオナー。
「いや ホントに」
「ありがとう
ってか モンスターの様子が おかしかったんだよね」
なにかしら、違和感があったと言うミテオナー。
「妖精が言うには テイマーが操っていたのかもって」
華美が、妖精と対話したことを話す。
「テイマーが………」
腕組みするミテオナー。
「ミテオナーさん
野良のモンスターを 操れるものなんでしょうか ??」
一旦、手懐けたモンスターを使うならわかるけど………
「うーん
可能性は ゼロではないわ」
難易度は、高い。
「そんな 芸当が出来る人って言ったら限られているけどね」
1人の、人物の顔がチラつく。
「まさかね」
「おい 憶測はあとだ
先頭が 動きだしたぞ」
馬車に、飛び乗るグレゴリウス。
「そうよね
まずは 本人に会って詳しく聞かないとね」
みんな、再び馬車に乗って危険な山道を進んでいく。
「よし 尾根を越えたぞ
目的地の村まで あと少しの辛抱だ」
思わず、グレゴリウスが笑顔で言う。
「でも まだ襲撃が あるかも知れないから気をつけないとね」
あたりを、警戒するミテオナー。
「そうだよな」
ひたすら、急勾配を登ってきてようやく下り坂になり軽快に進む馬車。
「風が 気持ちイイわね」
ロングキャニオン村を、見下ろせる高台まで来た一行。
「おい なんだありゃあ」
グレゴリウスが、指差した先に森に囲まれた30軒ほどの集落が見えるが、その1軒から凄まじい炎が上がり大量の煙を出している。
「なんで あんなこと………」
唖然と、するミテオナー。
「とにかく 急いで行くぞ」
焦りの、表情がにじむグレゴリウス。
「えぇ そうよね」
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