第16話

ーー16ーーーーーーーーーーーーーーーー


「それで その渓谷まで

何時間かかるんですか ??」


もう、半分あきれ気味に聞くと


「何時間?

5日は かかるわよ」


あっけらかんと、答える ミテオナー


「えっ なんで ??」


いくら、馬車が遅いからって

5日は、さすがに 遠いよね。


「だって なんにもない

渓谷なんだもん

しかも 道のない ジャングルを

越えて行かないといけないし」


どうやら、道無き道を

切り開きながら、たどり着く

ような、へんぴな場所らしい。


「そんなぁ」


ガックリと、うなだれる。


「ケンイチロウくん」


その時、背後から声がする。


「ケイコちゃん

やっぱり 試合に 出るの ??」


そこに、ケイコちゃんがいて

声を、かけて来た。

どうやら、第15試合に

本当に出るみたい。


「うん

でも さっきの試合を 見ちゃって

コワくなったかな」


急に、恐怖心に襲われるケイコ

もっと、スポーツ的なのを

想像していたようだ。


「ボクなんて 第1試合から見てるから

もっと すごいの見れたよ」


いきなり、ゴーレムが 大暴れして

ビックリどころか、アゴが

もげるかと思った。


「そうなんだ・・・

でも ケンイチロウくんだって

出てるんだし 出たいな」


変なことを言うなぁ。


「いや ボクだって

やめたいけど そんな雰囲気じゃあ

ないんだよ ??」


なんとか、3位までに入って

賞金を、取る。


「そうなの ??」


目を、丸くする ケイコちゃん


「うん」


コクリと、うなずく。


「それは なんで ??」


クラスメイトが、命がけで

勝ちたい理由が、知りたいみたい。


「言えない」


ケイコちゃんに、変に 気を

使わせたくはない。


「そうなんだ」


(ケイコちゃんの為に

お金を 稼ぎたいからなんて

言えないよ)


『では 第15試合を はじめたいと

思います

選手 入場 !!』


大声を出す 審判兼司会者。


教導者と、ケイコが

ゆっくりと、入場している。


『さあ 第15試合は

教導者と メイド服ケモミミ娘の

取り合わせだーっ』


ワーーー


審判兼司会者の声に、沸き立つ

観客席。


『ケモミミ娘って 言いにくくない??』


冷静に、つっこむ 審判兼司会者。


「ラッキーだな」


いきなり、変なことを言う

教導者。


「なっ

なにがよ」


ビックリする ケイコ


「こんな カワイイ メイドと

手合わせできるなんてな」


ニヤリと、笑う 教導者。


「あっ そう

なめてたら 痛い目にあうかもよ」


強がってみせる ケイコ


「ウヒョー

気が強いのもイイねぇぇ!!」


なぜか、テンションが上がる

教導者。


「ねえ キモチ悪いんだよ」


つい、正直に言ってしまう ケイコ


「えーっ

もっともっと あおってよ」


それが、気持ち良いらしい。


「いや なんで こんなのと

戦わなきゃならないのよー」


審判兼司会者を見る ケイコ

首を、かしげる 審判兼司会者。


「まあ そう言うなよ

すぐに 殺したりしないよ?」


いきなり、殺さないと宣言する

教導者。


「なんなのよ」


少し、ホッとする ケイコ


「しゃぶってしゃぶって

しゃぶりつくして」


『あのー』


審判兼司会者が、話しかける。


「なんだよ !!」


イラつく 教導者。


『観客席が 引いているので

さっさと 始めますねー』


会場内が、静まりかえっている。


「あっ

早く 始めろ」


右手で、はらう仕草をする

教導者。


『それでは 第15試合

レディーゴーッ』


ドワーーン


数時間後


パカッパカッ


馬車に、揺られる

ボクと、ミテオナーと アルパカ

それと、ケイコ


「5日ですか ??」


ケイコが、道のりの長さに驚く。


「そうなの

まず 馬車で 最寄りの村まで行って

1日目 終わり」


淡々と、話す ミテオナー


「はぁ」


気の抜けた返事をする ケイコ


「それから ジャングルを

4日歩いて 目的地の リングに

たどり着くわ」


事も無げに言う ミテオナー


「ジャングルを 4日って

地獄ですね」


渋い顔をするボク。


「あー

勝っちゃったし」


ケイコは、試合に勝ったことを

後悔しているのかも知れない。


「でも あの試合も

ある意味 すごかったね」


ケンイチロウが、思い出す。


「もお

はずいから 言わないでよ」


顔色を、真っ赤にして

手で、覆いかくす ケイコ


「いや

教導者の キモキモ攻撃の方

じゃあなくて」


試合中は、さらにキモマシマシだった。


「あれは すごかったわね

なんせ ドラの音が 鳴ったら

いきなり ズボンを 脱いだからね」


普通は、装備を軽くする以外で

試合しているのに、脱がない。


「完全に 舞台上で

ヤるつもりだったのよ

アレは」


アルパカが、冷静に分析する。


「うん 先っちょだけで

すんで 本当によかった

本当に ありがとうございます」


先っちょだけだったので

不幸中の幸いだった。

見かねたケンイチロウが

ミテオナーに、頼み込んで

魔法で、助けてあげた。


「お礼なら ケンイチロウに

言って ワタシは 介入する

つもりは サラサラなかったから」


さわやかな、笑顔の ミテオナー


「ケンイチロウくん

本当に ありがとう」


ものすごく、感謝する ケイコ


「ホント

先っちょだけで よかったよね」


つい、よろこんでしまう。

こうやって、生きているんだし。


「うん ギリギリだったわ

第16試合も すごかったよね」


話題を、変える ケイコ


「ある意味ね」


第16試合は、悪役令嬢と コケの

試合だったのだが

コケのくせに、なぜか

悪役令嬢を、全裸にして

ものすごいパワーで、大の字磔にして

高々と、持ち上げたが

審判兼司会者が、試合を一旦止めて


『その 攻撃は

よくないから 別の攻撃にして』


と、注文が入り


「なんだよ

勝てばイイんだろ 勝てばヨオ」


などと、悪態をつきまくり


「オラよっと」


結局、同じように 今度は

四つん這いの、スタイルで

高く、持ち上げた時点で

レフェリーストップとなり


『勝者 悪役令嬢 !!』


と、審判兼司会者が 勝手に

判定したので、観客席では

賛否両論の、殴り合いが

始まって、みんな 賭けているから

おさまりが効かなくて

騎士団が、騎馬隊で 蹴散らし

やっと、終わったのだが

舞台上では、悪役令嬢が

とんでもない状態だった。


「あの 悪役令嬢と

戦うんだよね ワタシ・・・」


苦笑いする ケイコ


「大丈夫

また 勝たせてあげるから」


魔法を使って、手助けすると言う

ミテオナー


「なんだか かわいそうで

痛くしないで あげて下さい」


対戦相手のことを、気遣う ケイコ


「やさしいのね」


肩を、すくめる ミテオナー


「いえ

多少 同情したっていうか」


妙な、仲間意識になる ケイコ


「ダメよ」


キッパリ言う ミテオナー


「えっ ??」


目を、丸くする ケイコ


「それは 勝負に おいて

命取りになるから」


相手を、見下したり 同情などは

試合で、しっぺ返しを喰らう。


「・・・はい」


反省する ケイコ

少なくとも、あの女には

勝てると、一瞬 思ってしまっていた。

あの時も、ケンイチロウと

一番、仲がイイのは自分だと

思っていた、ケイコだったが

ケンイチロウが、告白したのは

同級生の、ナコだった。


「大丈夫

ケンイチロウから 告白されたら

断っておくから

ケイコちゃんは すぐ

告白すればイイよ」


「ありがとう ナコちゃん」


「イイのよ

親友でしょ あたしらって」


そうして、手筈通りに

告白を、断ってくれた ナコ


「今度は ワタシの番だ

ケンイチロウくんに 告らなきゃ」


気合いは、十分だったが

自信がない。

ナコちゃんのように

巨乳でもないし。


「あっ

帰って 行っちゃう

待って」


カサも、持たずに ケンイチロウを

追いかける ケイコ


「なに あのアルパカ」


この辺では、見かけない光景に

ビックリする。


「光ってる

待って」


ケンイチロウが、光に包まれて

行くのを、追いかける ケイコ


「あーッ」


目を、さます ケイコ

馬車に、揺られている。


「どうしたの ケイコちゃん

変な夢を 見たの ??」


寝ていたケイコちゃんが、いきなり

大声を上げたから、ビックリだよ。


「んっ

この揺れで、寝ちゃってた」


ヨダレを、拭く ケイコ


「大丈夫 ?

つかれが たまっているんじゃない ??」


なんだか、こっちで 働きづめな

ケイコちゃんが、心配だ。


「うーん

そうかもね」


両手を、ゆっくり突き上げ

伸びをする ケイコ


「まだ、到着しないから

寝ていて 大丈夫だよ」


アルパカが、声をかける。


「はい すいません

どのくらいで 着きそうですか ??」


馬車は、ゆっくりとした

スピードで動いている。


「まぁ 夕方には 着くと

思うけど・・・」


ジロリと、運転手を見る ミテオナー


「はい」


納得する ケイコ


「ちょっと そうも言ってられない

かもしれないわね」


ヒヒーーン


人が、立ちふさがり 馬車を止める。


「おい おめぇら

金目のモン 置いていきな」

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