第12話

ーー12ーーーーーーーーーーーーーーーー


「やあ みんなーー

元気ーぃ ??」


元勇者が、両手を振って入場して来る。

反対側からは、召喚者。


『さあ 第12試合は

元勇者と 召喚者の

取り合わせだーっ』


煽る、審判兼司会者の 男。

そろそろ、顔色に 疲労感が

にじむ。


「元勇者さまが

なぜ このようなところに ??」


こんな、デスマッチを しなくても

勇者を リーダーとした パーティーなんて

今、すぐにでも 編成できる。


「うーん

話せば 長く なっちゃうんだけどー」


腕組みして、ウンウンと うなずく

元勇者の 男。


「では よいです」


サッと、右手を挙げて

制止する 召喚者。


「いや 聞いてよォ」


実は、タップリ話したい 元勇者。


「・・・聞きましょう」


胸襟を開き、傾聴する 召喚者。


「サンキュー

あれは 3年前のこと」


流れるように、話しはじめるので


「やっぱり 聞かないで おきます」


バキッと、話しの腰を折る 召喚者。


「まぁ そう あせんなって」


案外、うたれ強い 元勇者。


「手短に お願いします」


両手を、前に 突き出す 召喚者。


「要するに 第3試合の スライム

あいつに ジュレルを 奪われたから

この トーナメントを 利用して

取り返すのだ」


3年前に、ジュレルを取られ

取り返したい 元勇者。


「それは なんとも 遠回りな」


回りくどいやり方だと、批判的な

召喚者。


「だって 腐っても 勇者だし

盗賊みたく 強引には 奪えないでしょ?」


スライムに、負けたのも 聞こえが

悪いが、逆に 強奪したというのも

印象が、良くないと思う 元勇者。


「・・・まぁ 大して変わらないとは

思いますがね」


スライムに、負ける時点で

勇者としての、魅力があるのか問題。


「そう?

世間体で 変わらないなら 直接

やっちゃおうか ??」


少々、ノリの軽い 元勇者。


「でも

相手が スライムの場合なら

それも アリですが

今の 所有者は 転生者の 少年ですから」


さすがに、少年を路上で ボコって

奪うなんて、評判ガタ落ちどころか

お尋ね者だ。


「あー

印象が 悪化しちゃうよねー」


『あの~

そろそろ 試合を 始めないと

日没が 近いので・・・』


しびれを、切らせた 審判兼司会者。


「あぁ もう始めてくれ」


付き合いきれないとばかりに言う

召喚者。


『それでは 第12試合

レディーゴーッ』


ドワーーン


ぐぅ~~っ


ドラの音とは、違う

腹の鳴る音が、となりの女から

響いて来た。


「あれ ミテオナーさん?

おなか 鳴りましたよね ??」


赤面する ミテオナーに

聞いてみる。


「アハッ

バレちゃった」


照れ笑いする ミテオナー

かわいいな


「オヤツでも

食べに 行きましょう」


自分は、こっちのお金 持ってないけど

誘ってみる。


「そうよね

行きましょう」


さすがに、お腹が減っているようだ。


「ウチも オヤツ食べたい」


自分も、一緒に食べたいと

アピールする アルパカ。


「うん アルパカって

どんな オヤツ食べるんだっけ ??」


ちょっとした疑問を、クチにするが


「ウチ もともと人間なんだけど

忘れてない ??」


つっこみを、入れて来る アルパカ。


「ごめん

ちょっと 忘れてた」


わざと、イジワル言ってしまう。


「もうっ」


どうやら、怒っているようだ。

アルパカなので、表情に 出ないが。


「冗談だよ

ミネルアーは 何が好きなの ??」


笑いを、こらえながら 聞いてみる。


「アルパカに なる前は

クレープが 好きだったよ」


クレープが、あるんだなと

思ってしまう。


「そうなんだ

ってことは 今は なにが好きなの ??」


好みに、変化があったのかな。


「今は カヌレが好き」


一瞬、笑っているように見えた。

アルパカなのに。


「なんか 好みが変わったのかな??」


また、疑問に思う。


「カヌレが 食べやすいからでしょ」


つっこみを入れる ミテオナー


「うん」


ペコッと、する アルパカ。


「あー 前足だからか・・・」


誰かに、クレープを 持ってもらわないと

食べにくいかも。


「ワタシも クレープ好きよ」


ミテオナーが、アピールする。


「そうなんだ

じゃあ クレープ食べようよ」


話しは、決まったと思ったら


「・・・残念だけど」


表情が、暗くなる ミテオナー


「どうしたの ??」


もう、クチが クレープなんだけど


「隣街に 行かないと クレープ売って

ないの」


この街には、ないらしい。


「えっ・・・マジですか」


少し、うなだれてしまう。


「そう だから 今から

隣街まで 行くと 今日じゅうには

戻って来れないから

対戦相手の 情報を 得ることが

出来ないわ」


どっちを、取るのか

決断を、せまって来る ミテオナー


「うーん」


腕組みして、考えるけど 答えるのが

難しいな。

対戦相手も、見ておかないと。


「フルーツパフェの お店なら

すぐ 近くに あるから

そこに 行くのは どうかな ??」


見かねて、提案する アルパカ。


「それは ぜひ行きたいです」


早く言ってよと、言いかけるが

言わないでおく。


「うん 行こう」


足早に、お店へ向かう。


カンカラカン


お店の、ドアを開けると

間の抜けた音が鳴る。


「いらっしゃいませ」


ミニスカメイドの、店員さんの顔を

見るや、固まってしまう。


「ええっ ??」


友達に、顔が ソックリ。


「あっ ケンイチロウくん・・・」


やっぱり、そうだ。

姿は、大人びてしまっているが


「ケイコちゃんだよね?

なんで ここで 働いているの ??」


わけが、わからないよ。


「うん

実は ケンイチロウくんが

魔法陣に 入った時に

一緒に 入ったの」


気付かれないように、入ったみたい。


「えっ そうなんだ」


アルパカに、気をとられすぎていた。


「そうなの

それで ケモミミの 人・・・

獣人だと あとで聞いたけど

その人が いきなり 襲って来たけど」


ボクが、ジョーカーに 襲われたように

獣人に、襲われたみたい。


「うわ なにか 奪われたの ??」


彼女の全体を、見回すのだけれど

ちゃんと、生きている。


「ううん

勝っちゃったの ワタシ」


勝負に、勝ったみたい。


「マジでー??」


うれしいけど、なにか 貰えたのかな


「そう マジ

それで ワタシも ケモミミとか

付いたら かわいくなるかもって

思ってたら つい クチにしちゃってて」


無意識で、姿が変わったみたい。

もう、奇跡だよ。


「それで こんな 巨乳に

なっちゃったんだね」


ケイコちゃんなんだけど

なぜだか、ドキドキする。


「そうなの

キライになったかな ??」


大胆に、容姿が変わって

友達じゃあなくなるかもと

不安になる ケイコ


「いや

キライになんて ならないよ」


むしろ、好きになってしまった。


「そう

ウレシイ」


片足を曲げて、よろこぶ ケイコ


「それで 倒した相手は ??」


ジョーカーが、包帯姿だったのが

頭から、離れない。


「うん なんか

人間の姿に なりたかったらしくて

よろこんでいたわ」


姿が、入れ替わっているらしい。


「えーっ

交換成立じゃん」


ウインウインだったようだ。


「それがさ

トーナメントに エントリーしてる

から どうしても 出てくれって」


出ないと、立場上 困るらしい。


「おいおい

マジかぁ ??」


同じ、トーナメント・・・

しかも、殺し合いに参加して

場合によっては、あやめないと

いけないなんて、酷だ。


「ビックリだよね

第15試合に 出なきゃだし」


どうやら、コロシアムの中で

なにが、おきているのか

知らないようだ。


「それで なんで バイトしてるの ??」


話しを、そらしてみる。


「その子に この街まで来る為の

代金を 借りちゃって

とりあえず ここで 雇ってもらったの」


気絶しているうちに、奪えば

借りることもなかったのにと

一瞬、よぎったが この世界に

染まってしまったと、嫌気がさす。


「それで・・・」


お金を、なんとかしてもらおうと

ミテオナーを、見るや


「ダメよ

ワタシたちも カツカツだから」


察して、つっぱねる ミテオナー


「ですよね

でも 賞金が 手に入ったら

助けたいよ」


なんとか、3位までに入って

お金を、ゲットしないと。


「うん ありがとう

勝ち残ってね 応援してるわ」


ボクの手を、握ってくる ケイコ


「うん !!」

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