第9話 秘密のある者

ーーー9ーーーーーーーーーーーーーーーー


『おおっと

第7試合なんですけれども

鑑定士と 元領主の 対戦を

はじめようとしたのですが

元領主の方が 登場しませんね ??』


審判兼司会者の 男が キョロキョロ

している。


「どうした?

怖じけづいて 逃げちまったのかよ」


ニタァと、笑う 鑑定士の 男。


『えーっと

一部目撃情報によれば

魔法陣に 吸い込まれるのを

見たという話しですが

もう3分だけ 待ちましょうか』


ウワサだけで、確証はないので

様子見する 審判兼司会者。


「待つ必要が あんのか」


イラ立つ 鑑定士の 男。


『まぁ ちょっと待ちましょう

この後は 遅めの 昼食タイムに

なります』


すぐ、不戦勝にしてしまっては

観客に、印象が よくない。


「なんだよ

もう 昼メシは 食べたぜ」


見越して、タップリ食べた 鑑定士。


『さあ 時間です

勝者 鑑定士 !!』


不戦勝を、宣言する 審判兼司会者。


「作戦勝ちって とこかなぁ」


頬を、人差し指で 掻き

ほくそ笑む 鑑定士。

裏で、ケンイチロウを

襲撃するように、仕向けた。


『それでは 元領主から

なにを 奪いますか ??』


質問する 審判兼司会者。


「どうせ 魔法陣に 沈んで行ったヤツの

物なんて 奪えないんだろうし

後日 会えたらで イイよ」


完全に、誤算だったのは

ケンイチロウの、そばにいる女が

めちゃくちゃ強いので

元領主が、魔法陣に 吸い込まれる

のは、想定外だった。


『はい

勝者 鑑定士に 大きな拍手を』


パラパラ


審判兼司会者が、勝者を讃えるよう

言うが、まばらな拍手。


『それでは ここで

昼食タイムを はさみまーす』


ゾロゾロゾロ


一斉に、会場から 出ていく観客たち。


『急がないで

人を 押さないで くださーい』


呼びかける 審判兼司会者。


「さぁ ケンイチロウ

なにか 食べたいモノある??」


ミテオナーが、聞いて来るけど


「うーん

こっちに来て まだ なにも 食べて

ないんだよね」


いきなり、コロシアムに 連れて

来られて、なにが 食べられるのか

わからない。


「うん そうよね

ワームとか 大丈夫??」


イジワルそうに、笑う ミテオナー


「え゛

虫とか ゲテモノは イヤだ」


こうなるんじゃあないかと

薄々は、気付いていたけど

イヤなモノはイヤ。


「そうよね

ワタシも 育ちが イイから

虫は イヤなの」


ミテオナーも、ゲテはナシみたい。


「へぇ

貴族 とかですか ??」


どこかしら、高貴な雰囲気も ある。


「・・・まぁね

5歳で 修道院に追放されちゃったけど」


追放されていたとか、ツラいね。


「えっ なにか 悪いことして

あずけられたのですか ??」


よっぽど、素行が よくなかったのかな


「いいえ

双子だからよ」


吐き捨てるように言う ミテオナー


「えっ?

双子だから なにか 都合が 悪かった

のかな??」


よく、わからない。


「・・・不吉なんだそうよ」


小声で言う ミテオナー


「姉さん・・・」


さみしげに言う アルパカ


「よく わからないな」


理解しがたい。


「わからなくて イイの

それで ケンイチロウを

選んだのだから」


ニッコリ笑う ミテオナー


「えっ それだけのことで??」


どうやら、そんなことで選ばれて

連れて来られたようだ。


「他にも 理由が あるわ」


ガックリする ボクを見るや

あわてて言う ミテオナー


「他の 理由って なんなの ??」


あるのなら、聞いておきたい。


「それは また 後で話すわ

それより 昼食を 食べましょ」


また、誤魔化す ミテオナー


「うん ちゃんと 話してよ」


念押しする。


「わかってる」


ヘラヘラと、笑う ミテオナー


「さあ ホロホロ鳥の ステーキ

おまちーぃ」


立ち食いスタイルの、お店で

わかりやすいモノを、注文する。


「わぁーっ 美味しそう」


メッチャよだれ出た。


「こっちは おサイフが

わぁーっだわ」


袋が、軽量化する。


「姉さん 雑草・・・」


アルパカが、なにかを言いかける。


「ごめんね 今度 サラダを ご馳走

するから」


苦笑いする ミテオナー


「うん」


そう言うと、そそくさと出ていく

アルパカ


「あれ ミネルアー 出て行っちゃった

どうしたの ??」


目で、追うが 雑踏に消える。


「うん おいしい草を 食べに行ったわ」


言葉を、濁す ミテオナー


「そうなんだ

ミテオナーは 食パンだけでイイの ??」


食パンを、少しずつ ちぎって

クチに運ぶ ミテオナー


「うん 食欲がなくて」


ニコニコする ミテオナー


「大丈夫かな ??」


体調でも、よくないのかと 気になる。


「心配しなくて イイから

熱いうちに食べて」


早く食べるように、すすめる

ミテオナー


「うん でも ネコ舌なんだ」


熱々の料理は、すぐ食べれない。


「そうなんだ」


昼食後


『それでは これより 午後の部を

開始します

えーッ 次は 第8試合を はじめたいと

思います

選手 入場 !!』


金色の甲冑を、身にまとった騎士と

顔に、包帯を 巻いた 男。


「あっ

あいつ ジョーカーじゃないか ??」


ボクの、顔を 奪おうとした 男だ。


『さあ 第8試合は

覇王と グリードの

取り合わせだーっ』


ワーーー


「おいお前

顔は どうした ??」


意地悪そうな顔をする 覇王。


「顔は 隠してないと

女どもが 寄って来て 大変なーのよ」


テキトーなことを言う ジョーカー


「ウソをつけ

顔を 奪われたのだろう」


本当は、事情を知っている 覇王。


「なんだ 知ってんなら

聞くんじゃねーよ」


悪態をつく ジョーカー


「ハハハ

お前みたいな チンピラには

ちょうど お似合いだぞ」


半笑いの 覇王。


「ほざいてろ

お前こそ なんで こんな試合に

出てるんだ」


逆に、さし返す ジョーカー


「なぁに 趣味だよ」


肩を、すくめる 覇王。


「ほざけ

お前も 領地から 追われて

よく 覇王なんざ言える」


ズバッと、つっこむ ジョーカー


「フフフ

言いたいことは それだけかね」


どうやら、逆鱗に 触れたようだ。

ブルブルしている。


「なんだよ ??」


腕組みして、のけぞる ジョーカー


「しゃべれるうちに

しゃべっておいた方が よいぞ」


威圧感を出す 覇王。


「どういう 意味だ」


ムカッとする ジョーカー


「試合が 始まった瞬間に

お前の首が 体と お別れするからな」


シユイーン


鞘から、ダークソードを抜く 覇王。


「まがまがしい 剣だな」


黒い、オーラを 纏った剣。


「やはり お前でも 気付くか」


完全に、見下したことを言う 覇王。


「ああ ただ者じゃあねえ

剣だけはな」


悪態を、つき続ける ジョーカー


「ほざいてろ」


鼻で、笑う 覇王。


『バチバチきてますね

それでは 第8試合

レディーゴーッ』


ドワーーーン


響きわたる ドラ。


「でゃーーッ」


素早く、振り下ろされる 剣。

地面が、凹むほどの パワーだが


「ほいっと」


振り下ろしたところには

ジョーカーの 姿はなく

なぜか、気が付くと 剣の上に

立っている。


「なぬ」


剣が、全く 動かせなくて あせる 覇王。


ビシビシ

バシバシ


次々と、急所に拳を 撃ち込む

ジョーカー


「くっ・・・」


バターン


あっけなく、倒れる 覇王。

スタミナ勝負を、避けた ジョーカー


『勝負あり !!

勝者 グリード ジョーカー』


ざわ ざわ ざわ


会場内は、なにが起きたのか

理解が、追い付いてない。


『さあ 覇王に 勝ちましたが

なにを 奪いますか ??』


「それは 後日で」



ーー10ーーーーーーーーーーーーーーーー


『それでは 第9試合を はじめたいと

思います

選手 入場 !!』


ユニコーンの、角から 作られた弓を

持った 聖弓使いと オークが

入場して来る。


『さあ 第9試合は

聖弓使いと オークの

取り合わせだーッ』


ブーーーッ


オークの、入場に対して 強烈な

ブーイングが、巻き起こる。


「オレは この弓で

何万と モンスターを狩ってきた!」


いきなり、自慢話を ぶちかます

聖弓使いの 男。


「は ??」


オークは、いきなり 話しかけてきた 男に

嫌悪感を、感じている。


「特に 多かったのは オークだ」


狩りの、内容を 話しはじめる 男。


「オークが 弓矢ごときで 死ぬかよ」


半笑いの オーク。


「はぁ?

死ぬに 決まってんだろ」


見下すように言う 聖弓使い。


「ヘッドショットでもしなければ

やられることは 無いわ」


オークの中には、メットガードを

付けないのも、少数いるので

万が一、頭の 当たりどころにより

よれば、即死もあり得る。


「その ヘッドショットだよ !

メットガードの有無によらず」


いくら、頭部の防御力を 高めても

撃ち抜ける。


「なんだと」


驚愕する オーク。


「オークが 人間に腰を振って

いるところを ズバーンと

一発で 殺るんだ」


弓を、持たない状態で ジェスチャーで

対戦相手を、射ぬく 聖弓使い。


「なにぃ」


だんだん、腹が立ってきた オーク。


「この 弓で放つ矢は ちゃんと頭にヒット

すれば 血を 流すことなく

首から上が 消えてなくなる」


弓を、手に持ち 手のひらで

転がすように、扱う 聖弓使い。


「・・・そうか お前が」


そんな、首から上が 消失した

オークの、死骸を たくさん見た。


「気持ちイイぜ

いくつもの村を 救ってきた

超 気持ちイイ」


オークを、倒すと イイことが

あるらしい。


「ゆるさねぇぞ」


怒りで、ふるえだす オーク。


「お前も そいつらの仲間かよ

ヤツら 首から上が なくなっても

腰を 振り続けるんだぜ

ホント どうしようもないぜ」


思い出し笑いをする 聖弓使い。


「・・・」


黙りこむ オーク。


「お前にも 見せてやりてえぜ」


オークに、指差す 聖弓使い。


『それでは 第9試合

レディーゴーッ』


ドワーーン


「ウオーーッ」


手に斧を持ち、突進する オーク。


「いきり立っちゃって」


オークの、猛進を 跳躍して かわす

聖弓使い。

ユニコーンの角で、出来た弓は軽い。


「オリヤオリヤ」


左右に、刈り込むように 手斧を

振り続ける オーク。


「そんな 攻撃 当たるかよ」


ヒョイヒョイかわす 聖弓使い。


「それなら これでどうだ」


斧を、腰から もう1振り取り出し

手斧二刀流となる オーク。


「そんな 無駄なモン

どんだけ スタミナが あるんだよ」


体力モンスタに、辟易する 聖弓使い。


「ほざけ

ウオーーー」


少々、モーションが 増えただけで

攻撃は、ワンパターンだ。


「それじゃあ 当たらないって」


ユニコーンの、弓の効果で

素早さが、アップしているので

なにも、持っていない状態より

スピーディーに、動ける。


「仲間の カタキーッ」


目を、血走らせ 手斧を 振り続ける

オーク。


「村を 荒らしていた連中と

同じなら 躊躇は いらないな」


ピョンと跳ねて、オークと距離をとり

矢を、地面へと 放つ 聖弓使い。


「どこを 狙っている」


弓矢の、軌道を見て あざ笑う オーク。


「こうするのさ」


地面に、刺さった矢に 飛び乗り

ハイジャンプする 聖弓使い。


「なんだ !?」


つい、目で 聖弓使いを 追う オーク。


「狙い撃つぜ

キリング アロー」


一瞬の、眩き光を放つ。


「・・・」


次の、瞬間には オークの頭部は

イリュージョンで、消えたかの如く

なくなって、不思議と 血が

吹き出して、いない。

首から上が、ないのに

立ったままだ。


『んご・・・

勝負あり

勝者 聖弓使い グレゴリウス』


一瞬の、出来事で 言葉に 詰まる

審判兼司会者の 男。


ワーーーー


憎き、オークを 華麗に倒したので

大歓声が、巻き起こる。


『さあ オークに 勝ちましたが

なにを 奪いますか ??』


とりあえず、聞く 審判兼司会者。


「それでは オークの持っている

斧を いただくとしよう」


立っていた、オークから

手斧が、ポロリと抜け 地面に刺さる。


『斧ですか ??』


あんなモノを、欲しがるなんて

珍しいと思う 審判兼司会者。


「これを売って 村々の

子供たちに オモチャを

与える資金に」


お金に、変えるらしい。


ワーーー


『素晴らしいですね

それでは 感想を いただきたいのですが

どうでした ??』


インタビューする 審判兼司会者。


「オークの駆除は オレに

おまかせ !!」


感想ではなく、宣伝する 聖弓使い。


ワーーーー


盛り上がる、観客たち。


『たのもしいですよね

おめでとうございます』


賛辞を、送る 審判兼司会者。


「ではッ」


風のように、立ち去る 聖弓使い。


『それでは 第10試合を はじめたいと

思います

選手 入場 !!』


セクシーな、魔女と 氷の賢者が

ゆっくりと、歩いて リングインする。


『さあ 第10試合は

魔女と 氷の賢者との

取り合わせだーッ』


「ずいぶんと 露出している 魔女

だな」


なめるように、見回す 氷の賢者。


「あら お気にめしまして ??」


右手を、頭の後ろに回し

ポーズを、きめる 魔女。


「フフフ

悩殺を 狙っているなら

相手が 悪かったな」


さすがに、賢者に対して 効果は薄い。


「どうだかね?

案外 体の 一部は 反応してたりして」


氷の賢者の、股間を見る 魔女。


「見せて やってもイイが

ここでは 出さないぞ」


あくまでも、挑発には乗らない

氷の賢者。


「あーら 残念

それなら あなたを 倒して

披露させて もらうわね」


公衆の面前で、股間を晒すなど

と、ヤバいことを言う 魔女。


「ほう

出来るものなら や っ て み な っ」


絶対負けない自信を見せる

氷の賢者。


「それで 挑発の つもりかしら ??」


あきれる 魔女。


『ヒートアップしてまいりましたーッ

それでは 第10試合

レディーゴーッ』


ドワーーン


「はっ」


魔女が、右手を前に出すと 詠唱なしで

魔法陣が、空中に出現し

氷の矢が、飛んで行く。


「でゃっ」


右手を、地面の右から左に サッと

かざして、氷の壁を形成することで

盾にする 氷の賢者。


「氷は やっぱ 効かない 属性か」


初手から、属性を 試してみた 魔女。

氷の賢者と言いながら、それは

ハッタリで、弱い可能性を

探ってみた。


「もちろん そうだ」


そんな、デゴイは 使ってないと

胸を張る 氷の賢者。


「それなら 炎で 焼き尽くすのみ」


火炎系の魔法で、倒すことにする

魔女だが


「さあ 出来るかな ??」


妙に、余裕綽々な態度になる

氷の賢者。


「やってやるわ」


右手を、かざして 魔法陣を出す 魔女。


「その服

炎への耐性が 弱いと見た」


ズバリ指摘する 氷の賢者。


「・・・その通りよ

そのかわり 氷属性の攻撃を

軽減するわ」


対戦相手の、対策を 怠らない 魔女。


「ほう

全裸になるのは お前の方だな」


ニッコリ笑う 氷の賢者。


「うるさいわ 勝負は これからよ」


横に、移動しながら 炎を繰り出す 魔女。


ゴォーーーッ


「ふん

せいぜい 観客を 楽しませてやれよ」


氷の壁で、防ぐ 氷の賢者。


「あんたが ぶったおれた方が

観客が 沸くわよ」


次々と、炎を出す 魔女。


「それは お前だよ」


氷の壁を、いくつも出して

魔女を、閉じ込める 氷の賢者。


「クチの減らないヤツだな」


肩を、すくめる 魔女。


「お前がな」


魔女の、四方を氷で脱出出来ない

ようにして、天井も氷で作る

氷の賢者だが


「はッ」


衝撃波が、起きて 氷が 四散する。


「あんたの能力って

こんなモノなんだ ??」


両手を、横に広げて 大股開きで立っている

魔女。


「なんだと」


多少、驚く 氷の賢者。


「もっと すごいものが見れると

思ったけど たいしたことがないのね」


肩に乗った、氷の粒を 手で 払う 魔女。


「それなら これはどうかな」


賢者が、右手をかざすと 巨大な氷柱が

横向きに 生えていき 魔女へと 突進

する。


「フン こんなもの」


ボゴーン


爆散して、霧になる。


「かかったな」


魔女の視界を、奪うための作戦だ。


「なにっ」


魔女の、頭上に 巨大な氷の塊が

形成されていて、一気に落下する。


バキーン


魔女は、気付くのが 一瞬 遅れて

負傷した頭部から、出血する。


「くぅーーーぁーーーー」


こめかみを、流れ落ちる液体を

右手でさわり、赤いのを 確認する。


「さきほどまでの 威勢のよさは

どうしたのだ ??」


肩を、上下に細かく揺らす 氷の賢者。


「この代償は 高くつくわよ」


右手に付いた血を、軽く舐める 魔女。


「ほう 楽しみだな」

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