第5話 放電竜と咆哮
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「いでよ
われの命令に 従え 放電竜 ライデン」
ピカッ
スライムが、掲げている
ジュレルが、一瞬 フラッシュし
雲っていた空が、渦を巻き
その中心の雲が、スッと消え去り
禍々しい、竜が あらわれる。
ゴロゴロ・・・
「おいおいおい
ドラゴンじゃねえか !!」
一斉に、観客が 騒ぎはじめる。
「ヒッ」
その場で、気絶する者や
出口に、殺到する者らで
騒然とする コロシアム。
『みなさん
落ち着いて 行動してくださーい』
騒ぎを、鎮静化させようと
声を上げる 審判兼司会者だが
「これが 落ち着いて いられるかよ」
怒号を、あげる 観客たち。
「えっ スライムが ドラゴンを
召喚したって 冗談でしょ??」
最前列で、見ている 双子には
目の前の、現実を 受け止め
きれない。
普通は、絶対に起きない事態が
起きていることに、驚愕する。
「姉さん ドラゴンの周囲だけ
アンチマジックエリアみたい」
冷静に、判断する アルパカ。
「マズいわね
ケンイチロウが ドラゴンに
食べられちゃうかも・・・」
最悪の、事態を 想定する
ミテオナー
「姉さん 縁起でもないこと
言わないでよ」
鼻息が、荒くなる アルパカ。
「ごめんなさい
つい 興奮しちゃって」
苦笑いする ミテオナー
「なに コレ・・・」
羽ばたいていた竜が、ドシリと
舞台上に、着陸して 顔をボクに
近付けて来る。
「グググ・・・」
鼻息だけで、吹き飛ばされそう。
「あー 召喚 しんどいわぁ
ほいなら あとは よろしゅう」
グデーっと、なる スライム。
「グゥアーーッ」
クチを、大きく開ける ドラゴン。
丸飲みされそうな恐怖感。
「いーやー」
両手を、ほっぺたに くっつけて
思わず、叫んでしまう。
「ちょっと
ホンマ静かにしいや
脳天が ブルブルなんねや」
どうも、やたらと 敏感な
スライム。
「そうだわ
スライムの 弱点」
つまり、人間のように 骨や筋肉や
筋などで、複雑な構造をして
いるワケではなく、単一化されて
おまけに、プルプルした物で
出来ているが故に、特定の周波数で
瓦解してしまうのだ。
「そうね ミネルアー」
二人は、ドラゴンより
後ろの、スライムを倒す
作戦を、考え出したのだが
「でも ケンイチロウに
どうやって 伝えようか??」
ドラゴンの、まわりの
アンチマジックエリアのせいで
テレパシーも、少し 難しい
かも知れない。
「おーい
ケンイチローーッ」
とりあえず、大声を出す アルパカ。
「ダメね
なにか イイ方法で 勝ち方を
教えなきゃあ 死んじゃう」
アルパカの、背中に立ち 両手を
振って、アピールする。
「なんだろ
ジェスチャーで なにか言ってる」
身振り手振りで、危機を伝える。
「バツ・・・
もしかして 魔法で ドラゴンが
倒せないって 言ってるのかな??」
それが、ホントなら ヤバいぞ。
「あー
つまり ドラゴンは 倒せないけど
スライムは ミテオナーが
倒すから なるほど
って 聞いた話しと だいぶ
違うんですけどォ」
全然、意味合いが違うけど
大丈夫なのか。
ビリビリビリ
首を、持ち上げた ドラゴンが
電気の玉みたいなのを
クチの前で、作っている。
あきらかに、ヤバい。
逃げなきゃ。
ドガンッ
地面に、2メートルほどの
大穴が、あいて 轟音が 響く。
「ヒィッ
めっちゃ ビリビリきたんだけど
これ 死ぬヤツじゃね??」
直撃しなくても、足元に
電流を、感じる。
とにかく、走って逃げないと。
「さあさあ
どこまで 逃げきれるんか
見ものやぁー」
どうやら、この スライムは 電気の
耐性を、身に付けているようだ。
めちゃくちゃ、厄介だ。
「ヒヤー」
とにかく、ドラゴンの首の真下には
入らないように、逃げる。
「もっと 走らんと
すぐ 真っ黒炭やで」
高笑いする スライム。
完全に、余裕綽々で 高みの見物
と言った状態で、大量に消費した
マジックポイントを、徐々に
回復している最中だ。
つまり、スライムからの
攻撃は、考えなくて よくなった。
ビリビリビリ
「ヒァ」
不意に、ドラゴンの首が横に
動き、頭上まで来たので
あわてて避ける。
ドガッ・・・
チャージ中は、ドラゴンの
モーションが、止まると
認識していたが
思い違いだったようだ。
これじゃあ、どこにも
逃げ場が無いじゃん。
「ちょっと 早く助けてよ」
もう、走り疲れてきた。
スライムを、攻撃しやすいように
ドラゴンの、動きを読んで
移動させたのに、一向に
攻撃しないな。
「なに言うとんねん
お前を 助けられるヤツなんて
このリングに おるわけないやん」
それは、そうなんだけど
あー、信用して死にそうだ。
地面も、ボコボコだし。
もう、ダメだ。
「ヒーーーー」
もう、変な声が出ても 恥ずかしく
とも、なんともないから
思い切り出す。
「やめえちゅうねん」
ぶち切れているけど
案の定、スライムの攻撃は来ない。
「ヒーーーー」
「あっ
わッ ホンマか お前」
激しく、波打つ スライム。
「ヒーーーー」
「ほんで??」
変な音をたてて、風船のように
膨らむ スライム。
「ヒーーーーアアアッ」
「うごごッ
ウギュ」
クチが、プルップルしているが
もう、しゃべれない スライム。
バーーーン
爆発音を出して、スライムが
消失する。
「やったわ
ケンイチロウ 音波攻撃を
出来たのね」
観客席から、手を振る ミテオナー
「すごーいね」
ニヤニヤする アルパカ
「えっ ドラゴンが・・・」
石の中へと、吸い込まれるように
入っていく ドラゴン。
「どうなっちゃったのコレ??」
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『勝負あり !!
勝者
転生者 ケン❕❕イチ❕❕ロウ❕❕』
ワーーーー
割れんばかりの、大歓声に
包まれる、コロシアム内。
「えっ
ボク 勝っちゃったの ??」
どうも、実感は 全く無いのだが
無意識に、勝ってしまったらしい
ことに、逆に ビックリするよ。
『さあ
対戦相手 スライムから
何を 奪いますか ??』
審判兼司会者から、いきなり
質問が飛ぶ。
「えっ ??」
一瞬、なにを言っているのか
わからない。
『対戦相手から・・・
ああ 転生者の方だから 説明が
必要でしたね
ウッカリしてましたよ』
頭を、掻く 審判兼司会者の 男。
「はぁ・・・ ??」
なにか、説明してくれるようだ。
ステージで、多少 恥ずかしい。
『あのですね
この小国では 勝者は 敗者の
なにかを ゲット出来るんです
それで スライムから 何を
ゲットしたいですか ??』
めちゃくちゃ簡単に、説明して
くれる 審判兼司会者。
「わっ
そういうシステムなんだ
それなら・・・」
「ちょ
ちょちょ やめなさい
今 言うんじゃない !!」
観客席から、ミテオナーが
必死に、なにか訴えているが
気がつかない。
「スライムが 持っていた
ジュレルが 欲しいです !」
あれさえ、手に入れれば
百人力だ。
「あぁぁ
言っちゃった」
ガクッと、肩を落とす 双子。
・・・
ワーーーー
一瞬の、静寂の後。
大歓声に、包まれる。
「おい 面白れえ
あの 転生者の ガキが
明日の 太陽を おがめるか
賭けようぜぇ」
観客席では、さっそく賭けの
対象に、なってしまう。
「今夜 あたり寝静まった時には
死んでらぁ」
大笑いする、大柄な 男。
「いーや
夕食に タップリ毒薬が
仕込まれるだろうよ」
ケケケと笑う ガリガリ男。
「俺は、このコロシアムを
出たとこで 死ぬと思うぜ」
剣士風の男は、腰の剣を抜き
空へ、突き上げる。
「なーんだよォ
それじゃあ レースに なんねえぜ」
大笑いし合う、男ども。
「いえてら
オッズが 付きゃしねえわ」
腹を、かかえ笑う。
「ガハハハ おい見ろよ
ステージを下りるのを 待ってる
連中も いるぜ」
バックヤードに、猛者どもが
集結して、てぐすねを引いている。
「おう
押すな押すなの 大行列だぜ」
祝福と、見せかけ 首を
はねられることもある。
「こいつは
すぐ死ぬな 確実に すぐ死ぬ」
笑い転げている。
「よし それなら わたしは
死なないに 賭けるぞ」
青年が、袋ごと お金を置く。
「おい アーサー 正気か ??」
笑っていた連中が、ピタリと
静止する。
「シリアース」
「どうかしてるぜ
あんた 前から イカれてる」
大柄な男が、つっこむが
「賭けは 成立だな
逃げるなよ ??」
自信があるようだ。
「逃げるったって
この 小国の どこに 逃げ場が
あんだよ
笑わせんな」
周囲は、魔王の国で 行く場所
なんてない。
「いえてらぁ」
また、笑いだす 男ども。
「まぁ そうだよな」
フフッと、笑う アーサー
『いやぁ
息を飲むような バトルでした
感想は いかがですか ??』
審判兼司会者の男が、ケンイチロウに
インタビューする。
「とにかく ビックリの連続で
今でも 勝てたのが 不思議です
胸が 詰まる思いです」
なぜ、勝てたのか 本人が
一番、わかっていない。
『まーた ご謙遜を
勝者に 盛大な拍手をーッ』
ワーーー
『では 第4試合を はじめたいと
思います
選手 入場 !!』
舞台を下りるボクの横を
直立して歩く、姿はウサギ 顔は人間と
タバコをくわえた、金髪の錬金術師が
肩で、風を切るように 歩いて登場する。
『さあ 第4試合は
精霊使いウサギと 錬金術師の
取り合わせだーッ』
ワーーー
選手入場口まで、歩くと
「さあ
控え室まで どうぞ」
「はい」
係員が、誘導してくれるのだが
「よう 今夜 飲みに行かないか
おごるぜ」
屈強な男が、話しかけて来る。
「いや
こいつ 掘るつもりだろ
オレと 飲み会やろうず」
別の男も、声をかけて来る。
「なに言ってやがる
俺が 先だ コノヤロー」
バカにされたと思い
拳で、となりの男を殴る 男。
「痛ったー
ねっ こんなヤツなんす」
殴られても、タダでは起きない。
「あー ちょっと ごめんなさいよ」
男たちの集団を、割るように
ミテオナーが、助けに来る。
「なんだ ねーちゃん
誘惑かーっ」
ミテオナーを、一瞥して
バカにしたようなことを言う 男。
「ワタシのツレなの
悪く 思わないでね」
バレないように、魔法を使う
ミテオナー
ボクの、手を引いて
揉みくちゃに、なりながら
男どもの集団を抜ける。
「うぐっっっっっ
んーーーーーー」
ミテオナーの、魔法で クチが
徐々に、閉じていく 男ども。
「あの人たち 大丈夫かな ??」
祝福に、来てくれた連中を
気遣う。
「あんたね !!
他人の 心配より 自分の
心配を なさい !!」
すごい、剣幕で怒る ミテオナー
「えぇぇ」
誉めてもらえると、思ったのに
そりゃあないよ。
「普通はね
舞台上で 相手の何が欲しいって
言わないものよ
なぜだか わかる ??」
駆け寄って来た、アルパカが
困惑しているボクに、問いかける。
「えっ
あっ もしかして 奪いに
来るか・・・ら」
ボクは、舞い上がってしまっていた。
冷静に、考えれば わかるのに。
「そう
ウチらも 説明が 足りなかったわ」
姉の方を、見る アルパカ。
「うん そうよね
ワタシたちの 責任でも あるわね」
アルパカを見る ミテオナー
「しっかり 守らないと」
「うん しっかり 守る」
「「とりあえず 観客席」」
「が 安全だよね」
「そう ここは 暗殺に
もってこいだから」
「「つかれ」」
「てると思うけれど
移動しましょ」
双子の姉妹が、説明してくれる。
「うん わかったよ
周りの人の 視線が 痛い」
ものすごい殺気を、ぶつけて来る
男ども。
さすがに、危険性を感じて
観客席へと、移動する。
ドガーン
バキ
「クッ
やるじゃねえか」
攻撃を、受け流す 錬金術師。
舞台上では、どこまでが
舞台か、わからないほど
変形している。
「あれを 耐えるんだ?」
ニヤリと笑う、精霊使いのウサギ。
確実に、仕留めたと思ったら
案外、固かったようだ。
「あたりまえだろォ」
地面に、両手をあてる 錬金術師。
ゴゴゴゴゴゴ
轟音を、たてて 隆起する舞台。
「とうッ」
二人とも、飛び乗る。
「はッはッ ヤーーッ」
精霊の、パワーを込めた拳と蹴りを
錬金術師に、あびせる。
「なに コレ
地面が ビルみたいに」
二人を、乗せたまま 隆起し続け
摩天楼のようになる。
どんどん、豆つぶのように
小さく見える。
「これまた 厳しいわね」
見上げる ミテオナー
「そう だよね」
アルパカも、見上げている。
「どこで 戦っているのか
高すぎて 見えないね」
雲を、突き抜けて しまっている。
次は、このどちらか勝者と
対戦しなくちゃいけない。
「錬金術師は 高山病で
もう長くは もたないわね」
冷静に、分析する ミテオナー
「へぇーっ
全然 わかんないや」
『勝負あり !!
勝者 精霊使いウサギ 華美 !!』
うっ?
ワー
パチパチパチ
状況が、把握できない観客が
パラパラと、まばらに拍手する。
カービ ! カービ ! !
『おーっと
華美コールが 巻き起こっているぞ』
「あっ
跳ねてる ホラ そこ」
ピョンピョンと、跳ねて降りて来る。
「うん やっと降りて来たわね」
『さあ 錬金術師に 勝ちましたが
なにを 奪いますか ??』
審判兼司会者の 男が、聞くが
「それは 後日で」
お決まりの、フレーズだ。
『はい
勝利した 感想を いただけますか ??』
「強かったですね
舞台上も こんな地形になっちゃったし」
荒れ放題の、舞台。
『いやあ 見ものでした』
次々と、地面が盛り上がって
すごい試合だった。
「すいません
なおすの大変ですよね ??」
ほぼ、暴走した錬金術師のせいだが
謝る 精霊使いの ウサギ。
『あぇ
奴隷を使うので すぐなおします
お気になさらず 7日後も
お待ち いたしております』
「あっ はい」
『盛大な 拍手をーッ』
ワーーー
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