第18話「かわいい生き物」

「――ほら、寝るわよ……?」


 あの後、美奈が戻ってきたことで俺は風呂に逃げるように行ったのだけど、帰ってきたら既に美奈とねここはいなかった。

 その代わり、パジャマ姿で部屋にいた白羽が、ベッドに座って待っていたのだ。


 ちなみに、おばさんに挨拶とお礼を言いに行ったら、やっぱり他人行儀だった。

 ここはもう、慣れてもらうまでは仕方がないだろう。


「本当にいいのか……?」

「部屋が他にないんだから、仕方ないでしょ……。美奈ちゃんと一緒に寝させるわけにはいかないんだし……」


 まぁ、白羽からしたら思うところはあるだろうな。


 何より、あの美奈が俺と一緒に寝るわけがない。

 絶対『襲われる……!』とか言って、暴れるだろう。

 月夜の一件で、更に俺に対する性的疑惑は強くなっているようだし。


「じゃあ、お言葉に甘えるが……布団って他にないのか?」


 このままだと、俺は何もなしに床に寝ることになるんだが……。


「布団は、ここにあるでしょ……?」


 白羽は、顔を赤くしたまま自分のベッドを指さす。

 まさか……。


「一緒に寝るのか……!?」

「それしかないでしょ……」


 指を合わせてモジモジとしながら、白羽は小さく頷く。

 いや、しかしこれはさすがに……。


「変な遠慮とか、いらないから……。一緒の部屋で暮らす以上は、こういうのも受け入れていかないと……」

「でも……」

「いいから、早く……!」

「うおっ!?」


 躊躇ちゅうちょしていると、グイッと腕を引っ張られてしまった。

 不意を突かれたことで、俺はそのままベッドに引きずり込まれてしまう。


「白羽……」

「これくらい、平気よ……。昔はよく一緒に寝てたんだし……」


 それは、保育園の頃の話になるんだが……。

 白羽の顔は真っ赤になっているし、無理をしているのは明らかだろう。


 だけど――女の子が、ここまでしてくれたんだ。

 異世界に行く前の、昔の俺ならヘタレたかもしれないが、いろいろと見てきた俺はもうヘタレたりしない。


「白羽、ありがとう」

「――っ!? ななな、なにをして……!?」


 ギュッと抱きしめると、白羽は真っ赤にした顔のまま、バタバタと両手両足を振って暴れ出した。

 テンパっているようだ。


「ごめん、嫌だった?」

「あっ……」


 優しく声をかけると、白羽はピタッと動きを止め、潤った瞳で俺の目を見てきた。

 一瞬だけ、見つめ合う形になる。


「い、嫌じゃない……」


 しかし、それが恥ずかしかったのか、それとも俺が聞いたことが恥ずかしかったのか、白羽は照れたように顔を背けてしまった。


 なんだ、このかわいい生き物は。



=======================

【あとがき】


読んで頂き、ありがとうございます(#^^#)


話が面白い、キャラがかわいいと思って頂けましたら、

作品フォローや評価(☆)をして頂けると嬉しいです(≧◇≦)


これからも是非、楽しんで頂けますと幸いです♪

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る