第17話「一緒の部屋で」

「――うぅ……見られた……貧相な体だって思われた……」


 現在、白羽はベッドの上で女の子座りをして、涙目で枕をギュッと抱きしめていた。

 その正面に俺は座り、正座をしている。


 もちろん、させられているわけではない。

 なんか雰囲気的に、正座しないと駄目なのかなぁという感じで、しているのだ。


「和輝って、が悪すぎない……?」


 離れたところで美奈が痛いところを突いてくるが、言い返す言葉はない。

 自分でも間が悪いと思うのだから……。


「別に貧相な体だなんて、思ってないぞ……?」


 とりあえず、白羽が気にしているようなので、フォローをしてみた。

 しかし、美奈が『うわぁ……』という声を漏らす。

 まるで、『こいつやらかした……!』と言いたげだ。


 なぜだ……。


「絶対、嘘……! だって、まな板だもん……!」

「い、いやいや、誰もそんなこと気にしてないって……!」


 なぜか白羽が頭から布団を被ったので、俺は慌ててフォローをする。

 しかし、白羽は出てきてくれなかった。


 別に、胸の大きさなんて気にしないんだが……。


「ねぇ、ねここ。私たちはいったい、何を見せられてるの……?」

「にゃ~、にゃにゃ」

「ほんと、いちゃいちゃなんて見たくないよね~」

 

 そして美奈は美奈で、ちょっと不機嫌だ。

 これのどこが、いちゃいちゃしていると言うんだろうか?


 その後は、いろいろと言葉を投げかけて、なんとか白羽を宥めた。


「――それで、おばさんはいいって言ってくれたのか?」


 白羽が落ち着いたことで、俺は肝心なことを聞いてみる。

 ここで駄目なら、俺と美奈は宿無しだ。

 こちらの世界だと、お金をいっさい持っていないし。


 ちなみに美奈は、既に白羽に断りを入れて、お風呂に入っている。

 あぁ見えてあいつは綺麗好きで、お風呂が大好きらしいから、先に入るよう言ってやると喜んでいた。


 まぁ、話の邪魔になるから風呂に行かせただけなんだが。

 もちろん、ねここはここに残らせている。


「うん、説得に時間かかったけど、なんとかわかってくれたよ」


 それは無理もないよな。

 どう考えたって俺が生きているはずがないのに、こんなふうにいきなり現れたら、そりゃあお化けにしか思えない。

 白羽の場合は、俺に負い目があったから現実から目を逸らす感じで、俺が生きていたとあっさり信じただけだろう。


「ありがとう。部屋はどうしたらいいんだ?」

「え、えっと、それは……」


 部屋について聞くと、急に白羽は俯いて、指を合わせながらモジモジとし始めた。

 なんだろう、顔が赤いけど、お風呂の熱は顔から引いてたよな……? 

 なんでまた赤くなってるんだ……?


 そう思いながら観察していると、白羽はゆっくりと口を開いた。


「その……私と美奈ちゃんってさ、今日初めて会ったじゃない……?」

「ん? そうだな……?」


 まぁ一応、俺も二年ぶりなんだが。


「やっぱり、気まずいっていうか、気を遣わないといけないところがあると思うのよ……」

「別に気にせず、駄目なことや嫌なことは言っていいぞ? もし美奈が反発するようなら、俺が叱るし」


 そして、夜の山に放置して反省させる。

 まぁさすがに、それは美奈の態度次第だが。


「そういう問題じゃないっていうか、やっぱり気を抜ける空間はほしいわけで……」

「あぁ、美奈と一緒の部屋になりたくないのか。別にいいんじゃないか?」


 ――そう言ってみて思ったが、白羽の家だと、大きめな部屋は五つしかない。

 一階はリビングとおじさんおばさんの寝室、そして食事の部屋。

 二階は美奈の部屋ともう一つ空き部屋があるだけだ。

 後は倉庫だったり、おじさんの書斎があったりするので、布団をひけるようなスペースの部屋がない。


 つまり、どういうことかというと――。


「俺の部屋、ない……?」

「まぁ、そうなるわね……」


 ということらしい。

 いや、ちょっと待ってくれ。


「おじさんって、まだ単身赴任か?」

「うん……でも、書斎って狭いから、布団引けない……」


 確かに、それはそうだ。

 ましてや、おばさんと一緒に寝るなどできない。

 おじさんにキレられるし、おばさんも嫌だろう。

 てか、普通に気まずい。


「リビング……」

「それは駄目……寝る場所じゃないし……」


 いや、確かに寝る場所ではないのかもしれないが、この場合は許してもらえないのだろうか……?

 しかし、居候の身としては、強く出られない。


「俺はどうすればいいんだ……」

「私の部屋を、一緒に使えばいいと思う……」

「えっ?」


 一瞬聞き間違いかと思い、俺は白羽に尋ねる。

 俯いてるままなので、うまく聞き取れなかっただけかもしれない。


 しかし――。


「だから、私と一緒の部屋になってもらう……! それが一番、丸く収まるでしょ……!」


 顔を上げた白羽は、真っ赤にした顔で一生懸命言ってきた。

 いっぱいいっぱいという感じなので、冗談ではなく本気で言っているというのが伝わってくる。

 というか、白羽はあまり冗談を言わないタイプだ。


 とはいえ、いくら幼馴染でもいいのか……?




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【あとがき】


読んで頂き、ありがとうございます(*´▽`*)


話が面白い、キャラがかわいいと思って頂けましたら、

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これからも是非、楽しんで頂けますと幸いです♪

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