第12話 社会人1年目③

入社して4ヶ月後、待ちに待った事務仕事がスタートした。

やはり座り仕事だと体調も良く、私は明るい顔で毎日元気に出社していた。


…しかし、その様子が研修担当に良く思われなかった。

そりゃあ傍から見たら立ち仕事だと毎日体調が悪いと言っていたくせに、事務仕事になった途端に体調が良くなって元気に出社しているわがままなやつとでも思われたのだろう。


だんだんとその研修担当が周りの社員に私の悪口を言うようになった。

先輩社員からも目をつけられ、無視されたり、後ろから「邪魔!」「使えないくせにぼーっとしてんなよ!」と言われたりした。

研修担当からも呼び出されて大声で怒鳴られたりしたので、私のメンタルはあっという間に地に落ちた。


同期にも私の悪口を吹き込んだようで、同期会が開催されると「あいつにお前の悪口めちゃくちゃ言われたぞ?大丈夫か?」「私も言われた!本当に最低!」などの話で持ち切りになる程だった。(同期の子たちだけはいい人ばかりだったのが唯一の救い…)


SLEはかなりメンタルにも影響されるので、その頃の血液検査の結果はめちゃくちゃだった。


また、髪の毛を少し触るとフケが大量に落ち、色が濃い服は着れなくなった。(皮膚トラブルも持病の悪化が原因らしい)

会社に行こうとすると動悸やめまいが起こり、泣きながら出社していた。


ある日、私のことが大嫌いらしい女性社員(鬱陶しいワンレン女だったのでワンレンと呼ぶ)がおり、研修担当に「その人に今までの非礼を謝りに行け」と呼び出されたときのこと。

(今思い返しても意味がわからない命令だ…)


いつものごとく怒鳴られている時、私の中の何かがパチンと弾けた。


多分、研修担当は私が泣きながら「行けません」だの「すみません」だの言う姿を期待していたのだろう。

しかし私は真顔で「わかりました。謝って来ます。」と言って、ワンレンのところに向かった。

素直に向かうとは思われておらず、研修担当はぽかんとした顔でこちらを見ていた。


そして周りはみんな仕事をしている中、ワンレンに「ご迷惑をおかけしてすみません」と言うと、ワンレンは「本当に迷惑!!」と言って私の嫌いなところを大声で叫び始めた。

さすがに周りの社員が止めに入ってくれるかな?と期待したが、誰一人としてこちらを見ない。

その様子に心底絶望し、軽蔑した私は「すみませんでした」と言いながらワンレンの目をじっと見た。

すると頭に血がのぼったワンレンは、「土下座して謝れ!」と言ってきた。

もう全てがどうでもよくなったので、私は会社のフロアの真ん中で土下座をした。

土下座をすると思われていなかったようで、さすがに周りはざわついていた。

ワンレンも引っ込みがつかなくなり、

土下座している私の後頭部に罵声を浴びせ続けた。


私は会社の床をゼロ距離で見つめながら、辞表の書き方ググらなきゃなぁ…とぼーっと考えていた。

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