第3話 入院生活②

院内学級の説明を聞き終わり、

部屋に戻ってきた。

特にすることもなかったので、

買いだめた漫画に手を伸ばす。


部屋は4人部屋で、既に私を含めた3つのベッドが埋まっている。

カーテンで区切られた少しのプライベート。

家とは全く違う環境に慣れるのはまだ難しい。


そこに入院手続きを終えたお母さんが戻ってきた。

何か食べに行こう!おなかすいちゃった。とお母さんがお腹を叩き笑った。


病院の地下にお見舞いの人が行く喫茶店があったので、二人で他愛のない話をしながら向かった。


メニュー表には、スパゲティにオムライス、カレーといったいかにも喫茶店メシというラインナップが並んでいた。


「ママはカレーにしようかなぁ」

「じゃあ私はミートスパゲティにする!」


注文をすませ、先程の院内学級の様子をお母さんに伝えた。

うんうんと頷きながら聞くお母さんの顔には、疲れがにじみ出ていたが、

その疲れを隠すようにずっとニコニコしている。


暗い雰囲気にならないように、気を遣ってくれているんだ…と子供ながらに察した。

しかしその気遣いが、自分の病気はかなり深刻な状況であると物語っている気がしてしまう。


ふわっとトマトのいい匂いが広がる。

いつの間にか注文したミートスパゲティが机の上に置かれていた。


不安を飲み込むように大きな口を開けてスパゲティを詰め込んだ。


(ちなみに、ミートスパゲティがおいしすぎて、退院した後もこの病院が移転するまで食べ続けるとは、この時は想像もしていない…)

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