第4話 管理人の証言
元服前の『コドモ』を"童"と読んでいたんですよ。昔わね。
でもご存知かしら、"童"は人の『コドモ』以外のモノをさす言葉でもあるのよ。
私がそれに気がついたのは偶然なの。
お菓子が無くなるとか、失くしたと思ったていた物が変なところから出てくるだとか、そんな『コドモ』のいたずらのような事が続いたの。
不思議に思っていたら、ある日に姿は見えないけれど『コドモ』がいるのを感じられたのよ。
しかも一人や二人ではなく、数えきれないほどたくさんの『コドモ』をね。
それとね、聞いたのよ。ひそひそと内緒話をするような。笑いながら話す『コドモ』の声を。
それで思ったの。ああ、このマンションは『コドモ』の遊び場なんだなって。
最初に聞いたのは102の青年のことだったわ。
彼ねあまり姿を見かけなかったのよ。管理人をしてるとね自然とマンションの住人と顔見知り程度には会えるのだけど、彼だけは全然会うことがなくてね。
普段から何をしてるのかしらって思っていたの。
そんな中で『コドモ』が、彼の部屋の中の様子を教えてくれたのよ。
彼ね1日中部屋にこもってはパソコンに向かって座っているんですって。だから、彼に気がづかれないようにいたずらをしていたそうなんだけど、まったく気がつかないもんだから、どんどんエスカレートしていったみたいなのよ。
それである日にね、彼がこそこそとゴミを出してるのに遭遇して、気になって確かめてみたらもうびっくりしたわ。
袋の中にはたくさんの骨が入っていたんですもの。
なにかわからないけど、とんでもないことになっていると思ったわ。
その頃からだったわね、『コドモ』の興味の対象が変わったのは。
ひそひそと聞こえる『コドモ』の話しを聞いてるとね、次の対象は101の子に変わったみたいだったの。
だから彼女に気をつけるよう伝えに行ったのよ。ほら、骨の件もあったからね。
でも、いざ彼女に話しをしようとするとなぜかうまく話せなくなったのよ。
そんなことが続いているうちにね、マンション中で『コドモ』が走り回る音がきこえだしてね。
とくにひどかったのが1階の彼女付近だったのよ。
だから見守る意味もあってこまめに見に行っていたんだけど、それがいけなかったのね。ある日、管理会社から首をいいわたされたわ。マンションの住民に迷惑行為をしているって。
とうぜんよね、事情を知らない彼女からしたら迷惑な行動にしかならいものね。
それでしばらくはマンションから離れていたのだけど、どうしてもあの骨が気になってね。管理会社に忘れ物をしたから取りに行かせてほしいって、無理なお願いをして行ったのよ。
もちろん骨のことは内緒にしてね。
それで他の住人に気づかれないよに運び出そうとしたとき、強く手をたたかれた痛みがはしってね、思わず抱えていた骨を落としてしまったのよ。大きな音をたててね。
慌てて骨を拾い集めていたら、走り去る音が聞こえてね、廊下に出たら103のおじいさんだったわ。
たぶん見られてしまったのね。
別にもう取り繕うものは何もなかったから気にしなかったけれど。
その後、あのマンションがどうなったかはわからないわ。
きっといまでも『コドモ』の遊び場になっているんじゃないかしら。
そうそう、骨はきちんとお祓いしてもらったわよ。
知り合いのお寺にお願いして手厚く弔ってもらってね。
そういえば、その時に住職から不思議な話しを聞いたわ。
それは、『童(コドモ)』に似た姿形をしているが決してそうではないモノ。
それは、『子供』として見えるけれど決してそうではないモノ。
それは、『子ども』のように無邪気だが決してそうではないモノ。
それは、『こども』が食べるようにふるまうが決してそうではないモノ。
それの名は『餓鬼(コドモ)』。
こども 遊bot @asobot
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます