第2話 103の証言
『子ども』って表現を見たことない?
普通は"子供"って書くだろ?
これにはある昔ばなしがあるんだよ。
いつぐらいだったかな?もう何十年も前になるんだけどさ。
当時、教育関係者で偉い人が『供』って漢字に、"コドモを仏に供える"ような印象を受けるって、無茶苦茶な個人の感想を話したんだよ。
それだけなら良かったんだろうけどね。
その話しをしたのが、業界紙と云われる雑誌のインタビュー中だったもんだから、あっという間に日本中に広がってさ。
これまた当時の教職は、みんな右に習えの奴しかいなかったもんだから、次々に"偉い人が言うなら"って真似しだして広まったんだよ。
え?なんでいまその話しをしたのかだって?
いや、あの管理人がずっと「子どもが……、子どもが……。」ってブツブツ言ってたもんだからさ。
気味が悪いババァだなって思ってたんだよ。
なに、俺も人のことは言えない年だけどさ。
これでも、昔は背広をビシッと着て教卓に立ってたんだよ?
だから、ああはなりたくないねーなって思ってたわけよ。
だけど、ある日からはたと見なくなってさ。
その頃からだったかな、バタバタと『子ども』が走り回る音がしだしたのは。
で、老いさらばとはいえ元教師としてはよ、走り回る『子ども』を叱ってやろうと思って、何日も何日も足音を追ってたのよ。
だけど不思議な事に、一切その姿を見ることはできなかったな。
それから数日したある日、無人だった管理人室に人の気配がしたんだよ。
俺は思ったね、きっと『子ども』が入り込んていたずらしてるんだって。
捕まえるなら今がチャンスだと、こっそりと部屋の中を覗いたんだよ。
そしたら、そこに居たのはあの管理人のババァでよ、コソコソと荷物をまとめてたんだよ。
しかもよ、なにかブツブツ言ってやがってよ。
何を言ってんのかなと、耳を澄まして聞いてみると「大人しくしてろ」だの「いたずらはするな」てな事を言っててよ。
ほんとに気味が悪いババァだなって思ったね。
だから、ババァに気が付かれないように立ち去ろうとしたのよ。
その時だったな。大きな音をたてて、ババァが抱えていた荷物を落としたんだよ。
もうびっくりしたね。
ババァが落としたのは沢山の『子ども』の骨だったんだから。
え?なんで『子ども』のだとわかったのかって?
そら、見たからだよ。
骨を拾ってるババァを、恨めしげに見てる『子ども』の姿を。
見ただけであれは化け物だとわかったね。
さっさとその場を立ち去ったよ。もちろん、ババァに気が付かれないようにな。
きっと、あの管理人のババァは鬼婆だったんだな。
で、俺が見たのは、ババァに食われて恨み残して死んだ『子ども』だったんだよ。
そうに違いないね。
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