第54話 新世界の始まりとスコティッシュ・フォールド最後のご挨拶(2)

「風香、あれはないでしょう。引くわ~」

 親友の蘭ちゃんが放課後の教室で私を非難した。


「だよねえ」

 私も弁解の余地無くうなだれる。


「あの、寛太くんだっけ?目を見開いたまま、硬直してその後」

 蘭ちゃんは笑いを押し殺して口を手で塞ぐ。

「ププッ、ま、まるでロボットのように手足を同時に動かして、プーッ、去って行ったけど」


 私にとっては感動の再会だったのだが、周囲から見たら純情な男の子が変態少女にからかわれた図式だったようだ。まったく不本意だが。



「でもさあ、風香」

 蘭ちゃんは不思議そうな顔だ。

「寛太くん、風香のこと知ってるような知らないような、妙な顔してたよね」


「知り合いというか、知り合いなんだけど。その」

 『前世のボーイフレンドで命の恩人』などと言わないだけの分別は私にもある。


「風香のピンチに助けに来てくれたり、ちょっといい男かな?とは私も思うけどね」


 蘭ちゃん、そうなんだよ。ポンタはいつでも私のピンチには駆けつけてくれる奴なんだよ。


「風香、にやけるのはいいけど、変態癖は止めとかないと美少女が台無しだよ」

 ポンタをほめられてニヤニヤしていた私に蘭ちゃんが釘を刺す。


「うううう。変態じゃないもん」

 けっして美少女は否定しない。


「あんたとは長い付き合いだけどねえ、ひいき目に見てもド変態だわ」


「蘭ちゃん、ひどい!」


「まあ、いいや。フーニャン、帰ろう!」



 二人で教室を出て行く。高校へ入学して数週間たった。もうじき連休だ。

 振り返ると、前の前の人生?猫だった時より前の人生…うーん、ややこしいけど、とにかく以前と同じ教室の風景だった。

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