第46話 最終戦争と追憶のコーニッシュ(5)
公園の正面から私は百匹を超える野良猫軍団を従えて入っていった。いや、家猫も多数含まれている。「ボッツにはついていけない」という猫たちだろう。
「フールか」
ボッツの低い声が砂場の方から響いた。
「待っていた。フール」
ボッツの周りにも同じくらいの数の猫がいる。
この公園に町内どころか付近の家猫と野良猫が多数集まったらしい。
私は噴水の上に登ってできるだけ大声で叫んだ。
「ボッツ、決着をつけよう。私が助けてあげるから大人しくしなさい!」
公園のすべての猫がザワリとする。
「やい、チビ猫!お前なんかが新しい猫神様と戦おうとはおこがましい。サッサとボッツ様の前にひざまずけ!このチビ!折れ耳!」
ボッツのすぐ近くにいるラムキン、モネが私を挑発する。あの縮れ毛、折れ耳って言った!…気にしてないけど。でもこいつの顔は忘れないよ。
「新しい猫神様を仰ぐ尊き猫たちよ、あの異教徒達を討ち果たせ!」
モネの言葉に家猫軍団がザッと前へ動き始める。
…とはいえ、何となく見えるね。本気の親衛隊と、仕方なくボッツ側にいる「いやいや魔王軍」と半々くらいじゃないの?つまり数だけならこっちが断然多数派だ。
家猫たちの前進と同時に私の周りの猫たちも前へ進む。私を守るように周囲を固め、ボッツに近づく。ガンツやポンタ、レオ、トンカツ、ダビも私の楯になる覚悟のようだ。作戦どおりとはいえ申し訳ない。
ボッツの「ガアアッ!」という叫び声が引き金となって、乱闘が始まった。ボッツ親衛隊の猫たちが私目がけて殺到する。
「怖いっ!」
さすがに百匹近い猫が私一匹に向かって殺気をこめた目で襲いかかってくるのには怯んだ。
「そいやっ!」
レオが先頭に立って、前線に立ち塞がり猫パンチを繰り出す。
「ギャッ」と先頭の猫が顔を押さえてうずくまった。強い。
だが、数が数だ。どんどん押し寄せてくる親衛隊はそれをすり抜け、私の近くにもせまって来た。
右側でガンツが腕力で奮闘している。ポンタは素早く動いて左手の方向を防いでいてくれる。
私だけが怯えているわけにはいかない。震える足に力を込めて、咆哮し、暴れるボッツに近づく。
ボッツはやはり攻撃力が特別のようだ。周囲の野良が一瞬で数匹倒れていく。本来なら私の「愚者」でどんどん癒やしていきたいところだけど、今夜は決着戦だ。力を溜めておかないといけない。
トンカツもダビも傷だらけになりながら、私に道を作ってくれている。それにしてもなかなかボッツが遠いね。近づく前に物理攻撃を受けたらやばいんだけど…と考えていたら。
ボン!
大きな音がして閃光が見えたと思ったら、私とボッツの間に煙が湧いた。
「爆発だ!」「逃げろ!」「ニャオン!」
猫たちが一瞬爆心地を避けようと周囲へ遠ざかった。
「フーちゃん!煙だけです。前へ!」
セージの声だ。私は頷く。
「みんな、行くよ!私を守って!」
「おう!」「行くぞっ!」
周囲の猫とともにボッツに向かって突進した。
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