第43話 最終戦争と追憶のコーニッシュ(2)
ダビが久しぶりに公園に出かけるという。どうやら兄貴分のルノーに呼び出されたらしい。
私やポンタも南の森の戦い以来、公園には近づかない。というかほぼ自分たちのねぐら近辺ですべてを済ませている。日中は大通りならまだ人間の目があって安全だろうが、夜は危なくて外出できない状況だ。
というわけで街の猫情報が少ない。セージが独自の野良および家猫ルートで持ちこむ情報だけだ。
それによればルノーやミケはボッツとは距離を取っている状態だという。完全に反旗を翻したというわけではないにしろ、だいたい家に籠もって家猫の集会も欠席しているらしい。
「4つ後の夜は月がない、とルノーさんが言ってました」
帰ってきたダビが短い指を曲げながら、私に直接言った。
「何度言ったらわかるんだ。フールを巻き込むな」
ガンツが血相を変える。
居候の身のダビはビクッと身を震わせたが、伝言を頼まれただけだろうから気の毒だ。
「父さん。心配してくれてありがたいけど、この前ボッツと向き合ってわかったことがあるんだ」
珍しく私は真剣だ。
「むう」
ガンツも以前のようには頭から否定することはない。ガンツなりに私とボッツの因縁めいたものを感じ取っているのだろう。
「ガンツはもうすぐこの街の猫を全部根絶やしにしようとするよ。その後は余所の街の猫か、もしかしたら人間かもしれない。そうしたらホントにこの付近の猫すべてが居場所を失うと思う」
私はこの前から感じ取っていたことを説明する。
「…ボッツを止めるっていうことは、つまりどういうことなんだ」
ガンツが難しい顔をしている。
そうなんだ。そこが問題だ。いや、私は実は少しだけ判りかけている。
けれど怖くてそこから目をそらしていると言ってもいい。
…でも仕方ないかな。これは私しかできないことだ。
「ダビ、頼みがあるんだ」
ダビが目を瞬かせて言う。
「俺、たぶんわかってます、姫様。ボッツを公園に呼び出すんですね」
もうルノーやミケの間では計画表が出来てるんだね。
私はため息をついて、それからダビに肯定の意味で頷いた。
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