第40話 民衆の解放とラムキンの陰謀(5)

 最後の関門、センターからの脱出だ。正面玄関の方の騒ぎはもう収まっている。煙と臭いだけで異常はないということが確認できれば、職員はこちらに戻ってくる。急がないと。

 私たちは10匹を越える大集団なのだ。さっきよりずっと目立つ。


 廊下の角を二度曲がって、元の窓まで戻ってくる。


「おい、フール。大変だ」


 ポンタの声に上を見上げて私も息を飲んだ。

「窓が閉まってる!」


 侵入経路の窓がロックされている。あれは猫では開けられない。

 さっき来た職員がロックしたのかもしれない。困った。


「どうする」


 窓近くのゲージに乗って、ポンタが顔を押しつける。もちろんビクともしない。


「ポンタ、どけ」

 レオが前足を力一杯振って、ブンと「真空猫パンチ」を窓に叩きつける。


 窓のガラス面が「ブイーン」と揺れるが割れるほどではない。やはり猫の特殊能力は猫にしか通じないものなのかもしれない。


「コン」


 今度は外からガラスに小石が当たった。ポンタが外を覗く。


「ルノーだ。ルノーが石を飛ばしてる」


 だが、ガラスが割れることはない。あのサイズの石では無理かもしれない。


「どうしよう、ガンツ。じきに人間が来るよ」

 私は何も思いつかず、パニック状態になる。


「落ち着け!フール。ルノーもあきらめずに石を投げてる。やれることを最後まで…」


「おい、レオ」

 ガンツがレオの方を見た。


「む?」


「ルノーの石に合わせて、あきらめないで何回でもパンチを入れろ」


「…うむ。わかった」

 ガンツの指示でレオが真空パンチを繰り出す。


「コン」「ブイン!」


 ピシッ


「あっ、ヒビが入った!ガンツ!ヒビが入ったよ」


 私の声と同時に廊下の向こうから人間の声がする。

「何だ!これは?おい、大変だ!空のゲージがあるぞ!逃げ出した猫がいる!」


「ポンタどけっ!もう一回!」


 ガンツの合図でもう一度、石とパンチ。先ほどのヒビが少しだけ広がる。


 その瞬間、ガンツがその窓のヒビに向かって体当たりをした。


「ガッシャーーーン!」


 ガンツが割れた窓の破片と一緒に外へ落ちる。

 ドサッとガンツが下へ落ちる音。


「ガンツ!」

 私は叫んで、外へ飛び出る。




「何だ?」


「ガラスの割れる音だ!」


「泥棒か?」


「おい、誰だ!」


 職員が走ってくる足音が響いた。


「みんな、早く逃げろ!」


 ポンタの声で割れた窓から私たち含めて11匹の猫が次々と飛び出した。

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